2014年度予算編成の基本方針策定議論に着手した1日の経済財政諮問会議では、「財政健全化路線」を明確にすることが打ち出された。しかし、消費税率引き上げ判断と、それに伴う5兆円超の経済対策によって、与党からは歳出拡大圧力が強まっており、年末の来年度予算案策定まで厳しいやりとりが続くことは必至だ。
通常の予算編成は、夏に閣議決定する中期財政計画に基づき、歳出上限を財務省が示し、8月末に各省庁から概算要求が提出され、それを財務省が査定し、政府案編成につなげる。
しかし、今年は消費税率引き上げの判断前に概算要求が締め切られ、歳入の見通しが立たなかったため、各省庁への要求枠が設定できず、概算要求額としては過去最大となった。
さらに、消費税率引き上げ直後の需要落ち込み懸念に備えた5兆円超の大型経済対策や、消費税増税分と景気回復による法人税などの税収自然増の上ぶれ期待などで、自民党内で予算獲得の動きが強まっている。国土強靱(きょうじん)化を前面に打ち出した公共事業、診療報酬改定に伴う医療費などだ。
また、東京電力福島第1発電所事故に伴う除染費用の国庫負担案などが持ち上がるなど、歳出拡大の圧力は強まっている。
しかし、財政再建は国際公約でもあり、国の借金が1000兆円を超える異常な事態にある。デフレから脱却し、金利が上昇する通常の経済に戻れば、国債の利払い費が拡大し、財政をさらに悪化させる悪循環に陥る可能性もある。
経済を成長させながら、財政再建を図る安倍政権としては来年度予算で、経済成長と財政再建を両立させる意思を明確にする必要がある。財務省側が基礎的財政収支の4兆円の改善を「最大の目標」(麻生太郎財務相)とする中、「政府の肥大化」(諮問会議民間議員)を食い止めることができるかが焦点となる。
- 日系企業、東南アジアでM&A過去最高 「脱中国」加速
- 世界の大金持ちと日本人の差 資産50億円以下は「ただのカモ」と覚悟せよ
- 歴史の恨み「倍返し」に挑む中国 アップル、スタバ…予想外の問題でやり玉に
- 「アベマゲドン」招くインフレ アベノミクスの2つのリスク
- 中国経済大国“張り子の虎”か 韓国たそがれチラリ…日本の最善策は?