こんばんは。 

今回のパラレル☆MIXは、巷で話題の『へ○た医桃祭り』。

私もついつい触発されてモジモジしていたところ、いつも仲良くしてくれているpopipiさまからの『パラレルなら一つくらいヘ○タ医さんがいてもいいのでは?』のお言葉に背中を押してもらって、『そうだよね!いいよね!!』っと私も書いてみました。へ○た医さんを!!
いつもありがちゅう♡

ということで今回のパラレル☆MIXは、『へ○た医桃祭り』バージョンです(笑)

いきなり送り付けた突撃メッセージで『へ○た医』を連呼する私を、快く受け入れてくださった風月さま、かばぷーさま。
なぅにて突然お伺いした無礼モノに快諾してくださった猫木葵さま、popipiさま。
ありがとうございますぅ~ヽ(*・ω・)人(・ω・*)ノ


それでは、どんなお話でもドンと来い!なお方は以下よりどうぞ~(・ω・)/



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医師×患者





「最上さん、回診の時間だよ」

 

「敦賀先生!」

 

明るい日差しが差し込む病室に、軽くノックをして足を踏み入れる。 

もう随分と長く入院している彼女の病室は、ぬいぐるみや小物、人形など彼女の手作りのモノで溢れていて、病室とは思えないほど可愛らしく飾られている。

 

「体調はどう?」

 

「とてもいいです。私本当に病気なのかな?って思うくらい!」

 

バイタルを確認しながら何気ない会話の中で様子を窺う。

彼女も慣れたもので、指示を出さなくても血圧測定のために腕を出すし、聴診器を耳にかければ、なんの戸惑いもなく可愛らしい薄ピンク色のパジャマの前を開ける。

キャミソールの中へと手を差し入れ、聴診器を当てる。

 

「ん…っ」

 

「あぁ、ごめん。冷たかった?」

 

「いえ…

 

無表情を装って謝ると、彼女もなんでもないように答えるが、普段より速い心音を聞きながらそっと伺い見た彼女の耳が赤くなっていることに気づき、口角が上がりそうになる。

 

「うん問題なさそうだね。朝食もちゃんと食べたみたいだし

 

「先生は朝ごはん、食べました?」

 

「え?あぁ…食べ…たよ?」

 

「うそ!また食事を疎かにしてますね!?もうっ!お医者さんがそんなんじゃ説得力ありませんよ!」

 

ぷりぷりと俺を叱るその仕草さえ、目を奪われるほどに愛らしい。 

「また夕方様子を見に来るよ」といつものように告げて、笑いながら退室する。 

 

「春の陽だまり」と称される笑顔を貼り付け、入院患者や看護師、スタッフたちに愛想を振りまきながら廊下を歩く。

若年ながら大学院での研究成果が認められた俺は、院内に与えられた専用の個室へと入る。

研究室の扉を後ろ手に閉め、貼り付かせた笑顔の仮面を剥がした。

 

薄暗い室内に浮かび上がるPC画面。

モニターに映る彼女のCTとMRI画像に見入る。

 

「キョーコ…」

 

彼女の名前を呟きながら、そっと手を伸ばし画面に触れた。

 

 

入退院を繰り返し、1年の殆どを病院のベッドの上で過ごしている彼女。 

父親はおらず、母親は弁護士の仕事が多忙なのを理由にあまり病院へは寄り付かない。

なかなか完治の難しい病気を患い不安で仕方がない筈なのに、それでも周りに明るく振る舞い、治療にも前向きな彼女の笑顔は、無機質な院内を鮮やかに彩る大きな花の様で、医師をはじめスタッフや患者たちの人気者だった。

 

でも主治医である俺は知っている。

 

なかなか姿を見せない母親を待ち続けて、窓の外を見つめる姿を。

夜中、どうしようもない不安に駆られて涙を流す姿を。

 

大切に大切にしている、青く輝く石に祈る姿を…。

 

 

彼女の持つ石が、昔俺が出会った女の子にあげたものだとわかった時、俺の中で彼女の存在が大きくなった。

そして彼女が周囲に笑顔を振りまけば振りまくほど、人に優しくすればするほど、俺の心は乱されていった。

愛し慈しみたいと思っていた筈の彼女を、誰にも見せたくないと思った。

その笑顔も愛らしい声も、全て自分の中に閉じ込めて隠してしまいたい。

彼女を俺だけのものにしたいと強く願うようになった。

誰も知らない彼女を手に入れたい。

俺の手の中で、あの笑顔が屈辱と快楽に歪む瞬間が見たいという衝動を、抑えられなくなった。

 

 

 

†††

 

およそ一月ぶりに彼女の母親が病院に姿を見せた。 

彼女の手術の日取りが決まったのだ。

淡々と手続きを済ませる母親の隣で、少し緊張した面持ちで座る彼女。

俺は主治医として説明しながらも、意識は彼女の方に向いていた。

 

普段病棟で見せる明るく意思の強い瞳ではなく、不安に揺れるそれ。

ぎゅっとパジャマを握りしめる小さな手は、力を入れ過ぎて白くなっていた。

 

説明と手続きが終わると、彼女の母親は忙しそうにヒールの音を響かせ早々に帰って行った。

 

「最上さん…」

 

俯く彼女に声を掛ける。

 

「敦賀先生!手術、よろしくお願いしますね!」

 

一瞬の間を置いて顔を上げた彼女はいつものように笑顔だった。

 

(ちがう…)

 

俺が見たいのはそんな顔じゃない。

不安も恐怖もすべて、俺にだけ見せて。

 

 

誰も知らない本当の君を

僕だけに……





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6/12  一部訂正しました~