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春月の『ちょこっと健康術』

おてがるに、かんたんに、てまひまかけずにできる。そんな春月流の「ちょこっと健康術」。
体験して「いい!」というものを中心にご紹介します。
「いいかも?」というものをお持ち帰りくださいませ。

【東洋医学概論】

 

問題89 陰陽学説で同じ属性の組合せはどれか。

1. 内部 ― 上部

2. 奇数 ― 老年

3. 左側 ― 衛気

4. 静止 ― 急性

 

答え: 3

 

左側は陽、衛気も陽である。 したがって、3が同じ属性の組み合わせとなる。

 

1. 内部は陰、上部は陽である。 内部-下部あるいは外部-上部とすれば、正しい組み合わせとなる。

2. 奇数は陽、老年は陰である。 奇数-少年あるいは偶数-老年とすれば、正しい組み合わせとなる。

4. 静止は陰、急性は陽である。 静止-慢性あるいは運動-急性とすれば、正しい組み合わせとなる。

 

 

問題90 五行色体の組合せで正しいのはどれか。

1. 唾 ― 呻

2. 香 ― 鼻

3. 辛 ― 思

4. 爪 ― 神

 

答え: 1

 

唾は五液(涙・汗・涎・涕・唾)の水であり、呻は五声(呼・笑・歌・哭・呻)の水である。 したがって、1の組み合わせが正しい。

 

2. 香は五臭(臊(そう)・焦・香・腥・腐)の土であり、鼻は五官(目・舌・口・鼻・耳)の金である。 香-口あるいは腥-鼻とすれば、正しい組み合わせとなる。

 

3. 辛は五味(酸・苦・甘・辛・鹹)の金であり、思は五志(怒・喜・思・憂・恐)の土である。 辛-憂あるいは甘-思とすれば、正しい組み合わせとなる。

 

4. 爪は五華(爪・面色・唇・毛・髪)の木であり、神は五神(魂・神・意・魄・志)の火である。 爪-魂あるいは面色-神とすれば、正しい組み合わせとなる。

 

 

問題91 肺に作用して発声・呼吸を推動するのはどれか。

1. 営気

2. 衛気

3. 宗気

4. 元気

 

答え: 3

 

宗気は、水穀の精微と天の清気が合わさり、化生される。 胸中に集まって、心の血を推動し、肺の呼吸と発声を推動する。 したがって、3が正解。

 

1. 営気は、豊かな栄養分を持ち、血の一部として脈中に入る。 全身をめぐり、組織・器官などの活動を支える。

 

2. 衛気は、外は皮膚・肌肉から、内は臓腑に至るまで、全身にくまなく分布する。 外邪の侵襲を防ぎ、皮毛を潤す。 また、肌肉・皮毛・臓腑などを温め、腠理(そうり)の開闔によって発汗を調整し、体温を一定に保つ。

 

4. 元気(原気)は、人体の最も根本的な気であり、生命活動の原動力となる。 先天の精から化生される先天の気である。

 

 

問題92 五神の志を蔵すのはどれか。

1. 脾

2. 肺

3. 腎

4. 肝

 

答え: 3

 

五神の魂は肝、神は心、意は脾、魄は肺、志は腎に蔵される。 したがって、3が正解。

 

 

問題93 外邪とその特徴の組合せで正しいのはどれか。

1. 火邪 ― 動血

2. 風邪 ― 収斂

3. 湿邪 ― 遊走性

4. 寒邪 ― 粘滞性

 

答え: 1

 

火邪は、温熱性・炎上性があり、気と津液を損傷しやすく、生風・動血する。 したがって、1の組み合わせが正しい。

 

2. 風邪は、軽揚性・開泄性・遊走性があり、他の外邪を引き連れてくるため、「百病の長」と呼ばれる。 収斂性(収引性)があるのは、寒邪である。

 

3. 湿邪は、重濁性・粘滞性・下注性があり、脾を損傷しやすい。 遊走性があるのは、風邪である。

 

4. 寒邪は、寒冷性・凝滞性・収引性があり、陽気を損傷しやすい。 粘滞性があるのは、湿邪である。

 

 

問題94 次の文で示す症状の病因はどれか。

「2日前から喉が痛む。鼻がつまり、頭が痛く、顔がむくむ。」

1. 風邪

2. 湿邪

3. 暑邪

4. 燥邪

 

答え: 1

 

風邪には軽揚性があり、身体上部・体表・肺を侵しやすく、頭痛・鼻づまり・咽喉部のかゆみや痛み・眼瞼や顔面の浮腫などの症状を起こしやすい。 したがって、1が正解。

 

風邪の開泄性は、腠理(そうり)を開けて衛気や津液を外へもらす。 遊走性は、症状の出る部位や時間が一定しない、他の病変へ転化しやすい、痙攣・振戦など「動く」症状が出やすいなどの特徴を示す。

 

2. 湿邪の重濁性は、陽気を滞らせて頭や身体が重い・四肢がだるいなどの症状を起こし、排泄物や分泌物を濁らせる。 粘滞性は、排泄物や分泌物の粘稠度を増し、気機を滞らせて気血の流れを悪化させ、疾病を長引かせる。 下注性は、下痢・下肢の浮腫・排尿障害・帯下など、下半身の症状を起こす。 脾は喜燥悪湿の性質があり、湿邪は脾陽を損傷しやすく、脾の不調は痰湿の停滞を招く。

 

3. 暑邪は、夏季に出現する熱邪で、その炎熱性と昇散性は高熱と大汗を起こし、気と津液を消耗させる。 夏季の気候から、暑邪は湿邪を伴いやすく、脾の運化を失調させやすい。

 

4. 燥邪は、秋に出現することが多く、その乾燥性は津液を損傷しやすく、口や鼻から侵入して肺を損傷しやすい。

 

 

問題95 腎陽虚証の症状はどれか。

1. 煩熱

2. 浮腫

3. 不眠

4. 口渇

 

答え: 2

 

浮腫は、津液の輸送・代謝が失調して、余分な水をうまく排泄できないために起こる。 腎陽虚では、腎気の主水機能や温煦作用が低下しているため、浮腫を生じやすい。 したがって、2が正解。

 

1. 煩熱とは、発熱と同時に心煩・煩躁がある状態。 裏熱が盛んになって、気や陰を損傷した場合に起こる熱証の症状である。 陽虚は虚寒証であり、煩熱は生じない。

 

3. 不眠は、心血虚や心陰虚、心火亢盛、心腎不交(心腎陰虚+心火亢盛)、痰熱擾心、肝火擾心などで、心神の安寧が脅かされることで起こる。

 

4. 口渇は、口や咽喉の乾きを自覚して、飲水を欲する状態である。 多飲する場合は、実熱によって津液を損傷している。 口渇してもあまり飲めない場合は、陰虚(虚熱)によるものか、痰飲や瘀血(おけつ)などによって津液の輸送・代謝が失調したものである。 陽虚(虚寒)で口渇は生じない。

 

 

問題96 病証と症状の組合せで正しいのはどれか。

1. 肝血虚 ― 目の充血

2. 脾気虚 ― 内臓下垂

3. 心陽虚 ― 盗汗

4. 肺陰虚 ― 壮熱

 

答え: 2

 

脾気虚で、脾機能の低下が昇清に影響すると、生理物質を上昇させることや、組織や器官を正常な位置に保つことが難しくなり、慢性下痢や内臓下垂などを生じる。 したがって、2の組み合わせが正しい。

 

1. 肝血虚では、肝血の不足によって、目を十分に潤すことができないために目乾となり、目を滋養できないために目花(目のかすみ)が生じる。 目赤(目の充血)は、肝陽上亢や肝火上炎など、火熱が上昇することで起こる。

 

3. 心陽虚では、気虚が進行して陽虚となるため、懶言・自汗・倦怠感・無力感などの気虚症状が強くなるとともに、畏寒・四肢の冷えなどの寒症状を伴う。 盗汗は陰虚の症状である。

 

4. 肺陰虚は裏虚熱証であり、虚熱によって盗汗・のぼせ・ほてり・口乾・頬紅などが生じる。 壮熱は、高熱の身熱が続くもので、裏実熱証によって起こる。

 

 

問題97 次の文で示す経脈の病証はどれか。

「48歳の女性。 発汗、喉の腫れがあり、耳が聞こえにくく、耳鳴りが続く。」

1. 足の陽明経

2. 手の太陽経

3. 足の少陰経

4. 手の少陽経

 

答え: 4

 

症例をみると、発汗に、喉と耳の症状がある。 1~4の中で、津液代謝に関係し、流注が頸部と耳を通るのは手の少陽三焦経である。 したがって、4が正解。

 

手の少陽経は、薬指内側端から手背、前腕後面、肘頭、上腕後面、項部、耳の後部・上部、側頭部を通る。 経脈病証の症状としては、耳の後ろ・肩上部・上肢後面の痛み、薬指の麻痺、目尻から頬の痛み、難聴、咽頭・喉頭の炎症、汗などがみられる。

 

1. 足の陽明経は、鼻翼外方から前頸部、前胸部、前腹部、下肢前面を通る。 経脈病証の症状としては、顔面麻痺、前頸部の腫れ、前胸部・腹部・鼡径部・下肢前面・足背の痛み、躁鬱、鼻出血、消化吸収の異常などがみられる。

 

2. 手の太陽経は、小指内側端から手の内側、前腕後内側、上腕後内側、肩関節、肩甲骨、側頸部、頬、耳を通る。 経脈病証の症状としては、頸が腫れて振り向けない、肩・上腕の激しい痛み、頸・肩・上肢後面内側の痛み、のど・あごの腫れ・痛み、難聴などがみられる。

 

3. 足の少陰経は、足第5指から足底、内果、下腿後内側、膝窩内側、大腿後内側、前腹部、前胸部を通る。 経脈病証の症状としては、腰・大腿内側の痛み・冷え・しびれ、足底のほてり、口腔内・咽頭部の炎症、空腹感はあるが食欲がない、顔色がくろずむ、呼吸が苦しく咳き込む、血痰、立ちくらみ、寝ることを好んで起きたがらない、心配性でびくびくするなどがみられる。

 

 

 

 


問題98 陰虚にみられる舌苔はどれか。

1. 厚苔

2. 潤苔

3. 膩苔

4. 少苔

 

答え: 4

 

少苔は、舌苔が薄苔よりもさらに薄いもので、陰虚にみられる。 したがって、4が正解。

 

1. 厚苔は、舌苔が厚く舌体が見えないもので、痰湿や食滞にみられる。

2. 潤苔は、舌苔に適度な潤いがあるもので、健康なものにみられる。

3. 膩苔は、顆粒が細かく緻密で、ねっとりした苔が舌面にべったりと張り付き、剥離しにくい有根苔で、痰湿や食滞にみられる。

 

 

問題99 次の文で示す患者の腹診所見はどれか。

「75歳の女性。 半年前から膝に力が入らない。 姿勢は前かがみで、1回の尿量が少なく、足がむくむ。」

1. 胸脇苦満(きょうきょうくまん)

2. 虚里の動(こりのどう)

3. 少(小)腹急結 (しょうふくきゅうけつ)

4. 小腹不仁(しょうふくふじん)

 

答え: 4

 

小腹不仁は、臍下に力がなく、フワフワしていて、知覚鈍麻があるもので、八味丸の証であり、腎の病に多い。  症例は、75歳という高齢で、膝に力が入らず、尿量が少なく、足の浮腫があることから、腎の病証であり、小腹不仁で下腹部に力が入らないために、姿勢が前かがみになっていると考えられる。 したがって、4が正解。

 

1. 胸脇苦満は、季肋部に充満感があり、肋骨弓の下縁に指を入れようとしても、苦満感や圧痛があって入らないもの。 小柴胡湯・大柴胡湯の証であり、肝胆の病に多い。

 

2. 虚里の動は、左乳下の動悸(心尖拍動)のことであり、「目で見てあるが如く、なきが如く、手で按じて静かにうつものが良い」とされている。

 

3. 少(小)腹急結は、下腹部(とくに左下腹部)に抵抗や硬結があるもので、桃核承気湯の証であり、瘀血(おけつ)の腹証である。

 

 

問題100 次の文で示す症状に対し、難経六十九難に基づく適切な治療穴はどれか。

「食欲がなく、腹部膨満感、下痢があり、手足に無力感がある。」

1. 足関節後内側、内果尖とアキレス腱の間の陥凹部。

2. 手掌、第5中手指節関節の近位端と同じ高さ、第4・第5中手骨間

3. 前腕、橈骨下端の撓側で外側に最も突出した部位と橈骨動脈の間、手関節掌側横紋の上方1寸

4. 足内側、第1中足指節関節の近位陥凹部、赤白肉際

 

答え: 2

 

症例は「食欲がなく、腹部膨満感、下痢があり、手足に無力感がある」とあり、脾の虚証である。 難経六十九難では、脾虚に対して、自経(脾経=土経)または母経(火経=心経または心包経)の母穴(榮火穴)を取穴する。 手掌、第5中手指節関節の近位端と同じ高さ、第4・第5中手骨間に取るのは、少府(しょうふ)であり、心経(火経)の榮火穴である。 したがって、2が正解。

 

1. 足関節後内側、内果尖とアキレス腱の間の陥凹部に取るのは、太渓(たいけい)であり、腎経(水経)の兪土穴である。 腎の原穴(げんけつ)として腎病の治療穴とされることはあるが、難経六十九難には用いられない。

 

3. 前腕、橈骨下端の撓側で外側に最も突出した部位と橈骨動脈の間、手関節掌側横紋の上方1寸に取るのは、経渠(けいきょ)であり、肺経(金経)の経金穴である。 難経六十九難では、腎虚に用いられる。

 

4. 足内側、第1中足指節関節の近位陥凹部、赤白肉際に取るのは、太白(たいはく)であり、脾経(土経)の兪土穴である。 難経六十九難では、肺虚や心実に用いられる。

 

 

問題101 次の文で示す症状に用いる刺法はどれか。

「足から膝にかけて冷えがあり、水様便が出る。」

1. 短刺

2. 偶刺

3. 陰刺

4. 報刺

 

答え: 3

 

1~4いずれも古代刺法の十二刺(十二経に応じる刺法)である。 症例は「足から膝にかけて冷えがあり、水様便が出る」とあり、寒厥(冷感が足先から膝や腰まで上がって下痢をする病態)である。 寒厥に対し、左右の内踝の後ろ(太渓)に同時に刺すのは陰刺で、3が正解。

 

1. 短刺は、骨痺に対し、鍼を揺すりながら骨まで深く刺して、鍼先で骨を上下にこするようにする。

2. 偶刺は、心痺に対し、胸部と背部の圧痛点・反応点に一鍼ずつ(前後で2本)刺す。

4. 報刺は、痛むところが動いて定まらないときに、痛むところを追いかけて次々に刺す。

 

 

【経絡経穴概論】

 

問題102 少海(しょうかい)から神門(しんもん)までと同じ骨度はどれか。

1. 脛骨内側顆下縁から内果尖

2. 胸骨体下端から恥骨結合上縁

3. 足指尖から踵

4. 足三里(あしさんり)から解渓(かいけい)

 

答え: 3

 

少海は肘窩横紋と同じ高さ、神門は手関節掌側横紋上にあり、その骨度は肘窩から手関節横紋までの1尺2寸と同じである。 足指尖から踵までは1尺2寸。 したがって、3が正解。

 

1. 脛骨内側顆下縁から内果尖までは1尺3寸。

 

2. 胸骨体下端から恥骨結合上縁までは、胸骨体下端から臍中央の8寸に、臍中央から恥骨結合上縁の5寸を加えて、1尺3寸。

 

4. 足三里は、膝窩と同じ高さの犢鼻(とくび)の下方3寸。 解渓は外果尖と同じ高さ。 膝窩から外果尖までの1尺6寸から3寸を差し引いた1尺3寸が、足三里から解渓までの長さである。

 

 

問題103 経穴の部位と動脈の組合せで正しいのはどれか。

1. 人迎(じんげい) ― 顔面動脈

2. 曲沢(きょくたく) ― 尺骨動脈

3. 申脈(しんみゃく) ― 後脛骨動脈

4. 太衝(たいしょう) ― 足背動脈

 

答え: 4

 

太衝は、第1・第2中足骨間、中足骨底接合部遠位の陥凹部、足背動脈拍動部に取る。 したがって、4の組み合わせが正しい。

 

1. 人迎は、甲状軟骨上縁の外方で、胸鎖乳突筋の前縁、総頸動脈拍動部。 顔面動脈拍動部に取るのは、大迎(だいげい)である。

 

2. 曲沢は、肘関節を屈曲して上腕二頭筋腱を緊張させ、その県の内側陥凹中、上腕動脈拍動部。 上腕動脈は、曲沢の先で、尺骨動脈と橈骨動脈に枝分かれする。 尺骨動脈上に並ぶのは、霊道(れいどう)、通里(つうり)、陰郄(いんげき)、神門(しんもん)である。

 

3. 申脈は、外果尖の直下、長腓骨筋腱の下縁で、腓骨動脈の枝である外果動脈網部となる。 後脛骨動脈拍動部に取るのは、太渓(たいけい)である。

 

 

問題104 長母指外転筋腱と短母指伸筋腱の間にとる経穴はどれか。

1. 太淵(たいえん)

2. 偏歴(へんれき)

3. 陽渓(ようけい)

4. 列欠(れっけつ)

 

答え: 4

 

列欠は、長母指外転筋腱と短母指伸筋腱の間、手関節掌側横紋の上方1寸5分。 したがって、4が正解。

 

1. 太淵は、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部。

2. 偏歴は、陽渓(ようけい)と曲池(きょくち)を結ぶ線上、手関節背側横紋の上方3寸で、長母指外転筋中。

3. 陽渓は、手関節背側横紋橈側、橈骨茎状突起の遠位、タバコ窩(橈骨小窩)の陥凹部。

 

 

問題105 伏在神経の支配領域にある経穴はどれか。

1. 梁丘(りょうきゅう)

2. 犢鼻(とくび)

3. 足三里(あしさんり)

4. 豊隆(ほうりゅう)

 

答え: 2

 

犢鼻は、膝蓋靱帯外方陥凹部で、伏在神経膝蓋下枝の支配領域にある。 したがって、2が正解。

 

1. 梁丘は、外側広筋と大腿直筋腱外縁の間、膝蓋骨底の上方2寸で、外側大腿皮神経・大腿神経の支配領域である。

 

3. 足三里は、犢鼻と解渓(かいけい)を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸で、外側腓腹皮神経・深腓骨神経の支配領域である。

 

4. 豊隆は、前脛骨筋の外縁、外果尖の上方8寸で、外側腓腹皮神経・深腓骨神経の支配領域である。

 

 

問題106 直刺して円回内筋にあたる経穴はどれか。

1. 四瀆(しとく)

2. 少海(しょうかい)

3. 郄門(げきもん)

4. 尺沢(しゃくたく)

 

答え: 2

 

円回内筋は、前腕浅層の屈筋群のひとつで、上腕骨内側上顆と尺骨鉤状突起に起始し、橈骨中央外側面の円回内筋粗面に停止する。 手少陰心経の少海は、上腕骨内側上顆の前縁、肘窩横紋と同じ高さで、直刺すると円回内筋に当たる。 したがって、2が正解。

 

1. 四瀆は、橈骨と尺骨の骨間の中点、肘頭の下方5寸。 総指伸筋と小指伸筋。

3. 郄門は、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋の上方5寸。

4. 尺沢は、肘窩横紋上、上腕二頭筋腱外方の陥凹部。 上腕二頭筋腱と上腕筋。

 

 

問題107 経穴と筋・腱の位置関係で正しいのはどれか。

1. 霊道(れいどう)は尺側手根屈筋腱の尺側にある。

2. 支正(しせい)は尺側手根伸筋と小指伸筋の間にある。

3. 曲沢(きょくたく)は上腕二頭筋腱の橈側にある。

4. 間使(かんし)は長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間にある。

 

答え: 4

 

間使は、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋の上方3寸。 したがって、4が正しい。

 

1. 霊道は、尺側手根屈筋腱の橈側縁、手関節掌側横紋の上方1寸5分。

2. 支正は、尺骨内縁と尺側手根屈筋の間、手関節背側横紋の上方5寸。

3. 曲沢は、肘窩横紋上、上腕二頭筋腱内方(尺側)の陥凹部。

 

 

問題108 気衝(きしょう)との位置関係で正しいのはどれか。

1. 下方3寸に足五里(あしごり)がある。

2. 上方1寸に水道(すいどう)がある。

3. 外方2寸に衝門(しょうもん)がある。

4. 内方5分に急脈(きゅうみゃく)がある。

 

答え: 1

 

気衝は恥骨結合上縁と同じ高さで、前正中線の外方2寸の大腿動脈拍動部、天枢(てんすう)の下方5寸、曲骨(きょっこつ)の外方2寸。 足五里(あしごり)は、気衝(きしょう)の下方3寸の動脈拍動部にある。 したがって、1が正しい。

 

2. 水道は、天枢の下方3寸なので、気衝の上方2寸。

 

3. 足太陰脾経の衝門は、鼡径溝、大腿動脈拍動部の外方であるが、前正中線の外方4寸より少し内側に位置しており、気衝の外方1寸5分くらいの位置である。

 

4. 急脈は、曲骨の外方2寸5分なので、気衝の外方5分である。

 

 

問題109 取穴法で正しいのはどれか。

1. 豊隆(ほうりゅう)は前脛骨筋の外縁、外果尖の上方6寸に取る。

2. 光明(こうめい)は腓骨の前縁、外果尖の上方5寸に取る。

3. 復溜(ふくりゅう)はアキレス腱の前縁、内果尖の上方4寸に取る。

4. 中都(ちゅうと)は脛骨内側面の中央、内果尖の上方8寸に取る。

 

答え: 2

 

光明は、腓骨の前方、外果尖の上方5寸。 したがって、2が正しい。

 

1. 豊隆は、前脛骨筋の外縁、外果尖の上方8寸。

3. 復溜は、アキレス腱の前縁、内果尖の上方2寸。

4. 中都は、脛骨内側面の中央、内果尖の上方7寸。

 

 

問題110 前腕部にある絡穴の部位はどれか。

1. 尺側手根屈筋腱の撓側縁、手関節掌側横紋の上方1寸

2. 尺骨頭橈側の陥凹部、手関節背側横紋の上方1寸

3. 尺骨の橈側縁、手関節背側横紋の上方3寸

4. 長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋の上方3寸

 

答え: 1

 

尺側手根屈筋腱の撓側縁、手関節掌側横紋の上方1寸にあるのは、通里(つうり)で、手少陰心経の絡穴である。 したがって、1が正解。 

 

前腕部にある絡穴は、このほかに、手太陰肺経の列欠(れっけつ)、手厥陰心包経の内関(ないかん)、手太陽小腸経の支正(しせい)、手陽明大腸経の偏歴(へんれき)、手少陽三焦経の外関(がいかん)がある。

 

2. 尺骨頭橈側の陥凹部、手関節背側横紋の上方1寸にあるのは、養老(ようろう)で、小腸経の郄穴(げきけつ)である。

 

3. 尺骨の橈側縁、手関節背側横紋の上方3寸にあるのは、会宗(えそう)で、三焦経の郄穴(げきけつ)である。

 

4. 長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋の上方3寸にあるのは、間使(かんし)で、心包経の経金穴である。

 

 

問題111 絡穴が八脈交会穴である経脈はどれか。

1. 手の太陽経

2. 足の太陽経

3. 手の少陽経

4. 足の少陽経

 

答え: 3

 

1~4の中で、絡穴が八脈交会穴になっているのは、手の少陽三焦経の外関(がいかん)である。 したがって、3が正解。 このほかに、十二経脈の絡穴で八脈交会穴になっているのは、手の太陰肺経の列欠(れっけつ)、手の厥陰心包経の内関(ないかん)、足の太陰脾経の公孫(こうそん)である。

 

1. 手の太陽小腸経で、八脈交会穴になっているのは、後渓(こうけい)で、兪木穴である。

2. 足の太陽膀胱経で、八脈交会穴になっているのは、申脈(しんみゃく)である。

4. 足の少陽胆経で、八脈交会穴になっているのは、足臨泣(あしりんきゅう)で、兪木穴である。

 

 

問題112 奇穴の取穴と主治の組合せで正しいのはどれか。

1. 百会(ひゃくえ)の前後左右の各1寸 ― 胃炎

2. 翳風(えいふう)の後方約1寸 ― 歯根炎

3. 足三里(あしさんり)の下方約2寸 ― 胆嚢炎

4. 中極(ちゅうきょく)の外方3寸 ― 膀胱炎

 

答え: 4

 

中極の外方3寸に取るのは子宮(しきゅう)で、その主治は婦人科系疾患と膀胱炎である。 したがって、4の組み合わせが正しい。

 

1. 百会の前後左右の各1寸に取るのは四神聡(ししんそう)で、その主治は頭痛、眩暈、癲癇、精神病、中風である。 胃炎や胃疾患を主治とする奇穴は、痞根(ひこん)や六つ灸である。

 

2. 翳風の後方約1寸に取るのは翳明(えいめい)で、その主治は老眼、近視、耳下腺炎、耳鳴り、眩暈、不眠症である。 歯根炎を主治とする奇穴は、夾承漿(きょうしょうしょう)である。

 

3. 足三里の下方約2寸に取るのは闌尾(らんび)で、その主治は急性虫垂炎である。 胆嚢炎を主治とする奇穴は、胆嚢点(たんのうてん)である。

 

 

問題113 奇穴の取り方で正しいのはどれか。

1. 内膝眼(ないしつがん)は膝関節部、膝蓋骨底上際中央の陥凹部に取る。

2. 痞根(ひこん)は第1腰椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方3寸に取る。

3. 十七椎(じゅうななつい)は後正中線上、第5腰椎棘突起下方の陥凹部に取る。

 4. 腰痛点(ようつうてん)は手背、第2・第3および第3・第4中手骨底間の陥凹部の2点に取る。

 

答え: 3

 

十七椎は、後正中線上、第5腰椎棘突起下方の陥凹部に取る。 したがって、3の記述が正しい。

 

1. 内膝眼は、膝前面、膝蓋靱帯内方の陥凹部に取る。 膝関節部、膝蓋骨底上際中央の陥凹部に取る奇穴は、鶴頂(かくちょう)である。

 

2. 痞根は、第1・第2腰椎棘突起間、外方3寸5分に取る。 第1腰椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方3寸に取るのは、奇穴ではなく、足の太陽膀胱経の肓門(こうもん)である。

 

4. 腰痛点(ようつうてん)は、手背、第2・第3および第4・第5中手骨底間の陥凹部の2点に取る。

 

 

問題114 肩甲挙筋のトリガーポイント好発部位に当たるのはどれか。

1. 肩井(けんせい)

2. 肩髃(けんぐう)

3. 天髎(てんりょう)

4. 肩外兪(けんがいゆ)

 

答え: 4

 

肩外兪は、肩甲挙筋のトリガーポイント好発部位である。 したがって、4が正解。

 

肩井と天髎は僧帽筋の、肩髃は三角筋のトリガーポイント好発部位である。

 

【リハビリテーション医学】

 

問題73 ICFの活動制限に対するアプローチで正しいのはどれか。

1. 利き手交換

2. トイレ改造

3. 上肢機能訓練

4. デイサービス利用

 

答え: 1

 

ICF(国際生活機能分類)は、人間の生活機能と障害に対する分類法として、WHO(世界保健機関)によって採択された医療基準である。 人間の生活機能と障害について「心身機能・身体構造(生命維持レベル)」・「活動(日常生活レベル)」・「参加(社会・人生レベル)」に分け、その状態に影響を及ぼす「背景因子」として「環境因子(建物、福祉用具、人的資源、社会環境など)」・「個人因子(年齢、性別、生活歴、価値観など)」を含み、約1,500項目に分類されている。

 

利き手交換は、脳卒中における「活動制限」に対するアプローチのひとつである。 したがって、1が正解。 「活動制限」に対する治療原則は、残存機能による代償、装具、義肢などであり、脳卒中では利き手交換、下肢装具、杖など、脊髄損傷では残存筋の強化、下肢装具、車椅子訓練などが当てはまる。

 

2.トイレ改造は、「参加の制約」に対するアプローチのひとつである。 「参加の制約」に対する治療原則は、環境の改善、機会均等であり、脳卒中では家屋内手すり設置、障害年金の受給、デイケアサービスの利用など、脊髄損傷では家屋の風呂・トイレ改善、歩道の段差をなくす、車いすマラソン参加などが当てはまる。

 

3. 上肢機能訓練は、「機能障害」に対するアプローチのひとつである。 「機能障害」に対する治療原則は、機能障害そのものの治療と合併症治療であり、脳卒中では脳内血腫除去手術や麻痺手の回復訓練など、脊髄損傷では椎弓切除手術や腱移行術などが当てはまる。

 

4. デイサービス利用は、「参加の制約」に対するアプローチのひとつである。

 

 

問題74 急性期リハビリテーションの内容で正しいのはどれか。

1. 排痰訓練

2. 入浴動作訓練

3. 職業前訓練

4. 階段昇降訓練

 

答え: 1

 

急性期リハビリテーションとは、廃用症候群や合併症の予防を目的に、急性期から治療と並行して行われるリハビリテーションである。 排痰訓練は、喀痰貯留による呼吸機能低下と感染悪化を防止するために必要で、急性期から行う。 したがって、1が正解。

 

2. 入浴動作訓練は、日常生活動作訓練のひとつであり、回復期リハビリテーションに含まれる。

 

3. 職業前訓練は、退院後社会参加するための訓練で、生活の質を向上させる訓練のひとつでもあり、維持期リハビリテーション(心疾患の場合は回復期リハビリテーション)に含まれる。

 

4. 階段昇降訓練は、日常生活動作訓練のひとつであり、回復期リハビリテーションに含まれる。

 

 

問題81 標準失語症検査において、ブローカ失語の正解率が最も低い項目はどれか。

1. 聴く

2. 読む

3. 話す

4. 復唱

 

答え: 3

 

失語症とは、大脳半球の言語領域の損傷によって引き起こされる言語使用能力の障害で、口頭・身振り・筆記による意思の伝達や理解、すなわちコミュニケーション能力が損失している状態である。

 

標準失語症検査(SLTA)は、聴く・話す・読む・書く・計算の 5つの大項目からなり、日本で最も多く使用されている。 課題には易しいものから難しいものまであり、正答できない場合にはヒントも用意されていて、正答するかどうかだけでなく、反応時間やヒントへの反応のしかたなども含め、6段階で評価するようになっている。 失語症の重症度とタイプを鑑別し、リハビリテーションの計画や評価に役立てる。

 

話すことが困難になるのは、運動性失語(ブローカ失語・超皮質性運動性失語)と混合性失語(全失語・混合型超皮質性失語)である。 したがって、ブローカ失語で正解率が低くなるのは「話す」ことであり、3が正解。

 

1. 聴いて理解することが困難になるのは、感覚性失語(ウェルニッケ失語・超皮質性感覚性失語)と混合性失語である。

2. 読んで理解することが困難になるのは、超皮質性感覚性失語と混合性失語である。

4. 復唱することが困難になるのは、ウェルニッケ失語、全失語と伝導失語である。

 

失語症は以下のように分類される。

 (1) 運動性失語: 聴いて理解することより、発話や復唱などの言語表出が障害される。 ブローカ野と中心前回下部に病巣が認められるものをブローカ失語、ブローカ野を孤立させるような病巣があるものを超皮質性運動性失語という。

(2) 感覚性失語: 発話や復唱などの言語表出より、聴いて理解することが障害される。 ウェルニッケ野を含む領域に病巣があるものをウェルニッケ失語、ウェルニッケ野を孤立させるような病巣があるものを超皮質性感覚性失語という。

(3) 混合性失語: 言語表出と聴理解のどちらも障害される。 ブローカ野とウェルニッケ野を含む広範な病巣があるものを全失語、ブローカ野とウェルニッケ野を孤立させるような病巣があるものを混合型超皮質性失語という。

(4) 伝導失語: 発話も聴理解も良好だが、顕著な復唱障害を示す。 弓状束などブローカ野とウェルニッケ野の連絡を断つような病巣がある。

(5) 失名詞失語(健忘失語): 発話や復唱、聴理解に問題はみられないが、迂言(喚語困難を補うため、その語を別の言い方で説明しようとすること)が頻発する。 病巣は多様だが、ブローカ野単独で起こることもある。

 

 

問題82 正常歩行について正しいのはどれか。

1. 歩行速度が遅くなると二重支持期は短くなる。

2. 1歩行周期に一側の膝関節は2回屈曲する。

3. 一側の踵接地からつま先離れまでを1歩という。

4. 一側の踵と他側のつま先との間の距離を歩隔という。

 

答え: 2

 

1歩行周期とは、一側の踵接地から再度同側の踵接地まで、すなわち2歩進むことであり、一側の膝関節は2回屈曲する。 したがって、2が正しい。

 

1. 歩行速度が遅くなると二重支持期は長くなり、歩行速度が速くなると二重支持期は短くなる。

3. 一側の踵接地から、他側の踵接地までの動作が1歩であり、その距離を歩幅という。

4. 歩隔とは、歩くときの両足の左右の間隔(両踵間の幅)のことで、正常歩行では5~10㎝程度である。

 

 

問題83 脳卒中の肩手症候群に対するリハビリテーションで正しいのはどれか。

1. 温熱療法は禁忌である。

2. 頸椎牽引が有効である。

3. 関節可動域訓練は禁忌である。

4. 星状神経節ブロックが有効である。

 

答え: 4

 

脳卒中による肩手症候群は、外傷・手術・帯状疱疹などに伴う反射性交感神経性ジストロフィーと同じ病態であり、CRPS(複合性局所疼痛症候群)のタイプ1に分類される(タイプ2に入るのはカウザルギー)。 

 

CRPSは、局所性にあらわれる慢性疼痛症候群で、しびれるような針で刺したような痛み、浮腫、灼熱感、腫脹、運動制限、拘縮、発汗異常などがみられる。 痛みがあることで動かさない、動かさないために血流が悪化する、血流が悪化してさらに痛みが増すという悪循環に陥りやすい。

 

交感神経の異常興奮が原因のひとつであり、星状神経節ブロックが有効となる。 したがって、4が正解。

 

1. 温冷交代浴療法(手を40度くらいの湯に3分間、15度くらいの冷水に30秒間つけるのを4~5回繰り返し、最後は湯につけて終わる)は、血管運動神経(交感神経)の異常な興奮をやわらげる。 また、ホットパック(温熱療法)は疼痛緩和に役立つ。

 

2. 牽引療法ではなく、愛護的な他動運動やマッサージ、低周波刺激などでほぐす。

 

3. 温浴あるいは温熱療法で患部を温めた後、愛護的に少しずつ動かして、関節可動域を広げていく。

 

 

問題84 第7頸髄節残存の脊髄損傷後に生じる合併症とその対応の組合せで、最も適切なのはどれか。

1. 起立性低血圧 ― 座位保持

2. 殿部褥瘡 ― プッシュアップ

3. 排尿障害 ― 持続留置カテーテル

4. 自律神経過反射 ― 下肢弾性ストッキング

 

答え: 2

 

第7頸髄節残存では、上腕三頭筋の機能は保たれていて、車椅子への移乗は可能であり、臀部の褥瘡予防のためにも、肘伸展によるプッシュアップの訓練を行う。 したがって、2の組み合わせが正しい。

 

1. 起立性低血圧がある場合は、斜面台を使用する。 角度30度で5分間から開始し、徐々に角度と時間を増して、80度で30分間できるようになったら終了する。 座位訓練を始めるのは、その後である。 また、下肢の弾力包帯、弾性ストッキング、腹帯などを使い、下肢と腹部の圧迫を行う。

 

3. 排尿障害に対しては、受傷直後は排尿確保のために持続留置カテーテルの使用もやむをえないが、尿路感染のリスクも高いので、早期に間欠導尿に移行する。 間欠導尿によって、排尿反射の回復と反射性膀胱の獲得をはかる。 また、患者自身による自己導尿も取り入れるとよい。

 

4. 自律神経過反射とは、第6胸髄より上の脊髄損傷でみられる自律神経障害で、頭痛、発汗、顔面紅潮、鼻づまり、鳥肌、徐脈、血圧上昇などが起こる。 尿のため過ぎが原因となることが多いので、カテーテルの状態を確かめる、カフェインやアルコールの摂取を控える、自己導尿の場合は導尿の回数を増やすなど、予防に努める。 また、尿検査と膀胱検査を怠らないようにする。

 

 

問題85 我が国において1990年以降の下肢切断の原因として最も多いのはどれか。

1. 外傷

2. 骨髄炎

3. 骨肉腫

4. 糖尿病性壊疽

 

答え: 4

 

2013年に発表された調査によると、60歳以上の約700万人が何らかの足病変を発症しており、そのうちの推定320万人が末梢動脈疾患で、重症化による下肢切断に至るケースが年間1万件あるという。 末梢動脈疾患の最大の原因は糖尿病であり、切断に至るのは糖尿病性壊疽が悪化した場合である。 したがって、4が正解。

 

1. 下肢切断の原因として、1990年代以降は疾病によるものが急増し、外傷によるものと順位が逆転して、末梢動脈疾患によるものが約60%を占めるようになった。

 

2. 骨髄炎は、骨髄の細菌感染症である。 感染経路として、骨折や手術などで骨が直接菌にさらされて感染する場合と、別の場所で起きた炎症から血行性に感染する場合がある。 骨髄炎が慢性化・重症化したことで切断に至ることはまれである。

 

3. 骨肉腫の発生数は年間200件程度で、外科手術では腫瘍周囲の骨と筋肉を切除する広範切除が行なわれるが、人工関節や凍結処理骨を用いた関節温存術などがとられることが多く、切断に至るケースは10%未満で年間20件に満たないと言われている。

 

 

問題86 急性心筋梗塞後のリハビリテーションについて最も適切なのはどれか。

1. 外来では行わない。

2. 6週間プログラムで行う。

3. 負荷試験をしながら進める。

4. 最大酸素摂取量での心拍数まで行う。

 

答え: 3

 

急性心筋梗塞後のリハビリテーションでは、ステージごとに負荷レベルが厳密に定められており、プログラムに従って負荷試験を行いながらリハビリテーションを進める。 したがって、3が正解。

 

1. 症状に応じた運動指導が行われ、退院後も定期的な外来診療でチェックを受ける。

2. 合併症のない心筋梗塞では、通常3週間(軽症の場合は2週間)プログラムが行なわれる。

4. 運動負荷は、酸素消費量に応じた運動強度(METs)や脈拍数を基準として、心臓に過剰な負担がかからない範囲で行われる。

 

 

問題87 変形性股関節症に対する運動療法で最も適切なのはどれか。

1. 階段昇降

2. 水中歩行

3. ジョギング

4. トランポリン

 

答え: 2

 

水中歩行は、浮力によって股関節への荷重が軽減される中で、歩行による筋力トレーニングが行なえるため、変形性股関節症に対する運動療法として推奨される。 したがって、2が正解。 階段昇降、ジョギング、トランポリンなどは、いずれも股関節への負荷が大きい。

 

 

問題88 パーキンソン病のヤール分類とリハビリテーションの組合せで最も適切なのはどれか。

1. ステージ1 ― 歩行訓練

2. ステージ2 ― 立ち上がり動作訓練

3. ステージ3 ― 立位バランス訓練

4. ステージ4 ― 電動車椅子操作訓練

 

答え: 3

 

パーキンソン病の4大症状は、安静時振戦、筋固縮、緩慢(無動・寡動)、姿勢反射障害で、ヤール分類は、症状の重症度をステージ1~5までの5段階に分けたものである。

 

パーキンソン病におけるヤールの重症度分類

ステージ1: 症状は片側に限定。 機能障害はないかあってもわずか。

ステージ2: 症状は両側性あるいは体幹。 バランスの障害はない。

ステージ3: 立ち直り反射の障害。 バランスの不安定性は、患者が立位で方向を変えるとき、あるいは両足をそろえた閉眼立位で押されてバランスがくずれたとき、明らかになる。 機能的には、ある程度は活動が制限されるが、職業によっては仕事を継続できる。 日常生活は自立。 能力低下は軽度ないし中等度。

ステージ4: 重症の筋力低下。 ひとりで立ち、歩けるが、日常生活では無能の状態にある。

ステージ5: 介助なしでは、ベッド上あるいは車椅子生活になる。

 

ヤール分類のステージ3では、すくみ足や小刻み歩行がみられ、日常生活や通院への介助が部分的に必要となる。 廃用症候群予防と残存機能の活用による介護負担軽減のため、ストレッチングや筋力増強訓練、起居動作訓練、歩行訓練、座位立位バランス訓練などを行う。 したがって、3の組み合わせが正しい。

 

1. ステージ1では、片側性に安静時振戦や筋固縮がみられる。 日常生活や通院への介助はほとんど必要なく、訓練は不要だが、体力の低下を防ぎ、筋肉や関節を柔らかくして動作を滑らかにするために、30分程度のウォーキングやパーキンソン体操を行うことが勧められる。

 

2. ステージ2では、両側性に安静時振戦や筋固縮がみられるが、日常生活や通院への介助はあまり必要としない。 体力の低下を防ぎ、筋肉や関節を柔らかくして動作を滑らかにするために、30分程度のウォーキングやパーキンソン体操を行うことが勧められる。

 

4. ステージ4では、運動能力低下は重度であり、あらゆる面で部分的な介助が必要となる。 ステージ3と同様に、廃用症候群予防と残存機能の活用による介護負担軽減のため、ストレッチングや筋力増強訓練、起居動作訓練、歩行訓練、座位立位バランス訓練などを行う。

 

ステージ5では、可能な限り寝たきりになるのを防ぐため、座位保持訓練や関節可動域訓練、電動車椅子操作訓練などを行う。

 

【臨床医学各論】

 

問題58 月経異常の原因とならないのはどれか。

1. ネフローゼ症候群

2. クッシング症候群

3. 子宮筋腫

4. 神経性食思不振症

 

答え: 1

 

ネフローゼ症候群は、大量のタンパク尿に低タンパク血症、血清コレステロール高値を示す浮腫を主徴とする病態の総称で、腎疾患に伴う一次性と糖尿病や膠原病に付随する二次性とがある。 乏尿、全身倦怠感、食欲不振などをきたすが、月経異常はみられない。 したがって、1が正解。

 

2. クッシング症候群は、慢性のコルチゾール分泌過剰によって種々の代謝異常をきたす疾患の総称。このうち、ACTH産生下垂体腫瘍によるものをクッシング病という。 女性ホルモンの作用が抑制され、月経不順や無月経を起こす。

 

3. 子宮筋腫では、月経血の量が多くなり、不正出血を起こすことがある。

 

4. 神経性食思不振症では、摂食の不足によって栄養が足りず、やせるだけでなく、ホルモン分泌が乱れて無月経を起こす。

 

 

問題59 全身性エリテマトーデスについて正しいのはどれか。

1. 関節変形がみられる。

2. 高齢女性に発症頻度が高い。

3. 血清補体価上昇を認める。

4. 白血球数減少がみられる。

 

答え: 4

 

全身性エリテマトーデス(SLE)は、多彩な自己抗体と免疫複合体沈着によって、全身多臓器病変をきたす慢性炎症性疾患。 発熱、倦怠感、易疲労感、食欲不振、蝶形紅斑、日光過敏症、関節痛、血管炎、腎炎、肺炎、心筋炎、腹膜炎など、多彩な症状が同時あるいは経時的に出没する。 貧血、血小板の減少に、末梢白血球数の減少がみられ、汎血球減少となる。したがって、4が正しい。

 

1. SLEの特徴的な症状として、顔面の蝶形紅斑がある。 関節痛を起こすことはあるが、変形はみられない。 関節変形がみられる自己免疫疾患は、関節リウマチである。

 

2. SLEは、男女比1:9~10と圧倒的に女性に多く、20~40代に好発する。

 

3. SLEでは、血清免疫検査で、血清γグロブリン値が上昇し(高γグロブリン血症)、血清補体価は低下する。 また、抗核抗体、抗DNA抗体、抗Sm抗体、リウマトイド因子などの自己抗体が陽性となる。

 

 

問題60 前立腺肥大症について正しいのはどれか。

1. 若年者に多い。

2. 夜間頻尿がみられる。

3. 蛋白尿がみられる。

4. 下腹痛を伴うことが多い。

 

答え: 2

 

前立腺肥大は、前立腺の移行領域(尿道周囲腺)に発生する良性腫瘍で、肥大による尿道圧迫で排尿障害を起こす。 初期には、夜間頻尿、遷延性排尿、尿放出力低下、尿線細小化などがみられる。 進行すると、残尿感が生じ、尿路感染症を起こしやすくなる。 さらに進行すると、尿失禁、水腎症による腎機能障害をきたす。 したがって、2が正しい。

 

1. 前立腺肥大は高齢者に多く、80~90歳男性の90%に潜在癌がみられる。

 

3. 前立腺肥大でタンパク尿はみられない。 タンパク尿は、糸球体腎炎やネフローゼ症候群などの腎疾患、尿路結石、尿路感染症、糖尿病性腎症、肥満関連腎症などで生じる。

 

4. 前立腺肥大症で、尿路感染症がなければ、下腹痛を伴うことはない。

 

 

問題61 変形性関節症のエックス線所見でないのはどれか。

1. 関節裂隙の狭小化

2. 骨棘の形成

3. 骨嚢胞の形成

4. 骨萎縮

 

答え: 4

 

変形性関節症のエックス線所見では、関節裂隙の狭小化、骨棘の形成、骨嚢胞の形成のほか、関節の部位によっては関節内遊離体がみられる。 したがって、1~3は正しい。 4の骨萎縮像は、見られないことも無いが(教科書の変形性膝関節症と変形性肘関節症の項に記載有り)、必ずしも出現するとは限らない。

 

 

問題62 骨粗鬆症の原因でないのはどれか。

1. クッシング症候群

2. コルチコステロイドの投与

3. ビタミンA欠乏

4. 閉経

 

答え: 3

 

ビタミンA欠乏では、夜盲症、眼球乾燥、皮膚乾燥、皮膚の角化などが起こる。 ビタミンA過剰の急性中毒では腹痛、悪心、嘔吐、めまい、全身の皮膚落屑などの症状があり、慢性中毒では全身の関節や骨の痛み、皮膚乾燥、脱毛、食欲不振、体重減少、肝脾腫、脳圧亢進などの症状のほか、催奇形性、骨密度の減少、骨粗鬆症がみられる。 したがって、骨粗鬆症の原因となるのは、ビタミンA欠乏ではなく、ビタミンA過剰であり、3が正解。 ビタミンDやビタミンEの過剰、ビタミンCの欠乏も骨粗鬆症の原因となる。

 

1. クッシング症候群では、慢性のコルチゾール分泌過剰によって、骨吸収が促進されるため、骨粗鬆症や病的骨折、筋力低下などが起こる。 また、タンパク質異化、糖新生、解糖、コレステロール生成、脂肪沈着などが促進され、満月様顔貌(ムーンフェイス)、水牛様肩(バッファローハンプ)、赤色皮膚線条などの症状を呈する。

 

2. コルチコステロイド(糖質コルチコイド)が長期あるいは大量に投与されると、クッシング症候群の原因となり、骨粗鬆症を起こす。

 

4. 閉経すると、エストロゲンが急速に減少し、破骨細胞の働きが活発になり、骨芽細胞の働きが追いつかなくなるため、骨粗鬆症を起こしやすくなる。

 

 

問題63 徒手検査と疾患の組合せで正しいのはどれか。

1. トムゼンテスト ― 頸肩腕症候群

2. ライトテスト ― 肘部管症候群

3. ファレンテスト ― 手根管症候群

4. ヤーガソンテスト ― 腱板損傷

 

答え: 3

 

ファレンテストは手根管症候群の検査法であり、3の組み合わせが正しい。

 

1. トムゼンテストは上腕骨外側上顆炎の検査法。 頸肩腕症候群とは、頸部から肩、上肢にかけて何らかの症状を示す疾患群の総称である。 かつては頸部椎間板ヘルニアや胸郭出口症候群も含まれていたが、現在ではこれらは除外され、原因不明のものだけを頸肩腕症候群としている。 頸部椎間板ヘルニアや胸郭出口症候群を除外するために、ジャクソンテストやアドソンテストなどを行う。

 

2. ライトテストは胸郭出口症候群の検査法であり、肘部管症候群の検査法はフロマン徴候である。

 

4. ヤーガソンテストは上腕二頭筋長頭腱炎の検査法であり、腱板損傷の検査法はダウバーン徴候、ペインフルアークサイン、肩インピンジメントサインなどである。

 

 

問題64 装具と疾患の組合せで正しいのはどれか。

1. ミルウォーキーブレース ― 側弯症

2. ボストンブレース ― 斜頸

3. デニスブラウン副子 ― 発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)

4. リーメンビューゲル装具 ― 先天性内反足

 

答え: 1

 

側弯症は、脊柱が前額面で異常に左右に弯曲している状態で、脊柱のねじれを伴う。 一般にはコブ角が10度未満は正常範囲内、10~19度は要定期的観察、20度以上は何らかの治療を要するといわれている。 25度を超える場合は、ミルウォーキーブレースのような装具による矯正を行う。 したがって、1の組み合わせが正しい。

 

2. ボストンブレースは、胸腰椎ないし腰椎用の側弯症矯正に使われる装具である。 斜頸では、寝かせ方の工夫などを行ない、装具を使わないのが一般的である。

 

3. デニスブラウン副子は、内反足の徒手矯正や矯正ギプス固定治療後に使われる装具である。 発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)の装具は、リーメンビューゲル装具やフォン・ローゼン装具である。

 

4. リーメンビューゲル装具は、先天性股関節脱臼の装具である。 先天性内反足の装具は、デニスブラウン副子である。

 

 

問題65 外傷性肩関節脱臼について正しいのはどれか。

1. 若年者の初回脱臼は反復性に移行しやすい。

2. 高齢者では上腕骨大結節骨折の合併はまれである。

3. 後方脱臼が最も多い。

4. 整復後は可及的早期に可動域訓練を開始する。

 

答え: 1

 

四肢の外傷性脱臼のうち、最も多いのが肩関節脱臼で、習慣性脱臼としても頻度が高い。 特に、若年者の初回脱臼は、反復性に移行しやすい(10代で90%以上)。 したがって、1が正しい。

 

2. 高齢者では、転倒による脱臼が多いため、上腕骨大結節骨折の合併がしばしばみられる。

3. 肩関節脱臼の90%は前方脱臼である。

4. 整復後はギプスなどで約3週間固定する。

 

 

問題66 硬膜外麻酔について正しいのはどれか。

1. 局所麻酔薬をくも膜下腔に注入する。

2. 出血性素因のある患者でも安全に行える。

3. 頸部に用いることができる。

4. 効果発現は脊椎麻酔よりも早い。

 

答え: 3

 

硬膜外麻酔は局所麻酔法のひとつで、第7頸椎やヤコビー線を目標として穿刺し、麻酔薬を注入する。 したがって、3の「頸部に用いることができる」が正しい。

 

1. 硬膜外麻酔とは、骨膜外腔(椎管内面の骨膜および靱帯と硬膜との間)に麻酔薬を注入するものである。

 

2. 硬膜外麻酔は、穿刺するため、出血性素因のある患者や穿刺部位付近に感染巣がある患者などは禁忌となる。

 

4. 効果の発現は脊椎麻酔(脊髄くも膜麻酔)より遅いが、カテーテルを使用することで、麻酔薬の量を調節しながら長時間持続させることができる。

 

 

問題67 肺炎について正しいのはどれか。

1. 原因はウイルス感染が多い。

2. 若年者は高齢者と比較して死亡する危険性が高い。

3. 肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されている。

4. マイコプラズマ肺炎では湿性咳嗽が多い。

 

答え: 3

 

65歳以上の高齢者には、肺炎球菌ワクチンが推奨されている。 したがって、3が正しい。 肺炎球菌には93種類の血清型がみつかっており、そのうちの23種類に効果を示す肺炎球菌ワクチンの定期接種(1回)が、平成26年10月から65歳以上を対象として開始された。 

 

1. 肺炎は肺胞性肺炎と間質性肺炎に分類される。 肺胞性肺炎は、肺炎球菌、肺炎桿菌、マイコプラズマなど、細菌の飛沫感染によるものが多い。 細菌感染ではなく、何らかの原因で肺胞隔壁に炎症と線維化が起こるのが間質性肺炎である。

 

2. 肺胞性肺炎は、カゼ症候群からの二次感染で併発することも多く、高齢者では致死的疾患となりうる。

 

4. マイコプラズマ肺炎では、長期化して湿性咳嗽となることもあるが、乾性咳嗽が続くのが特徴である。

 

 

問題68 心房細動について正しいのはどれか。

1. 若年者で罹患率が高い。

2. 僧帽弁狭窄症は原因となる。

3. くも膜下出血の発症リスクとなる。

4. 心電図では異常Q波の出現が特徴である。

 

答え: 2

 

心房細動とは、洞結節以外の場所から異常な電気興奮が起こり、本来の洞結節から房室結節へのルート以外の電流が発生するために、心房が痙攣してしまうものである。 

 

胎児は洞結節以外にも電気信号をつくる場所をいくつか持っており、生まれる前にそれらは活動を停止するが、加齢や甲状腺機能亢進症などの疾患によって、活動を再開してしまうことがある(特に多いのが、左房にある肺静脈の付け根部分)。 これが心房細動の原因である。 

 

一般に3人に1人は、房室結節での調節が良好で、心房細動があっても自覚症状は出ない。 心房細動を随伴しやすい疾患には心臓弁膜症があり、特に僧帽弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症で高率にみられる。 したがって、2の「僧帽弁狭窄症は原因となる」が正しい。

 

1. 心房細動は加齢によって発生頻度が高くなるので、罹患率が高いのは高齢者である。 3. 心房細動があると血栓ができやすくなるため、脳梗塞の発症リスクが高まる。 また、心臓のポンプ機能が低下するため、放置すると心不全を起こす。 くも膜下出血の原因の多くは脳動脈瘤であり、高血圧、喫煙、アルコールの多飲などが発症リスクとなる。

 

4. 心房細動の心電図では、R-R間隔が不規則となり、f波が出現し、P波が消失する。 異常Q波がみられるのは、心筋梗塞、心筋炎、心筋症、アミロイドーシスなどである。

 

 

問題69 高尿酸血症について正しいのはどれか。

1. ヒスタミンと関連がある。

2. 尿管結石の原因となる。

3. 痛風発作の初発部位は手の指節間関節である。

4. 自己免疫疾患である。

 

答え: 2

 

高尿酸血症は、血中の尿酸値が高いだけなら無症状であるが、尿酸塩が関節に沈着して関節炎を起こすと、痛風となる。 高尿酸血症の原因はアルコール過飲や肉食中心の食事にあり、尿酸だけでなくシュウ酸も増えるため、尿管にシュウ酸カルシウム結石ができやすくなる。 すなわち、尿管結石の原因となり、2が正しい。

 

1. ヒスタミンは肥満細胞(マスト細胞)から分泌され、花粉症のような1型アレルギーに関与するケミカルメディエーターであり、高尿酸血症には関連しない。

 

3. 痛風発作の初発部位は、たいてい足の指節間関節(特に母指の基関節)である。

 

4. 原発性高尿酸血症は、遺伝性素因に環境因子が加わるものであり、続発性高尿酸血症は、悪性腫瘍や腎不全、薬物などが原因で発症する。 いずれも自己免疫疾患ではない。

 

 

問題70 過敏性腸症候群でよくみられるのはどれか。

1. 発熱

2. 嘔吐

3. 下痢

4. 血便

 

答え: 3

 

過敏性腸症候群は、腸に器質的な疾患がないにも関わらず、腸管の運動や緊張の亢進、分泌機能の亢進がみられるもので、便秘型、下痢型、交代性下痢便秘型がある。 大部分は腹痛(とくに左下腹部痛)を伴い、排便・排ガスで軽快する。 下痢はよくみられるため、3が正解。

 

1. 全身倦怠感や不眠、頭痛などを訴えることもあるが、発熱はみられない。

 

2. ガスがたまったことによって胃が圧迫され、吐き気をもよおすことはあるが、嘔吐してしまうことはまれである。

 

4. 便秘によって便が硬くなり、無理やり排便することで肛門部から出血して、便に血液が付着することはあるが、血便が出ることはない。

 

 

問題71 脱水を起こしやすいのはどれか。

1. 腸閉塞

2. 大腸ポリープ

3. 胃下垂

4. 食道憩室

 

答え: 1

 

腸閉塞(イレウス)では、排便・排ガスの停止、腹痛、嘔吐、腹部膨満感などを生じる。 排便しないため、腸管内に唾液、胃液、十二指腸液、胆汁などの液体成分が貯留して、血管内は脱水状態となる。 治療に際しては、イレウス管を挿入して腸内容を排除するとともに、十分な輸液を行なって水と電解質のバランスをととのえる。 したがって、脱水を起こしやすいのは腸閉塞であり、1が正解。

 

2. 大腸ポリープは、大腸粘膜が限局性に隆起したもので、腺腫性、過形成性、炎症性に分けられる。まれに血便がみられることはあるが、症状はほとんどない。 腺腫性の場合は、前癌状態であることが多く、ある程度の大きさのものは切除が推奨される。

 

3. 胃下垂は、健診等で指摘される病名であるが、胃が垂れ下がっている状態を示すもので、必ずしも疾患とは言えず、消化器症状や予後とは関係がない。

 

4. 食道憩室は、食道壁の一部が袋状に突出したものであり、まれに出血することはあるが、通常は症状がない。

 

 

問題72 肺気腫について正しいのはどれか。

1. 漏斗胸がみられる。

2. 呼吸音が減弱する。

3. 吸気が延長する。

4. 残気量が減少する。

 

答え: 2

 

肺気腫は、末梢の気腔が不可逆的に拡大した閉塞性呼吸器疾患で、明らかな線維化を伴わない状態である。 呼吸困難や1秒率の低下が生じ、呼吸音が減弱する。 したがって、2が正しい。

 

1. 肺が過膨張した状態になるため、胸郭の前後径が増して樽状胸となる。

3. 呼気が延長し、やがて口すぼめ呼吸をするようになる。

4. 残気量は増加する。

 

 

次の文で示す症例について、問題75、問題76の問いに答えよ。

「48歳の女性。2年前、左手のこわばりがみられ、その後、近位指節間関節から始まる左指の関節痛と腫れが生じ、さらに右指の関節も痛み出した。現在では、両側の手・膝関節にも関節炎がみられる。光過敏や嚥下障害はない。」

 

問題75 本疾患で陽性となるのはどれか。

1. リウマトイド因子

2. LE細胞

3. 抗Jo-1抗体

4. 抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70抗体)

 

答え: 1

 

関節の腫れと痛みが近位指節間関節から手関節、膝関節へと広がったこと、それが両側性であること、光過敏や嚥下障害がないことから関節リウマチを疑う。 関節リウマチでは、リウマトイド因子が陽性となる。 したがって、1が正解。

 

2. LE細胞は、抗核抗体を貪食した好中球のことで、全身性エリテマトーデス(SLE)患者で認められたことから、そう名付けられた。

 

3. 抗Jo-1抗体(抗ヒスチジルtRNA合成酵素抗体)は、皮膚筋炎患者の20~30%にみられるもので、関節リウマチ・SLEなど他の膠原病や、筋ジストロフィー症や重症筋無力症など他の筋疾患では検出されない。

 

4. 抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70抗体)は、抗核抗体のひとつで、全身性硬化症患者の20~30%にみられる。

 

24回問題76 本疾患でよくみられるのはどれか。

1. ハンマー指

2. ヘバーデン結節

3. Z型変形

4. ブシャール結節

 

答え: 3

 

関節リウマチの手指の変形には、Z型変形、ボタン穴変形、スワンネック変形、尺側変位などがある。 したがって、3が正しい。

 

1. ハンマー指(槌指、マレット変形)には、指伸筋腱が切れたために生じる腱性マレットフィンガーと、遠位指節間関節(DIP関節)の骨折による骨性マレットフィンガーがある。

 

2. へバーデン結節は、遠位指節間関節(DIP関節)が変形する原因不明の疾患である。

 

4. ブシャール結節は、近位指節間関節(PIP関節)が変形する原因不明の疾患であり、へバーデン結節を合併することもある。

 

 

次の文で示す症例について、問題77、問題78の問いに答えよ。

「28歳の女性。上肢の痛み、だるさ、しびれを訴える。上肢下垂時に症状が増悪する。首が長く、姿勢が悪い。モーレイテスト、アドソンテスト陽性。」

 

問題77 最も考えられる疾患はどれか。

1. 変形性頸椎症

2. 頸椎椎間板ヘルニア

3. 頸椎捻挫

4. 胸郭出口症候群

 

答え: 4

 

胸郭出口は、鎖骨と第1肋骨の隙間のこと。 ここを通る腕神経叢と鎖骨下動脈が、前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫されると斜角筋症候群、鎖骨と肋骨の間で圧迫されると肋鎖症候群、小胸筋の下で圧迫されると小胸筋症候群(過外転症候群)となり、これらをまとめて胸郭出口症候群という。

 

本症例は、上肢の痛み・だるさ・しびれがあり、上肢下垂時に増悪すること、モーレイテストとアドソンテストが陽性であることから、胸郭出口症候群(斜角筋症候群)である。 したがって、4が正解。

 

1. 変形性頸椎症は、頸椎の変形が原因となり、神経が圧迫されて、肩から上肢にかけてのしびれや痛みを生じる。 場合によっては、脊髄が圧迫されて、上肢の機能障害や歩行障害などが生じる。 ジャクソンテストやスパーリングテストで陽性となる。

 

2. 頸椎椎間板ヘルニアは、髄核の脱出によって神経根が圧迫され、肩から上肢にかけてのしびれや痛みを生じる。 ジャクソンテストやスパーリングテストで陽性となる。

 

3. 頸椎捻挫(むち打ち症)は、頸部の過伸展・過屈曲運動によって、頸部の軟部組織に損傷が起きたもの。 頭痛・頸部痛・頸椎運動制限という3大症状にとどまる頸椎捻挫型、上肢の痛みやしびれ・脱力などの神経根症状を伴う頸神経根症状型、頭痛・めまい・耳鳴り・悪心嘔吐などの自律神経症状が目立つバレー・リュー症状型、四肢不全麻痺や歩行障害などを呈する脊髄症型に分類される。 交通事故や転倒事故などの既往を確認する。

 

問題78 本症例で治療対象となる筋はどれか。

1. 小胸筋

2. 斜角筋

3. 胸鎖乳突筋

 4. 肩甲挙筋

 

答え: 2

 

前述のとおり、本症例は斜角筋症候群であり、斜角筋が治療対象となる。 したがって、2が正解。 「首が長く、姿勢が悪い」ということは、顔が前に突き出た猫背であることが考えられる。 頭の重心が前にずれ、その状態で頭を支えるため、斜角筋群に負担がかかりやすい。

 

 

次の文で示す症例について、問題79、問題80の問いに答えよ。

「50歳の男性。大酒家である。軽度の意識障害で受診した。眼球の黄染、胸部のクモ状血管拡張と著明な腹水がみられた。また、上肢の不規則な運動が認められた。」

 

問題79 本症例でみられる上肢の所見はどれか。

1. けいれん

2. バリスム

3. アテトーゼ

4. 振戦

 

答え: 4

 

大酒家で、胸部のクモ状血管拡張に、眼球の黄染と著明な腹水がみられるので、肝硬変の非代償期であり、肝性脳症による意識障害を疑う。 肝硬変の非代償期は、肝機能が低下してしまった状態である。 代償期からみられるクモ状血管腫、手掌紅斑、女性化乳房に加えて、黄疸、腹水、出血傾向、肝性脳症などをきたす。 上肢の不規則な運動は、肝性脳症による羽ばたき振戦であると考えられる。 したがって、4が正解。

 

1. けいれんは、不随意に筋肉が激しく収縮することで起こる発作で、てんかん、脳血管障害、脳炎、髄膜炎、脳腫瘍、頭部外傷、低血糖、低ナトリウム血症、低カルシウム血症、アジソン病、SLEなど、さまざまな疾患にみられる。

 

2. バリスムは、上肢や下肢を投げ出すあるいは振り回すような大きな不随意運動で、脳卒中や舞踏病にみられる。

 

3. アテトーゼは、ゆっくりとねじるような不随意運動で、脳性麻痺の後遺症として起こることが多い。

 

問題80 本疾患でよくみられる合併症はどれか。

1. 大動脈瘤

2. 食道静脈瘤

3. マロリー・ワイス症候群

4. 大腸憩室炎

 

答え: 2

 

肝硬変になると、門脈圧が亢進するため、側副血行路である食道粘膜下の血管が拡張して、食道静脈瘤ができやすくなる。 したがって、2が正解。

 

1. 大動脈瘤のうち、腹部大動脈瘤の多くは動脈硬化が原因である。 胸部大動脈瘤の原因は、動脈硬化のほかに、マルファン症候群による中膜壊死、ベーチェット病の大動脈炎などがある。

 

3. マロリー・ワイス症候群は、嘔吐を繰り返すうちに下部食道に裂傷が生じて出血を起こすもので、飲酒後の嘔吐に伴うことが多い。

 

4. 大腸憩室炎は、大腸壁の一部が袋状に突出して、そこに便がたまり、炎症を起こす疾患。 大腸憩室は先天的なものもあるが、多くは後天的で、便秘が続いたことで腸壁の筋が厚くなり、腸内圧が上がって粘膜が反転脱出してできる。