ハラスメント体験記 被害者編 [27] | 半三本のカンフル日記

ハラスメント体験記 被害者編 [27]

その日も私はいつも通り,開店準備をします.

シャッターを開け,展示物を店頭に並べ,駐車場の掃除をします.


手にした箒で掃く,掃く,掃く.

延々と,ひたすら同じ所を掃いていました.

もういくら掃いても,目立った小石もなければ砂利もありません.

それでも私は掃き続けました.

私が掃いているのは…砂埃.

必ず出るそれを掃き取るため,私は掃除を続けていました.


まだ不十分.

まだ完璧じゃない.

みろ,ゴミが残ってるじゃないか.

手抜きをするな.

僅かなゴミも見逃すな.

やるなら徹底的に,完璧を目指せ.


…そんな声が頭の奥から聞こえてくるようでした.

脅迫めいた何かが,私を突き動かしていました.

炎天下の中,駐車場を箒で掃き続ける.

足元にはゴミらしいゴミはなく,それでも延々と掃き続ける.

傍から見れば,私の行動は異常でした.


掃除をしている間は時間を潰せる.

社内にいなくて済む…主任たちと顔を合わせなくて済む.

…そんなネガティブな下心があったことは確かです.


このときの私は,完全に将来が見えなくなっていました.当然です.

常日頃からクビだと言われ,頭を下げては命乞いする日々.

それで将来に希望を持てと言う方が無茶です.

当時の私にとって,

「今日も一日頑張った」ではなく「今日はクビにならずに済んだ」

「明日も頑張ろう」ではなく「明日は大丈夫だろうか」

目先の事しか見えず,場当たり的なことしかできない毎日.

毎回毎回,その場しのぎの謝罪で頭を下げる毎日.

私にとって実習とは,もはやクビへのカウントダウンでしかありませんでした.

私のやっていることとは,そのカウントダウンを少しでも遅らせる行為でしかなかったのです.




そしてその日は,タオルを取りにオフィスへ戻っていました.

掃除でかいた汗を拭くためです.

そこですれ違うように出て行く部長.

(ああ,車でお客様のところに行くんだな)と直感しました.

そして与えられた机まで行き,タオルで顔を拭いて一心地ついた時.

電話の呼び出し音がなり,社長がそれに出ました.

特に気にせずに,掃除を続けるため,外へ出ようとした時の事.


社長: 「おい,部長はどこやねん」


どうやら部長に用がある電話のようです.

誰に聞かれたというものでもなく,その場にいた全員に発せられた質問だったと思います.

外出したのを見ていた私は,とっさに答えました.


私:  「つい先程お出かけになりました」


私は「“どこか”と聞かれた」から「“あそこにいる”と答えた」だけです.

…それなのに.


社長: 「サッサと呼び戻せ!」


突然怒り出す社長.

まるでその言葉が引き金となったように飛び出す私.

社用車に乗り込む寸前で,私はどうにか部長に声をかける事ができたのです.




オフィスに戻る部長.車の前で呆然と立ち尽くす私.

社長に部長の所在を教えただけで,なぜ怒鳴られるのかがわかりませんでした.

不可解すぎる社長の態度.

しかし突っ立っていても仕方がないと思った私は,掃除を再開する事にしました.


しかし,この後で更に不可解な展開が私を待ち受けていたのです….




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