編集委員会だより 8月30日(火)

誤報のNHK -意図なのか、仕事が雑なのか


    本紙編集委員(社会班) 巷 探山



ハヤ朝報-NHK放送センター・東京

最近、仕事が雑なNHK

(東京都渋谷区のNHK放送センター)


29日、決選投票にもつれ込んだ民主党代表選挙は、新しい代表に野田佳彦氏を選出した。


その代表選挙の中継で、NHKがあり得ない誤った取材情報を放送で流してしまった。決選投票は、海江田万里氏と野田氏の二人の争いとなったが、その際、「今入った情報」としてアナウンサーが次のような情報を伝えた。


「馬淵前国土交通大臣はきょう午前の出陣式で、決選投票になった場合は、海江田経済産業大臣以外の候補者に投票するよう呼びかけた」というものだった。


この前段には、鹿野陣営も野田氏に回るという情報もあり、これらあいまって、第一位の海江田陣営が孤立状態となり、事実上、第二位の野田氏が当確となるような内容であった。


訂正はわずか一回、お詫びなし


しかし、NHKは、その後午後4時過ぎにこの情報に誤りがあったことを認め、馬淵氏は「海江田氏以外」ではなく、政策の近い「海江田氏」に投票するというのが正しい内容だったと訂正したのである。


選挙中での早まった誤報であったため、あたかも謀略かのごとき疑惑も云々され話題となったが、恐らくは単純な取材メモか、原稿の点検漏れだったのではないか。


もっとも、誰かが意図的に「以外」という文字を代入したかも知れず、誠によく出来た失態でもあるが、こればかりは確証がない。


大丈夫か、NHKの報道


NHKは、災害報道なども含め、公共放送として国民の信頼を得ている。そして情報源として頼りにしている存在であるのだが、故意か、過失かは別としても、このような真逆の内容を誤って放送するとは、あってはならない失態と言わざるを得ない。


今回の問題では、馬淵氏が、経済政策において立場の異なる野田氏に投票するということは政策的には矛盾であり、馬淵氏に野合批判の濡れ衣、あらぬ誤解を招くことにもなりかねない。


NHKは、どうも馬淵陣営の関係者にこの点について、記者がお詫びに出向いたらしいのだが、視聴者には午後4時に一回だけ訂正したのみで、しっかりとした視聴者への説明がなされたとは言いがたい。しかも原因は単なる確認漏れなのか、何なのか、ハッキリしない。


こんなことでは、様々な勘繰りや疑惑は払拭できないであろうし、必ず再発すると思われる。


NHKは、これだけでなく、今年6月、野党提出の菅内閣不信任決議案に先立って行われた同党両院議員総会において、「菅総理退陣表明」という速報テロップ(字幕)を勇み足で出してしまうという、問題を起こし、物議をかもしている。誤報ではないと考えているのかもしれないが、当日の菅総理の発言からして、退陣を明言したとは言いがたい発言内容であったことは明確だ。


検証と反省が必要だ


震災も発生し、地震や風水害も頻発している今日の日本だが、こうした状況のなかで、多くの国民が信頼する情報伝達機関であるNHKがこの程度の体たらくとは、愕然(がくぜん)とする思いである。

NHKは、今のところ、今回の問題の説明責任を果たしたとはいい難い。ただ一回訂正しただけだ。

最低でも、しっかりと検証し、視聴者になぜ発生したのか、職員の質が低下しているのか、取材などの体制に問題があるのかなどを説明する機会を設け、再発しないように取り組むべきだ。


巷には、「がんばろう日本」というスローガンがあふれているが、NHKがこれでは、未曾有の震災から「がんばろう」という気力すら拍子抜けする情けない失態に際会し、残念でならない。(終)


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