<艶が~る、妄想小説>


慶喜×秋斉編、土方×沖田編の幕府・新撰組コンビの次は、晋作×龍馬×翔太編(尊皇攘夷の志士)トリオに挑んでみました汗ちいとばかし長くなってしまいましたし、相変わらずの駄文ではありますが…良かったら、今回も読んでって下さいませきらハート




「思惑」*高杉晋作×坂本龍馬×結城翔太*



「潮風が気持ちえいぜよ」
「そうですね!」


坂本龍馬と結城翔太は、一足先に京へ赴いていた高杉晋作と合流する為に下関から神戸港へと足を運んでいた。その足で、京の事務所である酢屋へと赴くと、先に着いていた晋作に出迎えられた。


「待っていたぞ、二人とも元気そうで何よりだ」
「おう、高杉も元気じゃったか?」
「まぁまぁだ……」


二人は部屋に案内され、晋作と共に今までの戦況報告やこれからの事を時間をかけて話し合い、ある程度の結論を出し終わると、話題はいつの間にか藍屋の遊女の話しへと変わって行った。


「のう、今夜は島原へ行かんか?あの子に会いにいくぜよ!」


龍馬はお茶を手にしながら微笑むと、彼らはすぐに賛同した。


「そうだな…たまには女遊びもいいもんだ」
「お、女遊びって……」
「翔太にも、そろそろ本当の女遊びを教えてやろう」
「い、いいですよ!そんなの…」


晋作はニヤリと微笑むと、小さく抵抗する翔太の肩を抱き寄せ言った。


「お前、今年の正月でいくつになったんだ?」
「19になりました…」
「立派な男じゃないか…なのに、まだ経験が無いとか言わないよな?」
「……………」


翔太はニヤリとする晋作の横で、満面の笑顔を浮かべる龍馬の視線も受けながら、俯き加減にポツリと呟いた。


「ま、まだ…無いっす…」


「嘘だろ?!」
「ほりゃあ、まっことか?」


同時に驚かれ、彼は顔を真っ赤にしながらさらに俯いた。その様子に、二人は顔を見合わせ苦笑すると、晋作は、「なら、なおさらじっくりと教えてやろう」と、言って微笑んだ。


「お、俺のことはもういいですから…」
「翔太、ほがな事をいいなや…そのへんは高杉に教わったらえいがじゃ」
「りょ、龍馬さんまで…」


二人は、翔太のうろたえた顔に吹き出すと、その楽しそうな笑い声が縁側にも響き渡った。


「今夜が楽しみじゃ!久しぶりにあの子に会えるき」


それから、彼らは雑用を済ませ頃合いを見計らって島原へと足を運んだのだった。



*艶が~る妄想小説* ~もう一つの艶物語~



夕刻。


島原の大門をくぐった彼らは、引き手に声をかけられながらも藍屋の揚屋を目指し、お目当ての遊女を呼び出すとお座敷へと案内された。


「まっこと久しぶりじゃのう…。今夜は無礼講じゃ!美味い酒をこじゃんと飲むぜよ!」


晋作は、龍馬の隣りに腰掛けると手酌で酒を飲み始め、翔太は、上機嫌な龍馬を見ながら苦笑した。


「龍馬さん、本当に楽しそうですね」
「おう、これであの子が来たらゆうこと無しじゃ!」


と、その時だった。


「失礼致します…」


障子の向こうで声がして一斉にそちらを見やると、開かれた障子の先に、待ちに待った彼女が姿を現した。綺麗な着物を身に纏い、整った頭には可愛らしい簪がちょこんと乗せられ、真っ赤な口紅が色っぽさを際立たせている。


「お久しぶりです!」


いつもの彼女の笑顔を見つめ、思い思いに目を奪われていく。


「お、おう……いやぁ、久しく会わんうちに女っぽくなっちゅうね…」
「本当に…見違えたよ」


龍馬と翔太が少し呆然とする中、晋作はすぐに彼女に声をかけた。


「酌を頼む……」
「はい、ただいま参ります」


彼女はいそいそと晋作の隣りに座り込むと、お猪口に酒を注ぎ、美味しそうに飲み干す彼を見て微笑んだ。


「今夜は、三人同時に会えるなんて…何だか嬉しいです…」


翔太は、はにかみながら言う彼女から目線を逸らし、また見つめては逸らしを繰り返し、龍馬は、その笑顔を目に焼き付けるかのように見つめ、晋作は、節目がちに見やっていた。


「今朝方、二人が京へやってきてな。久しぶりにお前に会いたいと抜かしやがったから、連れてきた」
「ほうじゃ、会いたかったがじゃ!のう、翔太!」
「え?あ、はい…」


彼女は、龍馬と翔太にもお酌をし、美味しそうに飲む彼らに微笑んだ。


「くあ~、たまらんぜよ!おまんの注いでくれた酒はまっこと美味いやか」
「そう言って貰えると嬉しいです…」



それからしばらくの間、彼女の華麗な舞や三味線を披露して貰い、この上ない時間を過ごす中、三人は、また思い思いに恋心を抱きその姿に魅せられていった。


やがて、三味線を弾き終わった彼女にそれぞれが感歎の声をあげる。


「上達したな…俺が教えただけのことはある」
「まっこと、おまんの舞や三味線の音色はえいのう!」
「以前観た時より、数段上手くなったんじゃないか?」


ほぼ同時にそう言われ、彼女は頬を染めながら上目遣いに彼らを見やった。その可憐な目を向けられ、彼らはまた胸を高鳴らせるのだった。



そして、夜も深まってきた頃。


晋作が三味線の弦を調整し、静かに奏で始めた。


時折、瞼を閉じて奏でる姿はとても美しく、その甘美な音色は時に激しく、彼の人生そのものが込められているような見事な音色に皆、聴き入っていた。


やがて、一曲弾き終わった晋作に、彼らは感歎の声をあげた。


「三味線の音色は正直じゃのう…おんしは捻くれちゅうが」


晋作は、笑顔で言う龍馬を横目に、ふんっと鼻を鳴らし三味線を横に置くと、「一杯くれ」と、言って彼女に酌を求めた。彼女は、促されるままお酌をして銚子を配膳に戻すと、ふいに翔太から声をかけられ顔を向けた。


「どうしたの?」
「いや、話したいことがあって…」
「あの事?」
「え?あ、ああ……」


「おまんら、どこへ行くんじゃ?」


静かにその場を去ろうとした彼らは、二人で話したいことがあるのでほんの少し席を外すことを伝えると、晋作に冷やかされながらもやっとの思いで部屋を後にした。


「ふぅ~…」


翔太は障子を閉め小さく溜息をつくと、彼女と共に少し離れた縁側に腰掛け、庭を見ながら今までの事を報告しあった。


「あれから、探し回っているんだけどさ…手がかりさえも見つからないんだよな」
「ごめんね。翔太くんばかりに面倒かけてしまって…」
「いや、お前はこういう身の上だからしょうがないさ」


そう言いながら、両手を横について体勢を変えようとした瞬間、彼の大きな手が彼女の手に触れた。


「ごめっ……」
「…っ……」


二人は慌てて手を離し距離を置きながら苦笑し合うと、彼はまた照れながら口を開いた。


「探す探すって言いながら、じつは龍馬さんにつきっきりで…俺のほうこそ、お前に謝らなきゃと思っていたんだ。いくら新造とはいえ、辛いこともあるだろ?」
「……うん、でもね…最近はこの仕事にも慣れて来て、褒められることも多くなったんだ」
「……そっか…それは良かったな」


彼は、すぐ隣りにいる彼女に触れたいと思いながら、そっと伸ばした手を自分の肩に置き夜空を見上げた…。


本当は、いつも自分の手の届く距離に居て欲しい。


彼女に辛い思いはさせたくない。

すぐにでも彼女を現代へ返してあげたい…。


様々な想いが、彼の胸の中を掻き乱していくのだった。




一方、部屋に残された二人もまた、今までの戦況を振り返っていた。


「それにしても、よく桂と西郷を説き伏せたな…」


晋作はそう言うと、喉を鳴らしながらぐいっと酒を飲み干した。


「しょうまっこと大変だったぜよ…なかぇか(なかなか)ゆうことを聞いて貰えんかったき」
「普段は、すっとぼけたようなことばかりだが、やる時はやる男だ…」
「褒めちゅうのか、貶(けな)しちゅうのか分からんな…」


二人は、ふっと微笑みながら手酌で酒を交し合う。


土佐藩士と長州藩士。


関わった期間は約五年と短かったものの、二人は、同じ尊皇攘夷の志士として四境戦争を共に戦い、お互いを尊敬しあっていた。


「お前と出会って、もう四年か…」

「はや(もう)、ほがーに経つがか?あっという間に過ぎたな…おんしの策は、しょうまっこと凄かったき。わしにゃあとうてい考えられんちや…剣や槍の腕もえいし。さすが、『尊皇攘夷の獅子』と呼ばれるだけあるぜよ」
「世辞はいらんぞ、坂本」
「いいや、本心からゆうちゅう…」


節目がちな晋作の横で、龍馬は空になった彼の器に酒を注ぎ始めた。


「なあ、高杉……」
「なんだ?」
「話は変わるが…おんしは、あの子の事をどう思っちゅうんじゃ…」


晋作は、なみなみと注がれた酒を飲み干すと、銚子を奪い龍馬の器に酒を注いだ。


「お前こそ、どう思っているんだ?」
「わしは、あの子が大好きじゃ…いずれ、嫁さんにしたい思っちゅうくらいにのう」
「そうか……だが、それは叶わぬ夢だ。あいつは俺が身請けするからな…」


二人の真剣な眼差しが交差し合い、しばらくの間沈黙が流れた。龍馬は、酒をぐいっと飲み干すと、手酌でもう一杯注ぎそれも一気に飲み干した。


「……おんしがあの子に惚れちょったことは知っちょったが、そこまで本気やったとは…」
「お前こそな…」
「どうやら、おんしとの戦いもまだ終わらんようじゃのう」
「……いつでも受けてたつぞ」


二人は視線を外したまま微笑み、お互いの彼女への思惑を胸に留めた。



「ただいま戻りました…」


障子を開け、部屋の中へ入ってきた彼らは、微笑を浮かべながら酒を交し合っている二人の傍に座り込むと、改めて問いただされた。


「お前ら、いったい何の話をしていたんだ?」
「いや、そんな気にして貰うほどの話じゃありませんから…」
「怪しいな……」


晋作は、うろたえる翔太を横目に、傍に居る彼女を再び抱き寄せ耳元で囁いた。


「まぁいい。いずれお前は俺の妻になるのだからな」
「た、高杉さんっ…」


彼女が、ゆっくりと近づいて来る晋作の口元にそっと手を置きながら戸惑いの声を上げるのを見て、翔太は目を大きく見開きながら大声で詰め寄った。


「ちょ、それってどういう意味ですか?」
「そういう意味だが、何か困ることでもあるのか?」
「それは、その……」


額に汗しながら口ごもる翔太に代わり、隣りで苦笑していた龍馬が、「高杉、えずい(嫌らしい)ことは無しじゃ。この子の笑顔が曇り始めたき…」と、言いながら、晋作の腕の中にいた彼女をゆっくりと抱き上げ、自分の傍へそっと下ろした。


「さっきから、独り占めしすぎじゃ」


今度は龍馬に抱きしめられ、彼女の頬は紅色に染まっていく。


そして、彼女はその腕の中からそっと離れると、改めて三人の前に正座をし話しだした。


「いつも、それぞれの活躍を聞いて心から凄いなって思う反面、心配で…。毎日、怪我とか病気とかしていないだろうか…とか。いろいろ考えて胸が痛くなる時があるんです…」


彼女の真剣な眼差しを受けながらその胸の内を聞き、それぞれが一点を見つめ黙り込んだ。


「だから、今夜は元気な顔を見ることが出来て…本当に嬉しかった」


彼らは、そう言って微笑む彼女にまた新たな恋心を抱きつつ、それをそっと胸の中へしまい込んだ。自分達が思う以上に彼女が想いを抱いてくれていたことに気がついて…。


「わしらも、おまんに会えて嬉しかったちや」


龍馬の笑顔を受け、彼女はさらに明るさを取り戻した。


そして彼らは、この笑顔こそが、自分にとって一番大切にしたいものなのだと改めて思い、大門が閉まるまでの間、お座敷遊びに興じ、沢山の笑顔と笑い声を胸の中に刻み込んだのだった。



*艶が~る妄想小説* ~もう一つの艶物語~



やがて、大門が閉まり始める頃。


揚屋の玄関先で名残惜しげに別れを告げ、彼女に見送られながら大門へと歩き出した。そして、大門付近に辿りついた彼らは再び振り返り、龍馬は、まだこちらに手を振っている彼女に大きく手を振り返した。


「まだ手を振っちょる…」
「今度は、いつ来られるか分からんが…その時までに、もっと大きなことを成し遂げていたいものだな」


晋作はそう言うと、踵を返し一足先に歩き出した。


<惚れた女を迎え入れる為に…。>


彼女への想いを抱きつつ、その心はもうすでに明日へと向いていた。



「翔太…」
「何ですか?」


龍馬は、晋作の背中を見つめながら、隣りを歩く翔太に声をかけた。


「……今夜は楽しかったのう」
「そうですね…」
「来て良かったぜよ」


そう言い合うと、彼らは同時に夜空を見上げた。


お互いの胸の内はまだ明かせずにいたが、そんな彼らもまた、彼女への想いを抱きつつ心はもうすでに次の戦いへと向いていた。


「さっき、高杉もゆうちょったが…もっとでかいことを成し遂げてあの子をびっくりさせたいのう」

「その時は…龍馬さんにも、高杉さんにも負けませんから…」

「……わしも、負けんぜよ!」


<あの子の笑顔を守りたいから…。>



月は、いつまでも照らし続けていた。


愛する人を想いながら、日本の明るい未来を夢見て戦う男達の姿を…。




<おわり>



~あとがき~


今回も、こがな駄文を最後まで読んで下さってありがとうでした涙やっとこ、ちこっとですが…高杉さんを書くことが出来ました(笑)慶喜×秋斉や、土方×沖田とは違う「思惑」になりましたが…。この三人だと、ほがな感じになってしまいました涙本当は、龍馬×晋作とか、晋作×翔太とかも考えたんですが…。龍馬さんと翔太くんはいつも一緒にいることが多い為、なかなか描きづらいんですよね(⊃∀`* ) あっ、晋作×俊太郎もいいなぁ。誰か、書いてください!!で、読ませて下さい!!


今回は、「思惑」というより、ボーイズトーク的な話しになってしまいましたニヤリ しかし、三人からもこんなふうに取り合いさらたいものです……。あと、ちなみに、以前も「どちらがお好みどすか?慶喜×秋斉編」でも書きましたが、この時代はまだ、誕生日を祝うという行事は無かったみたいで、正月と共に歳を数えていたそうです♪


今回も、読んで下さってありがとうございました四葉2