ミュージカル映画 | きつねの部屋ブログ版

ミュージカル映画

特になにというのではないが、ミュージカル映画は大人になってからは嫌いになった。


小さい頃は、「サウンドオブミュージック」や「チキチキバンバン」を観ていた。


正直、「サウンドオブミュージック」は映画としてもいいものと記憶していたのだが、何回目かのリバイバル上映のときに再度観た。このときはいい加減大人になっていたのだが、退屈で退屈で、途中で映画館をでてしまった。


なぜ子供のころはいいとおもったのに、大人になって見返すとダメなのか。

考えると、それは映画だからというのが結論だった。


映画ではリアルを追求するもので、たとえCGをつかってもあまり現実に即しない表現はかえって映画らしくなくうけとめられるものだ。


シリアスを追求するには、作り物であっても荒唐無稽であることはなるたけ避けるのが映画だとおもう。


ところがミュージカル映画は芝居がシリアスに展開しているのに唐突に歌いだしたり、踊りだしたりする。

そんなのありえない、とおもってしまうのだ。ばかばかしさだけが先にたってしまう。


「オズの魔法使い」のように、はじめから子供向けでスタジオセットですべて撮り、シリアスを狙っていないものは、それほどの違和感はないが、「サウンドオブミュージック」のように、ただの恋愛主義やナチスの迫害から逃れるといった大人向けなテーマで背景が実景のロケーションをつかいながら歌や踊りをやられると、映画の中の話しといいながらその作り事感にしらけてしまう。

ミュージカルではロマンはともかく、ミステリーやサスペンスは表現できない。


おそらく劇場だと素直に歌や踊りを堪能できるだろうとおもう。


なぜ劇場はOKで映画はNGかというと、その空間が狭い異空間であることか否かだとおもう。

映画の魅力はその空間のとりとめないことだが、そんなところで望んでいない歌や踊りをやられる、というのがわたしには耐えられないのだとおもう。


そのてん劇場だと、歌や踊りをすることは当たり前で、客もまたそれを期待しているからまったく抵抗感がなくなる。その違いだ。映画とリアルな実景をつかったミュージカルとは相性が悪い。


ただ、フランス、ジャックドミー監督の「シェルブールの雨傘」は実景をつかいながらもよかった。

全編台詞も歌で表現されていたので、最初から最後まで唐突感はなく哀しい男と女の物語が胸に沁みた。ま、これ人生は楽しいぞ、ハッピィエンドがお約束、といったノーテンキなアメリカミュージカルではないものだったということもあるだろうし。