昨年の10月初旬、その日の朝も愛車フィアットパンダクロス4×4に乗って職場に向かいながら、すれ違う車を眺めていました。
みんな良い車に違いないのですが、最近でも釣り目で怖い顔をした車がやはり多く、どうにも好きになれません。
「パンダよ、やっぱりお前以上の車は見当たらないね。」、と、ご機嫌なツインエアエンジンを操りながら、もう他の車なんて考えられないや、と、パンダのオーナーである幸せをかみしめていました。
信号で止まるとき、パンダクロス4×4はマニュアル車ならではの強みを発揮しました。それは、アイドリングストップをするかどうかをドライバーに選ばせてくれることです。オートマ車だと、信号がすぐに変わるのが分かっているときにも勝手にエンジンが止まるので煩わしいですが、マニュアル車だとクラッチを踏んでいればエンジンはかかったままにしておけるのです。
アイドリングストップ機能は、オートマ車よりマニュアル車に向いています。必要のないエンジン停止と再始動をしなくてすんで、パンダクロスは本当にストレスの少ない車でした。
オートマ車では仕事にあぶれることが多い左手も、マニュアル車ではシフトレバーを操作するという仕事を与えられて大活躍でした。左手を使うことで運転姿勢も正しくなって、疲れにくいこともグッドポイントです。
なにより運転する楽しさが、オートマ車とマニュアル車では比較になりません。今では少なくなってしまった車らしい車、かつては国産車にもたくさんあったのになあ。私はパンダクロスのことが本当に大好きでした。
「これからもずっと一緒だ。」、と、私はパンダに語りかけました。
と、その時、前を走っている車に目が留まりました。それは、本田技研の電気自動車、ホンダeでした。
すると、パンダが、
「電気自動車もいいよね。どうだい?」、と、言ってきました。
「電気自動車かあ。どうなんだろうね。良い話もきくけどねえ。」、と、私は答えました、
ホンダeはとてもコンパクトでかわいらしく、しかも近未来的でありながらもレトロ調な魅惑的なビジュアルをしていました。なんと、サイドミラーもカメラになっているという徹底ぶり。「やるなら、ここまでやるべきだよね。」、という、本田技研の意気込みを感じとることができます。
私はちょっとときめいて、たしかにホンダeは、車好きなら一度は乗ってみたい車だと思いました。
そんな私の心の内を察したかのように、パンダは、「俺も電気自動車になってみたい気もするなあ~」、と、独り言のようにつぶやきました。
「何言ってるんだ、よしてくれよ。今のままで十分だよ。お前には本当に何の文句もないんだ。」、と、かぶせるようにパンダに告げながらも、電気自動車への興味を持ってしまった自分の心に気がついていました。
まったく不満がない。そこがパンダクロスの欠点と言えば欠点でした。パンダクロスに乗って3年が経とうとしている頃でした。