不老不死の孤独 *TOM | THE ROMANCE JOE  トム~トラ色の日々~

不老不死の孤独 *TOM

これはフィクションではない。



遥か昔より、

いかなる時代にでも人類が切望し追い求めてきた夢がある。



‘不老不死’。



この不老不死を実現させている生物が、地球上に存在する。


ベニクラゲというクラゲの一種だ。



これはフィクションではない。


このクラゲは確かに実在する。

通常一方向に老いていくのみの細胞が、このクラゲにおいては‘若返り’現象が認められている。




どんな気分だろう



死なない身体をもつということは。




きっと、恐怖という感情は著しく衰退していくだろう。


親も友達も恋人も敵も味方も、

みんないなくなってしまう。


出会いも多いであろうが、
多くの別れを経験しなければならない。



そしていつしか誰もいなくなる。


いるのは自分だけになる。


死なない、ということほど孤独で寂しいことはないのかもしれない。



だから

ベニクラゲは試しに神様みたいなひとにお願いしてみたのだ。


「僕に死をくれませんか?」


神様みたいなひとは答える。


「それはならん」


ベニクラゲはなおも尋ねる。


「なぜです?なぜ僕に死なせてくれないんですか?」

神様みたいなひとは答える。


「君はたくさんの命と、たくさん別れを、見てきなさい。

そこに、君の終わりなき命の意味がある」


ベニクラゲは食い下がる。ちょうど彼の命のようだ。

「でも、もううんざりなんです。命と、別れは」



そこで神様みたいなひとは提案する。


「では選ぶが良い。

これからお前を食してやるが、冷し中華の具になるのと、炒め物の具になるのと、どちらだ」






「う~~~ん・・・・・・・・



・・・・・・




冷やされると寒いんで、炒め物で」






もうすぐ


夏がやってくるのである。




あれ



どこからフィクションに変わりました?