act.2 敵と味方 2 | もしも君が迷ったなら

もしも君が迷ったなら

思いついた言葉を詩に。思いついたストーリーを小説に。

 携帯番号を交換し終わると同時にチャイムが鳴った。担任が入ってきてショートホームルームが始まる。
 優子は隣に座る翼を盗み見た。
 どうして彼は自分なんかと友達になりたいと言ったのだろう? 何故自分なんかに話しかけてくるんだろう?
 最初に挨拶したから? でも翼にはもう既にたくさんの友達ができているのに。
 だけど、正直嬉しかった。こんな自分と友達になってくれて。
『ありがとう』
 そう言って彼が笑ってくれたこと。
 お礼を言うのは、自分の方なのに、彼はそう言ってくれた。
 初めて自分の存在を認めてくれた気がして、そんな些細な言葉で胸の奥が暖かくなった。


 人間と言う生き物は、気に入らないことがあるとすぐに排他的になる。
「翼くん、どうして木元さんなんかとケー番交換したの?」
 休み時間、クラスの女子に囲まれ、そんなことを言われた。
「何で?」
「だって、木元さん暗いし、何考えてるか分かんないし、翼くんと釣り合わないじゃない」
 その発言に翼は呆れた。
「釣り合うか釣り合わないかで友達を選んでるわけじゃないよ」
 翼の言葉に女子たちは何も言い返せなくなった。
「君たちは木元さんの何を知ってるの?」
 そう訊いても、何も答えない。答えられるはずがない。翼はそれをよく知っている。
「知ろうともしない癖に、そんなこと言わないで欲しいな」



web拍手を送る