とあるおっさんです。
Здравствуйте!
先週末より面倒なお仕事が気がかりで、憂鬱でしたが、ひとつだけ完了しました。
無理やりの後釜で、ロクな引き継ぎもされず、一度は白紙にされ、一から構築し直す始末。
正に最悪。
閻魔あいさまにお願いしようかと思うレベルでした。
しかし、まぁ終わったので良しとしましょう。
そんなわけで、おっさんは独り飲みにやってきました。
橘家
焼き鳥屋さんですね。
おっさん劇場スタートですヾ(๑╹◡╹)ノ"
半分フィクション、半分ノンフィクション。
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独り暖簾をくぐる。
「いらっしゃい」
言葉とは裏腹に怪訝そうな目。
それはそうだ。
常連が通うような店では一見二見はよそ者だ。
俺が常連と認識されるまでは、まだまだ時間が必要なようだ。
カウンターには時間と出会いを繰り返し、常連と認識されていると思しき客が3人。
内、1人はすっかり夢の中。
さぞかし気持ちが良いことだろう。
ロックの焼酎がすっかり水割りに変わっている。
毎日、毎日、飼いならされた羊の様に、時間と言う犬に追い立てながらの日々。
いつからそうなってしまったのだろうか。
いつの間にそうなってしまったのだろうか。
いつまでそうなのだろうか。
俺は頭をふる。
今日は、ひと段落ついた日だ。
そんな考えはやめよう。
カウンターには座れないので、奥の2人席に腰を下ろす。
メニューは見ない。
注文するメニューは決まっている。
「すいません」
本来であれば、声を出すのも面倒臭いほど疲れ切っているのだが、店員を呼ぶためだ、仕方ない。
店員はタバコの紫煙の中をくぐり抜け、テーブルの横に立ち、伝票を片手に俺の顔を見る。
つまり、注文はなんだ?と問いかけているのである。
「ハートランドと
ヤゲン
レバー
砂肝
獅子唐、1本づつ。
・・・全部塩で」
程なく、ハートランドがテーブルに置かれる。
今日の帰り間際から思い描いていた、ささやかな贅沢。
その時を味わうために俺は瓶を傾ける。
トットットッ・・・
黄金色の液体をグラスに注いでいく。
透明だったグラスは冷やされすぐに曇っていく。
あぁ綺麗だ、何より美味そうだ。
俺はひと呼吸おいて、ゆっくりとハートランドを喉に流していく。
『・・・美味い』
空きっ腹に染み渡る心地よさ。
通常、飲酒しながら仕事をする事はしない。
つまり、酒を入れたと言う事は暫く仕事をしないと宣言するようなものである。
600円でほんのいっときではあるが、解放された気分を味わう。
現代の従順な羊は金を払う事で、自由な時間を得るのである。
余り遅くなると犬が騒ぎ始めるが。
程なくして、通しが運ばれてくる。
玉ねぎスライスと鶏胸肉のシーザーサラダ風と言う感じか。
しっかりと辛味が抜かれている玉ねぎは甘く優しい。
そこに煮鶏が加わることにより、優しさだけではなく、ジューシーな食感も加わる。
また、きゅうりのはじけるような食感も良いじゃないか。
通しを口に運び、ハートランドで流し込む。
ふとガキの頃、思い描いていた想像の中のサラリーマンが脳裏に浮かぶ。
あくせく働くも結果が伴わず、理不尽な押し付けからくるストレス。
そんなストレスを少しでも融かすために飲む酒。
フッ・・・まるで今の俺じゃないか。
自然と口元に皮肉めいた笑みが滲み出る。
カウンターの中で少し動きがある。
注文の焼き鳥が仕上がったようだ。
まずは脂の多いヤゲンで一杯と、いこうじゃないか。
ハートランドとの相性も抜群だろう。
最後はレバーだ。
独特のクセを存分味わいつつ、ハートランドだ。
これも相性が悪いはずがない。
これは俺が今を満喫するために立てた最高の予定だ。
「お待ちどう、砂肝とレバー、一本づつ」
『・・・』
残念なことにヤゲンが無い。
またか、また、予定を崩された。
それをきっかけに会社での悪夢が沸々と蘇る。
日々変わる上司の言葉が脳裏に浮かんでは消える。
いかんいかん。
折角金を払って得た自由な時間だ。
頭を振って悪夢を振り落とす。
レバーは最後にする、せめてこれだけでも自分の希望が叶えられるように砂肝を口に運ぶ。
コリコリとした食感と抜群な塩の塩梅。
そしてハートランド。
先ほどの悪夢の残滓を吹き飛すには申し分ない。
砂肝の余韻を楽しんでいる間に獅子唐の増援が到着した。
どうやらヤゲン部隊は最後の到着になるようだ。
焼きの香ばしさとほろ苦さを塩がまとめる。
このシンプルなのが良いんだ。
子供にはわからないオヤジの味かもしれない。
獅子唐と砂肝でハートランドを迎え撃つ。
なかなかの攻防戦だ。
しかし、僅差のところでハートランドが優位に立つ。
残念だが仕方がない。
レバー隊にも参加を願う。
結局のところ俺が立てた最高の作戦は叶えられることなくリスケされてしまった。
仕事も飲みも上手くいかないものだ。
最後のレバーを口にして、ハートランドを流し込む。
遅れること数分。
ヤゲン部隊が到着した。
しかし、戦う相手のいないヤゲン部隊は魅力が半減してしまう。
一杯でやめるつもりだったのだが・・・
まぁ、今日くらいは良いだろう。
「すいません」
少し離れたカウンターで店員がこっちを見る。
どうやらこちらにくる気は無いようだ。
「レモンサワーひとつ・・・」
いや待て。
ここでサワーを頼むとあまりにヤゲン部隊は劣勢では無いか。
しばしの思考の後、レバーを最後にする希望を思い出す。
そうだ、俺が立てた最高の作戦のはずだ。
これは揺るがしてはならない。
「それとレバーを・・・タレで2本」
そう言えば、この店でタレを頼んでいないことを思い出し、タレで注文する。
同じレバーだが塩とタレでは、味わいが違うはずだ。
なかなかのファインプレーに独り上機嫌になる。
何とも単純な思考回路だ。
程なくレモンサワーが到着。
チビチビやりながらヤゲンを口に運ぶ。
ヤゲンの脂っこさを、レモンサワーが爽やかに流してくれる。
良いじゃ無いか。良い組み合わせだ。
最後の部隊となる、レバータレ部隊の到着。
レバーの臭みをタレの甘さがまろやかにしてくれる。
・・・そんなことを想定していた。
しかし現実は少し違うようだ。
タレが少しくどいのである。
あえて言うのであれば、ウナギのタレ。
あれと同じタレ。
焼き鳥には少し甘すぎる感がある。
レバーの臭みを消し去ってしまってはレバーを食べてる意味がない。
最後の最後に、背中から斬り付けられたかのような。
『・・・』
俺は完全に敗北した。
最後の一手は塩で行くべきだったのだ。
急に現実に戻される感覚。
理不尽な結果。
変えられない現実。
俺は店員に言った。
「会計で」
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うむぅ。
文を書くのは時間がかかりますなぁ。
読んで見ると数分だが、書くとなると数時間。
小説家にはなれないな(笑)
今回はこの辺で。
До свидания!
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