皮膚から人を元気にしたい
理学療法士の高橋美穂です




前回の角質Part1では

表皮のしくみ

角質層の乾燥と水分

の話でした。



今回はその角質層の

乾燥を防ぐ役割をしている

細胞間脂質


天然保湿因子
別名:NMF(Natural Moisturizing Factor)


についてです。









人の体は「水を溜めた袋」
参考:小澤貴子,ウソをつく化粧品

と言われています。

袋が皮膚ですね…。



体重の8%を占める皮膚。

人の体の中で最大の臓器です。

つまり、体重が50kgの人ならば

角質層という薄い層でつくられた

合計すると4kgの皮膚

という袋に

35kgものを入れて動いています。



生命が誕生した太古の海の環境、

海の水分を

私たちは脈々と細胞内に

受け継いでいます。

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表皮…特に角質層

に与えられた重要な課題は、

それを受け継ぐ水分の流出を防ぐこと。


海から陸に上がり

環境適応のため

それを護る術が皮膚に備わりました。




角質層では

どのように水分の流出が

防がれているのでしょうか…?




それは

硬いタンパク質でできた角質細胞

同士をつなぎとめる

細胞間脂質

の役割が重要なのです。


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硬いタンパク質の角質細胞

だけでは、

枯葉が何枚も重なっている

のと同じです。

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枯葉だけでは

隙間だらけ

外界からの侵入も

内部の水分蒸発も

防げません。





角質層になるちょっと前、

顆粒層の時点で細胞内に

ラメラ顆粒という脂質

(セラミド、遊離脂肪酸、コレステロール)

を含む粒々ができます。



そして核が失われ、

細胞が死ぬ過程で

ラメラ顆粒の中身の脂質が

細胞外へ押し出されます。





そして出て来た脂質は

硬いタンパク質の角質を

つなぎとめる役割を果たします。



まるでレンガを積む時に隙間を埋める

セメントのような役割です。



このセメントを拡大してみると

油(セラミドなど)と水の層

が交互に重なっています。

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水と油は相容れない

というのが化学の基本。

この相反する性質を持った層が

折り重なっていることにより

強力なバリア構造をつくっています。



水の層が油溶性の物質の侵入を

油の層が水溶性の物質の侵入を

防ぎ、同時に

内部の水分流出を防ぎます。




細胞間脂質も

皮脂膜(※次回お話しする予定です)も

油のため、本来皮膚はとくに

水溶性の物質の侵入を

しっかりと防ぎます。



それは水溶性の成分は

非常に入りにくい構造

となっているということです。




そして、

タンパク質である角質細胞の一部は

死ぬと分解されて

アミノ酸などになります。

これが

天然保湿因子(NMF)

です。



天然保湿因子は、

水分を取り入れる働き(吸湿性)


水分を抱え込む働き(保湿性)

に優れ、 

とらえた水分を逃がさず、

角質層の水分維持に

大きな役割を果たしています。 



この

細胞間脂質


天然保湿因子(NMF)

に共通していること…


それは

タンパク質である表皮の細胞が

きちんと角質になるために

核を失う過程で

死ぬことが大事

なのです。



表皮細胞は、生まれた瞬間から

死に向かうことで

役割を果たしていきます。



そして役割を終えた角質細胞は、

1枚1枚パラパラと

アカやフケ

となって剥がれていくのが

正常です。


剥がれるということは

乾いていないと

上手く剥がれていきません。



角質層は、内部の乾燥を防ぎ、

水分を逃さない

だけではありません!


それを遂行するために

自ら剥がれていくこと

も大事なのです。





角質細胞になる際に

水分や栄養が過剰になってしまうと

細胞核が壊れず

死に切れない状態となります。



硬い鎧になれず(角化)、

保護・バリアが

十分に働かなくなります。



正常に働いている皮膚にとって

甘やかすこと(間違った手入れ)

は逆効果です。




なぜなら皮膚自身が

勝手に

それをやってくれているから…。






長くなりました…

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。