そもそもアスぺルガーと統合失調症は、
本質的に別の精神障害のはずです。

治療上の弊害が少ないからと、
アスぺルガーと統合失調症を見分けないのは、
何か『気持ちが悪い』スッキリしない気持ちになります。

見分ける方法があるのなら見分けたほうがいいに決まっています。



☆アスぺルガーと統合失調症の見分け方『教科書的』

アスぺルガーは非言語性学習障害が顕著なことが特徴とされています。
そのために言語性IQ>動作性IQと言う有意な差が生じるのです。
言語性IQ>動作性IQと言う『能力アンバランス』が重要なポイントなのです。

実際のカウンセリングでは、
クライアントに簡単な絵を描いて貰ったり、
無意味で抽象的な図形の模写を行って貰うと、
この障害は明らかになりやすいです。


これに対して、
統合失調症では『非言語性学習障害』はないとされています。
しかし、
微細ながら障害は存在するようで、
IQが平均より少し低く測定されてしまうこともあります。

有名なのは記憶や注意力の障害で、
特に戦略的にIQテストの点数を上げる能力に問題が出てしまいやすいです。
実行機能テスト(executive function)を行うと、
その障害が明らかになりやすいのですが、
今回は文章が難しくなりそうなので省くことにします。

要は、
統合失調症では多少のIQの問題は出やすいが、
言語性IQ>動作性IQと言う『能力アンバランス』は問題ないはず。

ってことですね。


そのように見比べると、
アスぺルガーと統合失調症は見分けが付きやすいとは言えます。

しかし、
IQテストも神様が作ったものではないので、
完全ではないものです。
クライアントの状態によって点数も上下します。

ですから、
IQテストなどで完全に絶対に見分けられることもないのです。


その他に脳研究の分野でも、
アスぺルガーと統合失調症の違いは明らかになりつつあります。

アスぺルガーと統合失調症に共通した脳の特徴も発見されてはいますが、
多くの脳研究の発表では、
明らかな両者の差異を確認しています。



☆アスぺルガーと統合失調症の見分け方『勘』

アスぺルガーや統合失調症の方に実際に会うと、
こちらが受ける印象に差があると言えます。

有名なのが統合失調症の患者さんから感じるプレコックス感でしょう。

実は、
このプレコックス感と言うのは、
感じる人と感じない人が確実に居るようです。
それは精神科医でも分かれてしまうようで、
あるお医者さんはプレコックス感を鼻で笑っていましたし。
あるお医者さんはプレコックス感は、
診断に結び付くと言い切っていました。

そもそも、
この操作的診断法が席巻するような現代に於いて、
印象や勘などと言う曖昧なものが受け入れられるはずもないのかもです。


私はこのプレコックス感はあると思っていますし、
また感じることが頻繁にあります。
プレコックス感のみならず、
『うつ病感』、『境界例感』のようなものさえあると思っています。
(この話はまたいずれジックリ。)


アスぺルガーの方々にもこのプレコックス感を感じることがあるのです。
プレコックス感を感じるには打って響かないと言う、
面と向かった時の感触も重要なポイントなので、
アスぺルガーのかたの対人接触性がそんな印象を抱かせるのかもしれません。

この為に、
妄想や幻覚を思わせる訴えがあるアスぺルガーのかたは、
益々、統合失調症と診断されやすいのです。

但し、
長期的に見ると、
アスぺルガーのかたのプレコックス感は薄らぎやすいです。
勿論、
アスぺルガーは病気と言うよりも個性なので、
お薬で全てを解決出来ないのですが、
抗うつ薬や抗精神病薬が上手く効くと、
対人接触性が良くなったり、
過敏過ぎていた感覚も和らぐようです。
(↑ここら辺が現代のお薬の凄いところ)

その為に人間が『まとまる』状態になることが出来やすいようです。

勿論、
相変わらずの個性ではありますが、
この『まとまる』状態が進行し始めると、
こちらの印象がガラっと変わることが多いです。

つまり、
治療が上手く行った時には
アスぺルガーのプレコックス感は薄らぎやすいのです。

確かに統合失調症も薄らぐはずです。
しかし、
私個人の印象では、
プレコックスがなかなか減っていかないのが統合失調症だと思います。

ある程度落ち着いて、
家事もこなせるようになった方の中にも、
プレコックス感は残りやすいので、
アスぺルガーと統合失調症は、
外側から受ける印象も異なるものだと言えます。

アスぺルガーのかたのプレコックス感は、
一気に消失して行くような印象で、
統合失調症のかたは、
それよりも時間がかかると言うことなのだと思います。

しかし、
これも神様が見ている訳でないので、
完全なものではないでしょう。


つまり、
アスぺルガーなのか統合失調症なのか見分ける時は、
IQテストのみ、
治療者が受ける印象のみ、
脳のSPECTの結果のみ、
と言う偏った視点ではなく、
多角的な視点で判断されるべきだと言うことです。

それが患者さん個人をシッカリ見た。
治療者の取るべき態度なのだと思います。



プレコックス感に付いて、

これは差別でもなく重要な治療に有益な情報です。
また、
恐らくは精神医療に関わる一部の人にしか感じられないものです。
ですから、
たまたま町で会ったひとに『指を指される』こともありません。
行動がある程度以上に落ち着いている患者さんは、
どんな病気であっても見た目は『極く普通の人』です。
そもそも
『どんな重症なかたでも、その9割以上の部分は健康です。』
なんら恥じることも隠すこともありません。
アスぺルガーでなくても統合失調症でなくても、
ある意味もっともっと重症な可哀相なかたはいます。
健常と病気の差は殆どありません。
堂々と胸を張って歩いて下さいね。



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