「話し合いはどうだったの?」
仕事から帰ってきた爽一郎に一番に問われる。莉緒は上手く言えないので、黙り込んでしまった。
「上手くいかなかった?」
莉緒はコクンと頷いた。
「話、ちゃんと聞いたけど。やっぱり許せない。」
「そっか。」
爽一郎は莉緒の頭をポンポンと軽く叩いた。今にも泣き出しそうな莉緒の肩を爽一郎は優しく抱き寄せた。
しばらくして思い出したように話題を変える。
「話変わるけどさ。結婚式どうする?」
「どうするって?」
「和式と洋式とどっちがいい?」
「どっちかって言うと……洋式。」
急に式の話をされ、莉緒は妙に緊張する。
「OK。そろそろ日程とか式場とか決めないとな。」
「爽一郎。」
「ん?」
「式っていつでもいいの?」
「うーん。大丈夫だと思うけど。やりたい日とかあるの?」
その問いに、こくんと頷く。
「十一月十二日。お母さんが亡くなった日。」
莉緒の気持ちを汲み、爽一郎は頷いた。
「分かった。まだ六月だし、仕事とか都合もどうにか付けられると思う。」
「ごめんね。ワガママ言って。」
「あはは。それはワガママには入らないよ。」
爽一郎は相変わらず柔らかく笑った。
二人は少しずつ結婚式の準備を始めた。
莉緒はやはり父を招待することはなかった。爽一郎はそのことに気づいたが、何も言えずにいた。
籍は式の前日に入れることにした。