act.3 彼女の事情 3 | もしも君が迷ったなら

もしも君が迷ったなら

思いついた言葉を詩に。思いついたストーリーを小説に。

「真由ちゃん。由美、何であいつに構うんだろうね?」
 取り巻きの一人が訊ねた。
「知らないわよ。いいカッコでもしたいんじゃない?」
「そうなのかなぁ?」
 あっけらかんと返した真由子だったが、心の奥底では気に食わない。
 どうして、あんなヤツに構おうとする? どうしてあいつばっかり……。
 あんな根暗で、下ばっかり向いてるようなヤツなんて、相手にしなきゃいいのに。
 どうして由美は……。由美だけじゃない。健太だってそうだ。幼馴染だからって、あんなに気にかけなくたっていいじゃないか。どうしてあんなヤツを健太は好きなんだろう?
 どうして……自分じゃないんだろう?
「真由ちゃん?」
 自然と俯いた真由子に、取り巻きが覗き込む。
「どうかしたの?」
「何でもないわよ」
 真由子は顔を上げ、何でもないように装った。


 その日一日、事態は何も進展することはなかった。翼は思わず溜息をついた。
「上手くいかないなぁ」
 優子は話しかければちゃんと答えてくれる。笑顔を見せることはないものの、少しは心を開いてくれていると思う。
 だけどダメだ。自分と仲良くなったとしても、クラスの中で孤立しているのには変わりない。
 どうすれば皆と仲良くなることができるんだろう?
「やっぱ外見かなぁ……」
 あの暗い印象の外見をどうにかすれば、皆の見方も変わるだろうか?
「いや、その前に……」
 真由子との不和をどうにかすることが先決だ。
 さて。どう動くか。



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