こんにちは。 
今日は息子の学校の体育祭です。
出番は午後の2種目のみ( ̄□ ̄;)
そんな訳で近くのカフェで涼みながらポチポチしました(笑)



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大学生×大学生





「では、かんぱーい!」

 

学生御用達の安いながらもちょっとオシャレな居酒屋で、大原さんの高校の先輩だという貴島さんの掛け声に合わせて乾杯のアルコールを頭上に掲げる。

 

「………かんぱーい…」

 

真正面から痛いほどに眩しいキュラキュラの笑顔を浴びて、私は背中に冷たい汗が流れるのを感じながらグラスを持ち上げた。

 

「いやぁ、愛理ちゃんにお願いして正解だったよ~!3人ともこんなに可愛いなんて奇跡だよね」

 

上機嫌で仕切るのは、私たちの通う女子大の近くにある国立大学の学生、貴島さん。

その左隣には、メガネが似合うすっきりとした美形ながら柔らかい物腰で優しそうな印象の社さん。

そして右隣に座って、その整い過ぎた美しい顔で全開の笑顔を振りまく……敦賀さん。

 

(ううぅ~視線が痛い)

 

「そんなぁ~。貴島先輩こそ、お友達までこんなにかっこいいなんて~」 

 

お互いのメンバーを褒め合い和やかに進む、いわゆる『合コン』。 

今日は同じ授業を取っている大原さんたっての希望で開催された。

 

愛華ちゃん情報によると、大原さんは高校時代から貴島さんのことが好きで、このチャンスに貴島さんともっと親しくなりたいらしい。 

 

高校生になるまで女の子の友達がいなかった私は、大学で出来た仲のいい友達の恋に協力をしたいと思って参加を決めた。

 

「みなさん、こんなにカッコいいのに彼女とか本当にいないんですかぁ?」

 

早速ほろ酔いになってきた愛華ちゃんが、直球を投げる。

 

「え~いない「俺はいるよ?彼女」」

 

貴島さんの返事に食い気味に答えたのは敦賀さんだった。

 

「えぇぇ~!?彼女がいるのにこんなトコロに来て、敦賀さんて案外遊び人なんですかぁ?」

 

「普段は参加しないんだけど、今日は特別」

 

「彼女さんと喧嘩ですか?」

 

「敦賀さんの恋人ってどんな女性なんですか?」

 

話題は敦賀さんの彼女の話に。

 

「すごくかわいいよ。俺より年下なのに可愛くてすごくしっかりしてて頭もいい。いつも俺の健康にまで気を使ってくれるし、可愛いのにが利くし、俺の家族や周りの人たちにもすごく愛されてる。まんまり可愛すぎて本当は俺が独り占めしたいんだけどね。それから…」

 

「お、おい蓮…」

 

反対側の席から社さんが慌てて止めようとするけれど、敦賀さんの暴走は止まらない。

 

「私…お手洗い…」

 

誰にいう訳でもなく小さく呟いて席を立った。 

貴島さんが上手く話題を変えてくれて、盛り上がる声が聞こえる。

 

 

 

 

レストルームを出ると、通路で長身の超絶美形が壁に凭れ腕を組んだままこちらを見ていた。

 

「……なんでいるんですか…?」

 

「それは俺が愛する彼女に今日のデーとを断られたからね

 

「だからそれは…」

 

「君が友達を大事にしたい気持ちはわかるよ。でも、正直面白くはないよね…」

 

「あ…」

 

「だから今夜は俺のお願い…聞いてくれるよね?」

 

「え……?」

 

相変わらずキュラキュラした似非紳士な笑顔でそう言うと、敦賀さんは席に戻って行った。

 

 

 

敦賀さんから少し遅れて戻ると、いつの間にか席替えが行われていて、貴島さんを私と大原さんで挟むような席順になっていた。 

 

「おかえり~キョーコちゃん」

 

「はぁ…」

 

「ねえ、キョーコちゃんてすごく料理が上手なんだって?」

 

大原さん達から聞いたのか、貴島さんが私に尋ねてくる。 

 

「えと…上手かどうかはわかりませんが、お料理をするのは好きです

 

「どんな料理が得意なの?」

 

貴島さんに聞かれるままに答える。

魚も捌けるし大根の桂剝きもできるって言ったら、みんな何故かとても驚いていた。 

 

「キョーコちゃんて家庭的なんだねぇ」

 

貴島さんが感心したように言う。 

 

「はいっ!私、所帯臭いので!!」

 

「はははっ、キョーコちゃんのそういう所いいね」

 

貴島さんに褒められた直後、背筋が凍るような冷気を感じた。

 

「ひぃぃっ」

 

私が悲鳴をあげる前に、向かいに座っていた社さんが叫んだ。

社さんの顔色は青く、右手は胃の辺りを摩っている。 

 

冷気の発生源である彼は、相変わらず色気爆発の笑顔で隣に座る愛華ちゃんの話しを聞いている。 

 

(社さん…敦賀さんの笑顔の下の冷気がわかる人なのねっ)

 

お仲間発見に感動の視線で社さんを見つめると、「キョーコちゃん、お願いだからそんな目で俺を見ないで!!」とよくわからないことを叫ばれた。

 

真っ青な顔色した社さんの視線の先…

敦賀さんが似非紳士な笑顔で私に向かって口パクで言う。

 

『お・し・お・き』

 

 

 

帰るの……怖い。