今週もやってきたよWOWOWエキサイトマッチ。今日はまずSバンダム級タイトルマッチから
チャンピオンは小さな達人、マエストロの異名を持つサウスポーのリカルド・カルドバ、そして挑戦者は久しぶりにアイルランド人王者誕生の期待がかかる発電機の異名を持つバーナード・ダン。身長リーチ技術で挑戦者を上回るチャンピオンが敵地で初の防衛戦に挑む試合。
まずは序盤、マエストロの伸びのあるカルドバの右のリードブローの前にダンは前に出ることすら許されません。なんとか近づこうとしますが距離が違います。アイルランドの大応援団も物ともせず攻め続けるチャンピオン有利で進む・・・と思われた3Rの中盤、バーナード・ダンの放った左フックがチャンピオンの顎を綺麗に打ち抜き、派手に尻餅をついてダウン。ダンは一発で形勢をひっくり返したかに見えました。しかしチャンピオンはダメージを残しながらも冷静に対処し、次のラウンドからは逆に右フックのカウンターで応戦、一気に畳みかけようとしたダンは逆にダメージを負ってしまい、さらにバッティングにより額を切り右目に血が入ります。ようやく体力が回復し始めたコルドバは逆に5R攻勢に出ます。右のジャブから左のフックのワンツーにさらに右のフックを被せるワンツースリーのパンチ。これがダンのガードを突き破りことごとくヒット。ついに逆転のダウンを奪います。時間はまだ半分残っています。チャンピオンは前に出て仕留めにかかります。なんとか粘ろうとする挑戦者。しかし挑戦者の放った左フックに待ってましたとばかりの右フックのカウンター。挑戦者は沈み込むように倒れます。これは決まったなと思えるぐらい強烈なダウン。しかし挑戦者はここでアイリッシュ魂を見せ立ち上がります。なんとか逃げ切った5R。しかし挑戦者のダメージは深刻。6R一気に攻勢に出るコルドバ。ガードを上げて必死に耐えるダン。敵地で必死にパンチを振るうコルドバの攻撃に耐え切ったダンは、逆に左フックで応戦。これがコルドバに深刻なダメージを負わせ、両者共にダウン寸前の状態。勝負の行方はまったくわからなってきました。ここからアイルランドのサッカーファンを思わせる応援に後押しされる形になって、ダンが距離関係なしの打撃戦に持ち込み、優勢を奪っていきます。7R8R9Rと押せ押せのダン、しかしダンが左フックを命中させた数だけコルドバも右フックを命中させる、激しい消耗戦と化した試合は10Rに動きます。敵地での接戦では判定不利と見たチャンピオンが10R最後の力を集中して前に飛び出します。不意をつかれた挑戦者ダンはモロに貰ってしまい後退。さらにコルドバは長い手を生かして、ダンの届かないところからボディにまとめてパンチを食らわせます。疲労困憊のところへコルドバは最高のボディラッシュを見せ、ダンの体はくの字に折れ今にも手をつきそうな状態。これは勝負あったと思わせる悲鳴と共にトドメを狙う王者ですが、ここで10R終了。ダンの敗色は濃厚になります。調子づいたチャンピオンは一気に攻勢をかけ、再び上下の打ち分けてのラッシュに再びくの字になる挑戦者。もう終わると思った矢先の出来事でした。挑戦者の放った意地の一振りがチャンピオンの脳を揺らします。支点の定まらないチャンピオンに畳み掛ける挑戦者。ついに耐え切れなくなったコルドバは再び床に倒れます。まさかまさかの大逆転のダウン。ふらつく王者、体が重い挑戦者。最後の意地を見せる両者の打ち合いですが、ダウンを奪った挑戦者の勢いが王者を上回り、カウンターの左フックで再び王者コルドバは後ろに吹き飛び2度目のダウン。観客のボルテージは最高潮!しかしまだ王者の眼は死んでいません。前に出るダン、しのぐコルドバ。コーナー際の攻防で体勢を崩すほどの大きく振った挑戦者ダンのパンチは、王者コルドバの意識を飛ばす失神KO。
11R2分59秒・・・合計6度のダウンを奪い合った壮絶な試合はバーナード・ダンが新王者誕生という結末で決着しました。ダンはパンチ力はあるものの、体格的にも大きくなく、体の硬い日本人に近い体型をしています。それでも大声援に押される形で見せたダウンしてもピンチになっても諦めないアイルランド人の誇りをここに見ました。敗れましたがリカルド・コルドバも素晴らしいファイトでした。テクニックも申し分なく、そしてピンチになっても完全アウェーの孤独な状態でも決して諦めない強いハートを持った素晴らしい選手でした。この両者の素晴らしい魂の強さがあったからこその名勝負。間違いなく今年のベストバウト候補に入る一戦でしょう。
さて、もうひとつの試合。メインであるポール・ウィリアムスvsロナルド・ライトのミドル級12回戦。
アメリカの新生と呼ばれ、期待を一身に集めるサウスポー、ポール・ウィリアムス。身長185cm、リーチは208cmという常識外れの体格を持つ彼ですが、呉紋はまだイマイチ評価しきれていません。ウェルター級王者になったアントニオ・マルガリート戦も微妙な判定でしたし、カルロス・キンタナという格下相手に負けています(リマッチでは1RKO)、2階級目になるSウェルター級王者もWBO暫定王者という地味っぷり。まだまだ才能だけで勝っているという感じです。対するロナルド・ライトは長くSウェルター級王者を守り続けた名王者。シェーン・モズリーに完勝に3団体統一王者にも輝き、フェリックス・トリニダードを再度引退に追い込んだ名選手です。ガードが固く、長い右のリーチブローで相手に長所を潰し、地味に勝ち上がる嫌なタイプの選手です。最近はバーナード・ホプキンスに敗れて21ヶ月ぶりの試合。試合はポール・ウィリアムス有利の評価ですが果たして?
まずリングに上がる両者ですが、ポール・ウィリアムスがデカい!あの長身で鳴らしたロナルド・ライトが小さく見えるほどの大きさです。リーチ差も明確にウィリアムスがリードしています。お互いサウスポー同士の一戦ですが、正直あまり期待しないで見ていただけに、息を呑む展開となりました。1Rこそ様子見だったポール・ウィリアムスでしたが、2Rから高速の連打を放ってきます。スピード威力共に文句なしのこのパンチ。これを延々とラウンドが終わるまで続けます。ライトは鉄壁といわれたガードで凌ぎ、ジャブを当てていきますがそれでも止まらないウィリアムスの速い攻撃に押され気味になり、パンチを貰って後退します。ライトにペースを握られると不利と思ったウィリアムス、ウェルター時代は体力面で難もありましたし、速めに攻勢を取ってライトのリズムを掴ませない作戦なんだな。最初はそう思いました。しかし3R、4R、5R、とポール・ウィリアムスの怒涛の連打は止まることを知りません。さすがに堪えたライトは思わずウィリアムスの右腕をホールドします。しかしウィリアムスは右腕を抱きかかえられたまま、絡みつくような左アッパーを放ち、ライトのクリンチを解いてしまいます。本当に恐ろしい選手です。中盤以降もペースが落ちずに打ち続けるウィリアムス。息の切れる様子もありません。逆にライトの顔がどんどん腫れていきます。いつものロナルド・ライトの立場をそっくり替えてしまったような光景。ウィリアムスのパンチは決して軽い連打ではなく、しなりのあるパンチは顔を腫らせ、さらに上下左右と綺麗に打ち分けながら、あの鉄壁のロナルド・ライトのガードを突き破り始めます。10R過ぎる頃にはKOの期待すら抱かせる展開まで持ち込みます。しかし最後はロナルド・ライトがカウンターを決めるなど意地を見せますが、勢いを変えるほどのパンチにならずにそのままウィリアムスが押し切り12R終了のゴングが鳴ります。結果はウィリアムスのほぼフルマークの判定勝ち。まったく危なげのない勝利でした。
正直びっくりしました。ポテンシャルの高い選手ではありましたが、あのロナルド・ライト相手にダウンを奪いかけるまでの猛攻。体格、リーチ、スタミナ、パンチ力。どれをとっても一級品の化け物ボクサーに成長した新生ポール・ウィリアムスを、まさかロナルド・ライト相手に見せるはまったく予想していませんでした。ミドル級に上げたことで減量が楽になった影響もあるかも知れませんが、今のミドル級王者となら誰とやっても有利な展開に持っていける。いや、それ以上のクルーザーまでの6階級制覇もいけるのではないか?そう思わせるポール・ウィリアムスという選手の歴史に残る素晴らしいファイトでした。しかしウィリアムスはミドルからウェルターまでの3階級で強い相手とやりたいとのこと。減量の心配があるのであんまり薦めたくないですね。でももしもウィリアムスvsパッキャオなんてカードが組まれるとしたら・・・天地がひっくり返るような衝撃でしょうねw
さて、来週はついに西岡利晃がメキシコで防衛戦。相手はジョニー・ゴンザレス。間違いなく強豪です。特に左フックが見えない角度から飛んでくるだけに、サウスポーの西岡選手はかなり有効なパンチなのは間違いないでしょう。西岡選手がスピードを維持して動き回れれば逆に西岡選手の右フックがゴンザレスに命中するでしょう。どちらにしてもKO決着は間違いない試合になると思います。是非とも渡辺二郎以来の日本人海外防衛を果たして欲しい!西岡選手のように強いハートの選手ならきっと海外でも勝ってくれると信じています!