中華飯店に潜入せよ【キャラ文庫】/中原一也
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星評価 ☆☆☆.5 3.5
久しぶりの中原一也さんの新刊です。
中原さんの既刊「詐欺師は獣に騙される」と同じく、
他の感想ブログ様のレヴューを見て気になり購入しました。
「詐欺師は~」の場合は「老人ホーム」が舞台のBLというところに惹かれて
購入しましたが、本作はタイトル通り、「中華飯店」、
そう、「中華料理屋さん」ということで、非常に気になり購入しました
そして読んでみると、本作、非常に「詐欺師」に似た設定になっています。
受けが行き倒れているところを攻めが助けてそのままお店に
住み込みで働くことになるのですが、それを取り巻く愉快で個性溢れる
面々……、という設定、構図が同じです。
なので最初は既視感があるなぁという感じだったのですが、
ストーリーが展開していくと「詐欺師」とはまた違った展開に話が運び、
全く気にならなくなり楽しめました。
…いえ、展開は少し似ているのですが、本作は受けが「スパイ」なので、
少し様相が変わって手に汗握るハラハラ展開が楽しめました。
「詐欺師」は「老人ホーム」ということで、出てくる脇キャラの老人達が面白く
コメディ色が強かったですが、こちらはコメディよりややシリアスだったり、
バイオレンスな側面もありました。
そして気になっていた「中華飯店」ですが、他のブロガー様や読メでも書かれている通り、
中華料理が色々と登場します。が、普段からお料理の描写が非常に上手い
作家さんの作品を読んでいるためか、正直そこまで「美味しそう」とは、
私は感じませんでした。しかし、メニューは本当に美味しそうです。
美味しそうという事で言えば、私はあとがきの中原さんのお料理のお話が
非常に美味しそうだと感じました。自分でも中華料理を作ってみたくなります
(いつも麻婆豆腐といえばレトルトのタレしか使わないので)。
そして肝心のストーリーですが、こちらも非常にエンターテイメント性が高く、
受けがスパイという設定が活きており、最後までどうなるか読めず、
ハラハラドキドキな展開で楽しめました
攻めもいつもの中原さん通り「オヤジ」なのですが、どちらかというと
普通の攻めのような格好良さもあり、私的にはこれくらいのオヤジ度が
濃過ぎなくて好きかもです(笑)。
イラストのビジュアルもすごい迫力とインパクトがありますが、
中身も器が大きく、受けが誘惑しても簡単に手を出さないところも
よかったです♪
作品の舞台は昭和の香り漂う、どこか時代に取り残されたような「ドヤ街」の一角、
しかし地理に疎い私にはどこの地域なのかわかりませんでした。
おそらく実際にある地域なのではと思うのですが、
ドヤ街独特の猥雑で懐かしい雰囲気も感じられてよかったです。
ベッドシーンも中原さんらしく非常に濃厚……かつ、読みやすいです。
こういうシーンは読みにくかったり無駄に長いと読み飛ばしてしまうのですが、
長さも丁度いいし、一度で長く書くよりこうして二回あった方が
無駄に長くならなくてよいかも、なんて思いました。
そういえば悪役のヤクザの諸岡(若頭補佐)のキャラが非常に怖くて、
こちらの描写も料理と同じくらいインパクトがありました
ヤクザものってBLには本当に多く何冊も読んできましたが、
ここまで怖いキャラは初めて読んだ気がします
イラストも目がイっちゃってて怖いです><
というわけで、やや設定が既刊とかぶるところもありましたが、
中原先生のエンターテイナーぶりやキャラクター作りの上手さが光り、
まとまりのよい一冊でした。
私的には序盤で受けに誘惑されまくって、それをかわし続けた攻めが
内心どう思っていたのかが知りたかったですが、
読後感もよく下町の雰囲気も味わえた、楽しい一冊でした
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