ハラスメント体験記 被害者編 [24] | 半三本のカンフル日記

ハラスメント体験記 被害者編 [24]

ぐちゃぐちゃの思考で.

フラフラな足取りで.

私は自宅に帰りました.

夏バテだったこともあり,クタクタでした.


家に帰ると母が出迎えてくれました.

職場での緊張感が一気に緩むのを感じます.

それが私の口を軽くしたのでしょう.

その日の出来事を母に愚痴り始めました.

私は本来,愚痴や陰口は嫌いですが,この時は自分を抑えられませんでした.



――今日も叱られた.最近叱られるのが辛い.

――私が悪く言われるのは仕方ない.自分がミスしたのだから.

――でも上司を馬鹿にしたのには腹が立った.

だいたいこんな内容だったと思います.

そして,それらの話を聞いていた母は.



――そんなこと言わんと,頑張りぃや.

――人間,叱られている内が花やぞ?

――私だって職場で何度も叱られてる.

――最初は誰だって叱られるもんや.叱られることが仕事みたいなもんや.

――誰だって同じ想いをしてるんや,あんただけとちゃう.

大体このようなことを言われました.




私は私の辛さを訴えていたのに,母は自分の話しかしていませんでした.

話の主軸が摩り替えられてしまった私は,ただ混乱するだけでした.

私は話が摩り替わってしまったことにさえ気付けませんでした.

互いに自分のことしか話していない…考えてみれば,おかしな話です.


愚痴を言う時は,自分の辛さを人にわかって欲しい場合が多いと思います.

その上で,相手に手を差し伸べて欲しい場合が多いのだと思います.

自分ひとりでは抱えきれない,誰かに助けて欲しい,支えて欲しい…そんなサインだと思います.

そしてこの時の母の返事は,その真意がどうであれ,救いを求める手を振り払う行為だったのです.

結局,私は自分で気持ちに整理をつけるしかありませんでした.



この時,私は無力感に苛まれました.

自分の期待に応えてもらえなかった不満.

自分の辛さを理解してもらえなかった寂しさ.

自分の非を指摘されたことによる自責の念.

それらの感情がごっちゃになって混乱している頭で,私は考えます.


――そうなんだろうか.

――私の捉え方が間違っていたのだろうか.

――世間様では母の言うような考え方なのだろうか.

――私がこんなに辛いのは,ただの被害妄想なのだろうか.

――相手の気持ちを理解できれば,こんなに辛く思うこともないのだろうか.


そこから私は考えます.


――相手を理解する為には,信頼しないことには始まらない.

――叱られているうちに…叱られなくなる前に,頑張ろう.

――私のために叱ってくれているのだと,もう一度信じてみよう.


そして思います.


――私はJ社で仕事をしたい.

――自分が選んだ会社,簡単には辞めたくない.

――だから,K社に残っていられるよう頑張ろう.

――見捨てられないように,頑張ろう.


さらに考えます.


――私がヘマをすると上司に迷惑がかかる.

――あの人には迷惑をかけたくない.

――あの人にこれ以上迷惑をかける前に,何とかしなければ.


…自分の上司に迷惑をかけないため.

…K社の皆様に,これ以上迷惑をかけないため.

…何より,自分の将来と夢のため.


私が選んだ方法は…「今の自分を切り捨てる」ということでした.

今の自分が感じている辛さは「思い違い」なのだと,思い込もうとしました.






私は重い足取りで自分の部屋に戻ります.

母の用意してくれた食事は,味がわかりませんでした.

少なくとも,美味しいと思えなかったのは確かです.


体は疲れ切っています.

しかし,気が昂っていて寝付けませんでした.

私は近くのコンビニへ向かい,500ml缶のお酒を二本買うと,

半ば流し込むようにして飲み干しました.


ぐるぐると回る頭.

ぐにゃりと歪む意識.

暗く深い闇の中に意識を放り出す直前に,私はそっと呟きました.



明日こそは頑張ろう…と.






今考えてみれば.

この時にモラル・ハラスメントの構図が完成したのかもしれません….




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