<艶が~る、二次小説>
今回もまた、てふてふあげは
さんに素敵な龍馬さんと主人公の絵をお借りすることが出来たので、勝手ながら物語をつけさせていただきました
龍馬さんと、こげなふうに寄り添ってみたいものです
【ぬくもり】
絵:てふてふあげはさん
作:小春
夏の蒸し暑い夜のこと。
いつものようにお座敷を終え、置屋に戻った私は、夜空に浮かぶ月を見上げながら愛しい人の笑顔を思い出していた。
「龍馬さんも見ているかなぁ…」
青空を見上げる度に、彼の笑顔を思い出し、夜空を見上げる度に、恋い焦がれる日々。
空を見上げると、元気が出てくると同時に、嫌なことも一瞬で忘れられるし、辛いことも我慢出来る。
そんな、癒しの力があると教えてくれた龍馬さんは、私にとって無くてはならない存在だ。
(元気かな…また、会いたいな……)
会って、あの優しい温もりに包まれたい。
あれはまだ、春一番が吹き始めた頃だった。
お使いの最中。突然、雨に降られ、とある大きな家の軒先で雨宿りをしていた時のこと。
『おっ?おまんは!』
急に懐かしい声がして思わずそちらに顔を向けると、同じように雨に濡れながら龍馬さんがこちらに走ってくるのが見えた。
『龍馬さん!』
『こがなところで何をしゆう?』
『龍馬さんこそ、どうしてここに?』
『ここは、わしらの滞在場所やき』
龍馬さんは、首を傾げる私の顔を見つめながらも、とりあえず中へ入るように促すと、私を家の中へと誘ってくれたのだった。
ここは、亀山社中(後の海援隊)という貿易組織の滞在場所の一つで、下関からやってきた龍馬さんと翔太くんは、しばらくの間、ここに滞在しているのだと教えてくれた。
『まずは、濡れた着物を脱いだほうがえいのう』
『えっ…』
龍馬さんは、いったんその部屋を後にすると、手拭いと男物の着物を用意して戻ってきた。
『わしのやき、ぶかぶかじゃろうが…濡れた着物を乾かす間だけ我慢しとうせ』
『ありがとうございます…』
『なんちゃーない(なんでもないよ)わしも着替えてくるき』
差し出された着物を受け取り、また部屋を去っていく龍馬さんを見送った後、濡れた着物を脱いで立て掛け、長襦袢の上から龍馬さんの着物を羽織ると、微かに漂う龍馬さんの優しい匂いに包まれた。
そして、その着物のおかげで体がぽかぽかとし始めた頃。
さっきとは違う浴衣に身を包んだ龍馬さんが、凛とした表情で戻って来るのが見えた。
だんだんとこちらへ近づいて来るその姿が、とても素敵で…まだほんのりと濡れた髪がとても色っぽくて……
私は、思わずその艶姿に見惚れてしまっていた。
『どうしたんじゃ?』
『いえ、何でもありません…』
それから、障子越しに座り込み、雨に濡れる庭先を見つめながら、龍馬さんたちの武勇伝を聞いたりして楽しい時間を過ごした。
それぞれのお話によっては、息つく暇もないくらいドキドキし、ころころと変わる龍馬さんの表情に、腹筋が痛くなるくらい笑わされる。
一緒にいて、こんなにも楽しい人はきっと、他にいないだろう…。
そう思えるほど、龍馬さんは経験豊富で話し上手だった。
『はっ、はっ、はっくしゅっ…』
不意に、ぞくっと肩を震わせると共にくしゃみをした私を見て、龍馬さんは、『寒いがか?』と、呟くと、押し入れの中に畳んであった薄手の布団を引っ張り出して、そっと私を包み込むようにして寄り添ってくれた。
『これなら、寒くないぜよ…』
『…はい。とても、あったかい…』
『役得っちゅうやつじゃのう。こうやっておまんの温もりを独り占め出来るとは…』
あの時が初めてだった。
龍馬さんの優しい温もりに触れたのは…。
その腕の中に包み込まれた途端、安心感でいっぱいになっていき、あんなに温かくて居心地の良い場所は他に無いって思えるほど……
心が癒されていった。
龍馬さんは、時に突拍子も無いことを言ったりやったりするけれど、大きな志を持ち続け、どんな苦境に見舞われても、怯まずに邁進し続けられる人だと気付かされた。
『…おまんは、この世に生まれてきた意味を考えたことがあるがか?』
『生まれてきた意味?』
龍馬さんは、一つ頷くと静かに語りだした。
人間は、一人では生きていけない。
人は、誰かと協力し合い、時には、喧嘩し合ってより良いものを作り出していくことが出来る、唯一の生き物だ。
好きで始めたことに関しては、どんな境遇に立たされても、その途中、たとえ泣き言を言って自分を惑わすことになったとしても、決して諦めてはいけない。
そして、誰がなんて言おうと、自分の信念は曲げない。
誰かの言葉に惑わされ、自分を見失ってしまうことのほうが、よほど辛いだろうから…と。
この世に生を受けた以上、何かを成し遂げることが大切なのだということを教えてくれた…。
『わしは、この日本を変えたい。みなが平和に暮らせるような日本にのう…。それに、いつか必ず、争いの無い世がやってくると思っちゅう。いや、そうせにゃならん…』
いつにない真剣な顔つきに胸を弾ませていると、龍馬さんは、『いつか、おまんと一緒に世界中を旅してみたいもんじゃ!』と、言ってまたニカッと微笑んだ。
『いいですね、絶対に連れてってくださいね!』
『おう。その為に、もっともっと、頑張らにゃあいかんのう』
私は、その澄んだ瞳を見つめたままこくりと頷くと、龍馬さんと世界中を旅する様子を思い浮かべた。
龍馬さん達の働きは、後の日本の未来を大きく変えることになるのだが……
そのことを告げたい気持ちを抑え込みながら、私はずっと、大好きな人の腕の中で優しい温もりに包まれていたのだった。
月が黒い雲に覆われると同時に、ぽつぽつと大粒の雨が降り始め、ひんやりとした風が頬を掠めていった。
(次、龍馬さんに会えるのはいつだろう…)
……その夜。
激しくなっていく雨音は、さざめく大波の音へと変換されていき、龍馬さんを想いながら深い眠りに誘われると、二人で旅に出る夢を見た。
太陽の日差しに照らされた龍馬さんの眩しそうな視線は、海の向こうへと向けられている。
いつの日か、きっと…夢を実現させてみせる。
『行くぜよ!』
不意に差し出された彼の腕に寄り添い、砂に足を取られながらゆっくりと歩き出す。
いつまでも続くであろう、二人の未来へと向かって。
【E N D 】
~あとがき~
久しぶりに、龍馬さんだけを想い、書いてみました
やっぱり、大好きです…龍馬さんの優しさ。
そして、またまた、てふてふあげはさんに素敵な龍馬さんと主人公ちゃんをお借りして、物語を作らせていただきましたが、もう…この二人の表情が…優しすぎて
私が一番、癒されていました
そして、辻本祐樹ファンとしては、昨晩の『遺留捜査』、観ました
『新選組血風録』の、沖田総司役を観てからのファンですが、彼は本当にいい演技を見せてくれる…。物語自体が、とても面白くて、キャストも、上川達也さん、斉藤由貴さんをはじめ、個性的な俳優さんばかりで、これからも楽しみです
きっかけは、祐樹くんだったけれど、踊る大捜査線に出ていた俳優さんも多数いて、思わず笑ってしまいましたそれに、ベテラン俳優が多かったから安心して観られました
欲を言えば、辻本くんもレギュラーで、所轄部署にいてくれたらもっと嬉しかったのに…なんて
今回も、遊びに来て下さってありがとうございました