ひろしの幸せ探検隊

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ひろしが幸せを求めて探検します!
目を見開くような幸せ世界の話だったり、映画・ドラマ・音楽の話だったり、ダイエットの話だったり、ただの雑談だったり(笑

最新作の「君たちはどう生きるか」にとどまらない、宮崎駿の人生や人体までも種明かしをするような、分厚いドキュメンタリーだった。


~あの大叔父は一体誰なのか~

作品だけを観てその解釈を競い合う私たちにとって、ともすればその意欲と尽きぬ追及力を失わせるありがたくない種明かしだが、この場合は脱帽としかいいようがない。宮崎駿の引退撤回後の2399日という密着取材を経て、そのスクープの瞬間を切り取るだけでなく、老いていく宮崎駿がどのように没入し、さらなる成長を遂げていくかまでを描いていた。単なるファンが太刀打ちできるものではない。

製作工程の遅れを突き付けられる生前の高畑

高畑勲は最後の監督作品「かぐや姫の物語」に多額の製作費をつぎこんだ。製作工程の遅れにたじろぐ様子もなく、信念を曲げずに取り組んだ様子も映し出されていた。これはたまたま晩年の様子だが、宮崎駿は長年そういう高畑こと「パクさん」を見続けて、このようになってはいけない、しかし本当はこのように映画製作に取り組みたい、と、きっとそう思い続けていたことだろう。

かつて高畑は、宮崎の会心の作品ナウシカを評して30点と言った。その真意を明かしたインタビューを引用できるのもNHKならでは。

奇しくも「君たちはどう生きるか」の製作期間中に高畑勲が亡くなるという事件は、作品を大いに昇華させたのではないかと思う。作品のクライマックス「Eパート」と呼ばれる部分を初めから作り直すという決断が下され、その後作品が理屈ではないイメージを直接注入するようなものに仕上がっていく過程が描かれていた。作品のどこがどうそうだ、という評価は私にはできないが、この番組で描かれた宮崎駿の計り知れない苦悩がきっとそうさせたのだろうと想像させるのである。

 

「君たちはどう生きるか」当初のスケジュール。2019年完成予定だった。



番組の数々のシーンに宮崎アニメのシーンをシンクロさせるというつくりは非常に贅沢なものだった。宮崎の傍らでプロデューサーを長年務めてきた鈴木敏夫は宮崎の心中を察しきっていてインタビューがまた圧巻だ。宮崎駿が酒につぶれ、泣きじゃくったというシーンの絵コンテは、鈴木敏夫が自信で描いたものだろうか、これも貴重だ。余計なものを省き短いカットをつなぎ合わせて宮崎駿の本質に迫ろうという番組の取り組みもチャレンジングで、ドキュメンタリーの域を超えているように感じる。後世に残る名番組の一つになるのではないか。

 

「俺はね、15年間パクさんに青春を捧げた」と泣き叫んだという宮崎駿の様子 鈴木敏夫が描いたものだろうか


批判が多いNHKだが、こういうのがたまにあるから観ずにはいられない。