日本の構造と世界の最適化

日本の構造と世界の最適化

戦後システムの老朽化といまだ見えぬ「新しい世界」。
古いシステムが自ら自己改革することなどできず、
いっそ「破綻」させ「やむなく転換」させるのが現実的か。

GDPの推移:ウクライナ戦争の黒雲

2022年はコロナ禍が沈静化していく中、ゾンビ企業淘汰の波が幅広い業種を襲い、倒産・破産件数が激増した。ウクライナ戦争・円安が作用した物価高もマイナス要因だったと思われる。日産系(米国ファンドKKR)の自動車部品会社マレリの倒産が当年最大規模で、戦後最大級であった。自動車業界の半導体不足による減産のあおりを受けたようである。

 

経済成長に対するコロナ禍のダメージは欧米並みであったが立ち直りは比較的鈍く日本経済が抱えていた様々な問題がコロナ禍を通過することで顕在化しているということか。人手不足倒産、後継者不在の経営者など、コロナ危機前からあった日本経済の問題である。またウクライナ戦争は2023年になっても終わっておらず暗雲が立ち込めたままである。

 

世界のGDPの推移:立ち直りから急降下へ

コロナ禍からの立ち直りは米国・欧州・中国のいずれも日本より勢いのあるものであった。しかしウクライナ戦争勃発は米中にとって日本よりも大きな打撃となったようである。日本が低迷している時は常に世界の好景気と輸出を頼りにするので、これは良くない兆候である。また上海のロックダウンなどによる経済逼迫もあり、最近では中国の立ち直りの鈍さが取り沙汰されている。また中国の若者失業率も甚大で日本型長期停滞に向かうおそれも論じられている。

 

為替相場の推移:急激な円安

米国FRBが利上げを開始したため日本との間で金利差が拡大し、円安が加速。円安だと輸出競争力を稼ぐことができるので日本の株式市場は円安を好むし、株価も上がり気味になるが、通貨安というのは良いことばかりではない。輸出で得する分、輸入で損する。そもそも富裕国は貨幣への信認があり通貨高となるのが自然である。他方で経済破綻した国は通貨はぼろくそに安く輸入もできない。人為的通貨安政策というのは自然に逆らうものであるが、英国などもこれを手掛けている。しかしそれは強さのためでなく延命措置ではないか。いずれにせよ、通貨安を好みインフレを焚きつけようとしていた日本は皮肉なことに為替介入で円急落を食い止める破目となった。米国FRBや欧州ECBは今後も利上げを続けていくため、今後も過剰に円安が進行するおそれがある。また円安を誘導していたアベノミクスや日銀の黒田総裁が円安=物価高で批判を受けることになった。

 

国際/貿易収支の推移:戦争・円安が直撃

過剰な円安に加え、ウクライナ戦争の勃発でエネルギー価格を始めとする資源価格が高騰し、日本は史上最高の貿易赤字を記録することとなった。ちなみに輸出額も大きく伸びたのだが輸入額の膨張を打ち消すことはできなかった。それでも海外投資のリターンである第一次所得収支の黒字はこれまでになく大きく、経常収支は黒字である。

 

株価の推移:戦争で勢い弱まる

2020年には日銀のETF買いが7兆円を超え力技の介入もしており、他の経済指標を比べ株価に波乱は見えにくい。2022年の日銀のETF買いは6309億円となった。リフレ政策もあり3万円台を超え伸びていくかと思われた株価はウクライナ戦争勃発や米国利上げ再開による米国株価低落により軟調に推移していった。円安や米株価の動向が日本株価を左右している。

 

金利指標の推移:米金利に流され長期金利上昇

米国ではコロナ危機以来物価高感が強く、トランプ政権期の予防的利上げも考えればリーマンショック以来超長期の金融緩和が続いていた。それゆえか今回の米国FRBの利上げ局面は断固としたもので日米金利差拡大・長期化により日本国債が売られ、過剰円安と金利上昇が生じてしまった。日銀は無制限の「指値オペ」で日本国債を買いまくってこれを抑え込んだ。しかし金利差自体は今後も拡大していくので今後も長期金利が跳ね上がっても不思議はない。

 

住宅着工件数の推移:横ばい

 

地価の推移等:持ち直しの気配

日銀のREITの年間買い取り総額はわずか36億円とさらに減少したが地価には昨年の低落から持ち直しの気配。マンション市場が発売戸数を減少させながらも価格が伸びているのと一致した動き。

 

新車販売の推移:半導体混乱がいまだ影響

自動車製造に必要な半導体不足が顕著に。この逼迫状態は2024年まで続くと言われている。ただコロナ禍では半導体を必要とするデジタル機器の需要が急増したがコロナが沈静化すると激減。2023年には急激な半導体減産へ向かいまた不足するか。債券市場や株価は政府が操作できるがモノの需給は簡単には操作できないのである。

産業活動の推移:コロナ禍から立ち直りの気配

2021年の東京オリンピックに向けて公共工事が一時激増したことがデータから見て取れる。自動車業界の不調を受けて鉱工業生産指数の回復は鈍い。

 

ただ安倍政権発足の2013年度から20年度の「建設工事受注動態統計」が34.5兆円ほど不正に過大計上されていたようだが、どのように修正されたのか一目瞭然でない。

 

物価の推移:戦争・円安で異常な物価高

コロナ禍でサプライチェーン閉塞から物流が滞り物価高に。ウクライナ戦争勃発でエネルギー価格が急騰し、日米金利差拡大による円安進行もあり物価全般が異常な急騰に。日銀の黒田総裁は「家計の値上げ許容度が高まっている」と発言しすぐに撤回。アベノミクスはインフレを実現する政策だったのだが悪質インフレで物価高騰し円安政策が高騰助長となってしまった。政府はインフレ対策に乗り出したが、企業物価は耐え難いレベルのはずである。倒産増加の一因でもあろう。

 

石油関連指標の推移:戦争で高騰・政府介入

コロナ禍が一服すると石油価格も上向きになるものだが、ウクライナ戦争の勃発で急騰となった。円安が進行する中でこれはダブルパンチであり、政府はガソリン補助金、石油備蓄の放出に踏み切った。急騰は止まったものの現在でも高止まり感があるし企業には大きな重しである。

 

ロシアは産油国なのでむしろ戦争で高騰すれば戦費もまかなえる胸算用だったのかもしれない。EUなどがロシア産原油等の禁輸に踏み切ってロシアへの依存を断ち切ろうとするがインドなどはロシア産輸入を続けており経済制裁の効果はそれほどではない。

 

金属関連価格指標の推移:まばらな動き

 

 

消費関連指標の推移:値上げラッシュ影響

コロナ禍が一服して正常化に向かうにつれ消費関連指標は伸びるわけだが商業販売総額の急増は石油等の資源高が、小売販売増加については値上げが影響していると思われる。幅広い食品の一斉値上げは近年にない動きとなり、2023年になっても再値上げが続いている。倒産が増加したことも踏まえると経営者にとっても「この世の春」ではなかったのではないか。しかし賃金引き上げが広範な企業で実施されており、プラスの影響があったか?

 

 

 

労働関連人口の推移:失業率低下

生産年齢人口(15歳~64歳)が7500万人を割った。

総人口の減少は2023年1月で前年比で80万人という過去最大となっている。

 

 

コロナ禍で久々に失業率が上昇したが低下していっており、またいまだ完全雇用水準である。失業抑制に奏功した雇用調整助成金の特別措置は2023年に終了している。

 

ところで潜在的失業は表に出にくい労働市場の実態を示すものだが多種多様で恰好の指標はない。そこで休業者数を取り上げてみると案の定、コロナ禍でうなぎ登りになっている。休業理由は一身上の都合みたいな抽象的なものもあり、不景気を直接理由とするのは1割くらいであるがコロナ禍が影響したことは間違いない。また休業者数がコロナ禍以前から上昇傾向なのも気になるところである。

 

日本は終身雇用もあり、景気変動がストレートに労働市場の乱高下をもたらすことはないが、ハローワーク経由にデータが限定された「有効求人倍率」など、旧来の型どおりの指標では水面下で起こっていることはまったく見えないこともあるかもしれない。労働力不足が問題となる中、エコノミストはもっとえぐった指標を開発すべきであろう。

 

賃金統計の推移:物価高で実質賃金マイナス

高水準の賃上げが各業界で実施されているものの、円安進行・ウクライナ戦争による物価高騰の勢いには勝てず一旦持ち直しつつあった実質賃金はマイナスに。

 

日本経済の雑感のまとめ(ウクライナ戦争勃発)

ウクライナ戦争

コロナ禍が一服して世界が正常化すると思ったらウクライナ戦争が勃発して世界経済も大いに揺さぶられている。日銀の黒田総裁は戦争が早期に終結し物価も正常化すると見ていたのではないだろうか。それゆえ物価高騰は短期的な異常にすぎず金融政策変更は必要ないと。2023年に生きているあなたは、黒田が引退した後でも戦争が続いていることを知っている。

 

米国バイデン大統領は手堅いが高齢であるし、米国経済が今後ソフトランディングせずに不況に突入すれば民主党は2024年大統領選挙で敗退し、ウクライナ支援に難色を示す共和党が政権を牛耳ることになる。トランプが大統領に返り咲くのかどうかわからないがウクライナを見捨てロシアと妥協する路線が出てくる可能性すらある。アメリカファーストの共和党政権では台湾有事ですら積極的に動くかどうかおぼつかない。2024年の米国選挙結果を見て日本も戦略書き直しを迫られるかもしれない。米国は保守とリベラルの双子の兄弟のようなもので常に2つの異なる意見があり一枚岩でないことに日本人は注意する必要があるのだ。

 

ウクライナ戦争に対する日本の立場としては、ロシアが簡単に軍事力行使ができてしまうと中国に変な自信を与え、台湾の武力併合の危機が高まるためウクライナを手厚く支援しているわけだ。親ロ派の森爺さんを振り切って日本がロシアとも対立することとなっている。2027年までに台湾有事という見方もあり、日本はイザという時のために欧米との幅広い連携を志向しているのである。麻生爺さんも日本が台湾のために中国と戦うと豪語している。麻生爺さんだけは生き残りそうだ。

 

ところで軍事大国ロシアの苦戦は、ロシアが核兵器は持っているが「張子の虎」だったことをある程度露見している。これは中国も想定していなかったことであろう。戦争真っ最中にロシア傭兵を率いるプリゴジンの反乱などあり得ないほど醜態をさらしている。中国に台湾武力併合計画があった場合、楽観論の修正を迫られているはずである。中国高官が最近「日韓が髪を金髪に染めても西洋人になれない」と発言したが、これは日韓の欧米との密着に苛立っている証拠である。

 

ただ首都キーウの防衛と、ウクライナ東部やクリミア半島の奪回は別の次元であり、どういう結末が待っているのか誰もわかっていないような状況である。戦争は続く。

 

ところで欧米の手の届かないところで中国の仲立ちでサウジアラビアが宿敵であるイランと和解に向かっている。これが真に和解に向かうなら青天の霹靂で、米国が昔から敵視してきたイランに対する包囲網の構図も崩れる可能性がある。もちろんイランを最大の敵とするイスラエルにとっても信じがたい展開である。これにはサウジアラビアが米国リベラルを嫌悪して欧米におもねらない方向に進んでいるという背景がある。またサウジアラビアはウクライナ戦争和平のお膳立てを開始したようである。米国内がLGBTや移民を巡り文化戦争で分裂気味なので世界に号令をかける力は弱まっており、日本もネット右翼のような嫌中・嫌韓だけの情緒ではBRICS加盟国拡大などの世界の現実を見失ってしまうだろう。

 

 

アベノミクス総括なし

ところで2013年に始動したアベノミクスはもう10年近くになるが成功したのか?

 

ゼロ金利政策自体はバブル崩壊以降からずっとだが、リフレを明確に志向したのがアベノミクスであった。しかしそもそもウクライナ戦争までまともな物価上昇はなく停滞が続いていた。

 

確かにアベノミクスのおかげで資産が膨らみ、日銀の直接買い上げもあって株価も地価も上昇を続けたが、実質賃金はマイナス圏がほとんであった。アベノミクスのおかげで超富裕層が6万世帯から9万世帯近くとなり、富裕層(純金融資産1億円以上)については76万世帯から倍近い124万世帯以上と増えている。勝ち組を称揚するのが好きな週刊SPA!の喜びそうなところだ。

 

ただ富裕のトリクルダウンの気配は見えない。実質GDP成長も2%以下を這っておりアベノミクス以前と変わり映えもない低成長。また日本経済の大部分は欧米と同様に国内消費だが、安倍政権期の2度の消費税引き上げは消費にダイレクトに負の影響が及んでいる。少子高齢化による構造的な負担がネズミ講的社会保障を補填するための長期の連続的増税の不安を生み出し、内需は暗い。

 

岸田首相は外国に行って「キシダに投資を」などと言っているが、日本の低迷はマネー不足が原因ではないのでとんちんかんである。低金利政策により金を借りて投資がしやすい環境であるし、企業の内部留保は積み上がっている。日本の海外投資のリターンは貿易の富をはるかに上回る。日本のマネーが日本の投資に向かっていないだけである。「こんなにも金融資産のある日本に投資を!」というのは変で、「そんなに金があるなら自分の金を自分に投資しろよ」ということになるではないか。

 

2023年に日銀の黒田総裁が退任し、アベノミクスの総括はできずじまいである。マスコミはジャニーズを擁護するくらいの輩だから当然、総括するわけがない。一億総白痴化。

 

後任の植田総裁は、拙速な政策変更の方がリスクがあるとして量的緩和を維持している。植田総裁の日銀も戦争が間もなく終結すると信じたいのだろう。確かに急ブレーキやUターンをするとぶっ壊れるだろう。企業・金融あらゆるものがこの低位均衡のレジームに順応しきっているのだから。点滴を打ち銀行や大企業などを過保護に守ってきたヘンテコな日本の自由化は、文句言わない弱者に自由化が集中し、忖度野郎は守られている。たとえ一部にしわ寄せできたとしても全体としての日本の労働生産性は国際比較で先進国最下位レベルを毎年更新している。スロベニアやトルコを何とか上回っている水準だ。年功序列・終身雇用で正社員を守り、成績よりも長時間会社にいる忠誠心を貴ぶ文化も影響し賃金も上がりにくい構造である。

 

ただ、あなたは黒田のことは心配しなくてもいい。黒田はバブル崩壊を惹き起こした日銀総裁・澄田智と同様に天皇陛下から勲章をもらえるだろう。

 

 

岸田政権の漂流

マイナ保険証問題では岸田政権の支持率が急落している。そもそも技術をトップダウンで強制するという中国風国策で、減反政策などが不可能な米国ではあり得ない官製強制デジタルである。まして直接当事者になっているのがハイテク機器が苦手な一人暮らしの70歳以上の老人だ。マスコミの寵児であった河野太郎もこの件で見事に宰相の器でないことを露呈している。戦後三代続けて総理を目指したがダメだな。

 

ところで岸田総理は2022年の出生率が初めて80万人を割ったことで危機感を持っているようだ。しかしそもそもバブル崩壊後に全銀行を救済し既存サラリーマンを守るかわりに若い芽を摘んだのだ。当時若者だったロスジェネ世代も高齢化しているが400万人近くが正規労働者以外であり、当然というか未婚で子供もいない人も多いだろう。今更「出生率が低い!困った、誰か納税者を大量生産してくれ」とか言っても遅い。また心配するなら小泉政権の頃に本気で心配すべきだった。

 

「がらんとして人のいなくなった町、しかし銀行だけは残った」という終わり方だな。

 

しかし少子化対策が国による給付というのはまた岸田らしい。子育て世代は乞食ではないのだ。彼らの雇用者がたくさん給料を払えるようにするのが政府の仕事である。何でもかんでも政府が不足分を補填して回るのは失敗した社会主義国家の経済である。また子育て支援と出産という人生計画は実は別問題である。

 

将来の労働力激減を予言する出生率低下だけでなく目先の労働者不足も一段と深刻化している。例えば建設が進まず大阪万博も危うくなっている。運輸業・建設業には2024年問題がある。また倒産理由にも人手不足が挙げられている。さあプロジェクトだ、しかし働き手がいない。金融の錬金術はまだいくらでもでき株価も引き上げることができるが労働力は生み出せない。「会社を守った!しかし人がいない!」。もっと会社より人を大事にする社会にすればよかったのにねえ。マスコミで財閥称揚キャンペーンをやっている場合じゃないね。

 

「がらんとして人のいなくなった町、しかし会社だけは残った」という終わり方だな。

 

また財政赤字を言うならば、私学助成などやめるべきだろう。バブルの頃に私学が腐るほど乱立し若者人口も減少する中、私学にカネを補給し続けるのは「教育」という聖なるものを守るためでなく私学経営者を守るためだ。塾が減っているように私学も減るのが自然の理だろう。国の助成によりそもそも国公立とは異なる私学の独立性も損なわれることになる。私大などは外国人留学生に頼っている有様だ。

 

「がらんとして人のいなくなった町、しかし私学だけは残った」という終わり方だな。

 

 

リフレ失敗後の打開策はあるか

さて、無責任な立場から日本の起死回生策を考えてみた。

長年エリート達が合意していた政策がこんなにダメならば無茶なことを自由に考えてみるのも一興。

 

①救国課税(アベノミクス利得税)⇒アベノミクスで膨張した資産に課税⇒国家財政を救う

 

消費を低迷させる消費税路線は廃止、むしろ消費税減税。敗戦後に戦時利得税を課したが、同じように得したものから取るべき。右翼が救国を叫べばいいのではないか?ちなみにウォール街はこんな課税は絶対に許さないだろうが。

 

②国有資産一斉放出⇒国有林を含め聖域なき払い下げ⇒国家財政を救う

 

NTT株放出が議論されているがNHKも資産ごとバラバラに民間放送等に売却する。NHK資産は設備が全国にありコンテンツも相当あるのでかなり高く売れるはず。また電波行政という点で地方割り当ての零細民放もこの際一斉整理する必要がある。市町村合併と同じ発想でいい。インターネットが発達しウクライナ戦争では衛星インターネットが活躍している。くたびれ果てた電波利権地域割というものにもう経済合理性はない。そもそも地方民放も補填がなければ赤字である。

 

永遠の衰退・縮小を阻止するためここらで庶民増税なき財政再建の思い切った資金捻出が必要だ。日本は必ずしも国有資産に乏しい国ではない。探せばいくらでもあるのではないか。民営化を口実にすればいい。

 

③ゾンビ企業一掃の利上げ⇒企業過保護政策を転換

 

将来性はないが低利のおかげで存続できているゾンビ企業温存を止め、資本・労働力を囲い込んでいる不良企業をドッジプラン並みに一掃する。労働力不足の中で労働力が低成長産業から解放されるのはむしろポジティブと言えよう。これは不採算産業から高採算産業への転職支援と並行する必要がある。体力のない中小零細の合併も促進する必要がある。

 

人手不足・非正規労働力が拡大する中で人口過多期の人海戦術的な戦後の守られたサラリーマン社会を維持し続けるのには無理がある。小泉政権期から始まった切り捨て可能人材で労働力を手当てし様子を見るという企業の守りの姿勢を払拭する必要がある。儲からない企業から資本と労働力を没収していいのである。

 

④労働者不足を利用して賃上げ強化⇒低位均衡(低賃金・低利・低成長)からの離脱

 

ゼロ金利・マイナス金利を続けてきても一切燃え上がらないし、最下位周辺で安定している負け犬野球チームみたいになってきている。無理せず借金せず増資もせず、儲けず、低賃金でもだらだらと存続できる体制となってしまっていた。手厚い補助もあるから。

 

しかし現在の賃上げがうまく伸びていけば、将来に物価が再び停滞した際には賃金は下がりにくいので実質賃金上昇による消費増をもたらす好循環が可能となるかもしれない。賃金を上げられない弱小雇用主は淘汰されるが、賃上げこそが日本経済再生のチャンスかもしれない。

 

⑤東京・大阪大都市の一部を移民天国に⇒多民族共和という真の大東亜共栄圏に

 

偏狭な地方はともかく、大都市は日本民族以外がいるのに慣れている。東京のコンビニで日本人以外の店員がいても驚かないし、日本人以外の土建屋がいても驚かない。

 

例えば日本の大学に留学する日本語ペラペラのアジアの学生は卒業後、日本の宝とみなすべきである。東京・大阪・博多などの大都市において、少なくとも戦略的に日本が味方にしたい国の市民が簡単に会社を立ち上げられるようにする。太い切れない同盟や絆というのは政治家と役人の握手でなく市民交流という基盤がいる。大都市ではこれは可能だろう。労働力不足を解決しないが一定の緩和になる。

 

日本のこれまでの政策は世界経済回復による輸出増で停滞から脱するなどという他力本願だったような気がする。世界が不安定化し米中対立も深まる中、内需を見直す必要があるだろう。