罪とか罰とか
成海璃子の初の主演映画である。
成海璃子、知らない人もいるかもしれないが、いまドコモのコマーシャルで山崎努の孫娘を演じている子といったら、ああとおもってくれるかもしれない。
お話は不条理かつブラックかつユーモアで、ついていける人しかついていけない。
おいてけぼりになってしまう人もいるだろう。
売れないグラビアアイドル円城寺あやめ(成海璃子)がコンビニから自分の写真が載った雑誌を万引きするはめになり、警察からその罪をゆるすかわり一日警察署長になることを要求される、というのが本筋で、これにからみ、このコンビニをめぐるさまざまな事件が最初はそれぞれが関係なく、最後に収れんされるということになるのだが、そのつなぎかたの妙がこの映画の身上なのだ。
彼女の元恋人は、今は刑事になっているが殺人ぐせはやめられない、それを警察の上層部はわかっていながら隠す、コンビニにいった男があっという間にトラックにはねられる、その直前殺人事件を目撃する、コンビニ強盗が誘拐にかわり、といった具合にもうヒッチャカ、メッチャカの画面構成のなか、アイドルとしてうれない自分を卑下していていたあやめが自信をとりもどす、というところで大団円。
警察官にしろ、トラックにはねられる男やそのトラック運転手にしろ、助手席にいる女やコンビニ関係者、強盗犯人たち、全員オカシイ。
その中ではいちばんまともなのは円城寺あやめという設定。
成海璃子、大人びてみえるが、アップでみるとまだほっぺたなどはふくらみあどけなさが残っている。
丁度、女になる直前というところで、本来なら大人の色気が要求されるこの役。
本人がうぶで誠実すぎてちょと役を演じるには荷が勝ちすぎているのではとおもうところもあり、適役っだったのかどうかはすこし疑問がのこるが、まあまあというところか。
タイトルの「罪とか罰とか」は、殺人、強盗、誘拐、ひき逃げ、万引き、どれが一番罪がおもいのか、差はいったいなんなのか、それを問いかけているもの。
こういった、シュールな映画は70年代によくあった手法で、あの大林宣彦監督から学生からCMディレクター時代に作っていたものだ。
であるので、わたしにとっては珍しくはなかったのだが、こんにちの観客にはけっこう受けていたようだ。
映画館の中で笑い声が時々おこる。
シネコンでの上映ではないので、それほどヒット作にはならないとおもうが、観ても損はないとおもう。
エピソード
最近はシネコンではなくても座席予約全館入れ替えの映画館が増えた。
わたしが事前にその日の切符を買おうと映画館を訪れたとき、指定した席は埋まっていたので、その後ろの席を希望した。
そうしたら、係員の女の子が、「前に人が座っていますがいいですか」と聞いた。
わたしは「いい」と答えたが、なんかおかしかった。
だって、その横の席を選んだところで、わたしの前に人が座らないという保証はないだろうとおもったからだ。
上映時再びきてみると満員となっていて、わたしの前も横も人でいっぱい。
気を使ってくれた係員さん、ちょっと想像力がたりなかった、でもありがとう。