スウェーデン製のゲームとして有名なマインクラフト。
2013年11月5日の Dagens Nyheter 紙に、年次イベントのマインカンの様子が載っていたので、
少し要約してお届けします。
3,400万本――『マインクラフト』の販売総数。
15億クローナ――2012年のモヤング社の収益。
1人――ゲームのオリジナル開発者。
マインカン会場の入口そばで16歳の少年が、アイドルたちの姿をひと目見ようと立っていた。
「ジェブが昨日ここにいたって聞いたんだ。だから今日もきっと来るにちがいないと思って」と期待に目を輝かせる。
少年自身はマインカンへの入場券を持っていなかったので、イベント会場わきのロビーにいることしかできなかった。しかし、本物の“ジェブ”(本名はイェンス・ベリエンステーン)が昨日、ここに立っていたのだ。彼が姿を見せるやいなや、サインを求める人たちが長い列をつくったという。ジェブはここではスターのひとりなのだ。2年前、彼が『マインクラフト』のチーフ・デベロッパーに就任すると、ゲームの生みの親マルクス・“ノッチ”・パーションは別のプロジェクトに専念することにした。
『マインクラフト』ファンのために開かれるイベント、マインカンは今年で3回目で、フロリダのオーランドで開催された。
第一回目のマインカンは2011年のラスベガス。今回同様、熱心なファンが詰めかけていた。段ボールでキャラクターの仮装をつくった人も多かった。マルクス・パーションは、ボディガードの助けを借りないと人混みの中を進むことができなかった。
「『マインクラフト』はゲームとして成功の頂点に立った。これから人気は下がる一方だろう」そんな雰囲気が支配的だった。まったく無名のゲームがあっという間に世界的大ヒットになった成功譚は、何回も語られた。大金持ちになったゲームの作者は、世界中のインディ系ゲーム開発者たちの憧れの的となった。大企業の後ろ盾がなくても、大ヒット作品を生みだすことができる証拠なのだから。
世間一般に言われることでは、このような大イベントがおこなわれたあとに、ファンは興味を失うそうだ。そのゲームに飽きて、別のゲームを探すようになる。『マインクラフト』は過去のゲームとなるだろう――しかし2年後の今、その予想どおりにはならなかった。
『マインクラフト』のユーザーは数百万人にのぼる。今日まで3,400万本が販売されている。2年前のラスベガスには5,000人のファンが詰めかけた。今年のマインカンのチケットの販売数は7,500だったが、9秒で売り切れた。
「チケット販売には10万人以上の申し込みがありました」と『マインクラフト』を開発する会社モヤングの社長カール・マンネは語る。
「マインカンの観客数をもう少し増やすことはできますが、10万人の観客がいるイベントでは、これまでと同じ体験をファンにしてもらうことができないでしょう。みなさんがマインカンに来る理由は、私たちに会ってサインをもらうことなのですから」
イベント会場は、飛行機の格納庫なみの広さだった。イベントの観客は、独自のゲームサーバー運営についてのパネルディスカッションや、『マインクラフト』を教育に導入することについてのパネルディスカッションに足を運ぶことができる。しかし『マインクラフト』の開発者たちを別にすれば、ファンの大きな関心事は、『マインクラフト』を題材にしたフィルムクリップを投稿しているユーチューブのスターたちだ。
会場の片隅にあるコンピュータで『スクロールズ』が実演されていた。モヤング社が『マインクラフト』のあとに発表した作品第一号だ。この二つのゲームには共通点はない。『スクロールズ』はカードを集めるストラテジーゲームで、現在では10万人のプレイヤーがいる。数人の手によって開発されたゲームにしては好成績だが、「あのモヤング社から発売されたゲームなのだから」という評価はついてまわる。
『スクロールズ』はモヤング社設立以前から企画されていたゲームだ。モヤング社は二人の友人によって起業された。すでに『マインクラフト』で成功を収めていたマルクス・パーション。そして、ゲーム開発スタジオ、キング社(携帯ゲームの”Candy Crush Saga”で有名)でマルクスのかつての同僚だったヤーコブ・ポッシェル。
今回のイベントでマルクス自身はあまり姿を見せなかった。「『マインクラフト』の生みの親」というステータスがあるので、身動きがとりにくいのだろう。しかし、大ステージでおこなわれたインタビューでは、新しいゲームのアイデアについても触れていた。『マインクラフト』のあと、彼は新しいプロジェクトを始めたが中止している。2012年春にスペースゲーム0x10cを発表したが、そのゲームは大きくなりすぎてしまったので、マルクスはプロジェクトを中止し、数名の熱心なファンにそのゲームの開発を譲った。
では、次に彼は何をするのだろう? マルクスははっきりとは答えない。「現在進行中の実験について、会社も僕もオープンに話さないことにしたんだ」と言う。外部の人たちの期待が高まりすぎると、会社にとって負担になると言うのだ。
「メディアはときどき大げさに書くので、そいういうとき困るんだよね」