何日かが過ぎたが、だれも教室を駆け抜けては行かなかった。

淳は、かえってそれがおかしいなと思ったが、どうしてなのかわからなかった。確認のため1階の1年G組をそれとなく見ていたら、やっぱりかけていく人はいた。

そんな風にしているうちに、掃除当番が回って教室の当番になった。

淳はその日、教室の南側にあるベランダを掃いていた。淳は決められた仕事はきっちりする主義だった。ふと下を見ると、中庭に同じクラスの連中がいた。

「おーい、かっとうー!」

淳は同じ陸上部の加藤大輔を呼んで手を振った。

「おー、さぼるなー、まじめにやれー」

「お前のほうこそ、なんだよその竹箕しか持ってねえって、やる気ねーなー!」

お互いに悪態を付き合って、手を振った。そこへ加藤が同じ班の大垣彩にどつかれたので淳は笑い飛ばして自分の作業に戻ろうとした。そこで、ふと気づいた。同じクラスの女が実習棟があったところをじっと見ている。いや、よく見ると実習棟ではなく渡り廊下だった高さのところだ。何を見ているのかと思って渡り廊下だったところの見えるベランダの端へ行った。その時、突然その渡り廊下があったところを歩いて教室棟のほうへ来るやつが見えた。男だ。正確には建物がないから推測だし、多分建物の窓ガラスのガラスだったところでしか淳には見えないようになっているのだろう、腰から上の部分が歩いているように見えるということだった。だが、そいつは渡り廊下の端の、今淳がいる2年G組の教室の壁に当たるところまで来てふと立ち止まった。そして、怪訝そうな顔をしてもと来た方へ戻っていった。

淳は、あ、ああいう風にこの教室だれも来ないのか、なんでだろう、と思った。そして、その宙を見ていた女を見た。すると、その女は、渡り廊下を歩いていた男を目で追っているように見えた。

そして男はふっと消えた。多分そこからが昔の実習棟なのだろう。もう一度淳が女を見ると、女はよしよしとうなずくようにして竹箒で中庭を掃いていた。ひざを隠すくらいの少し長めのスカート、肩までのストレートの黒髪、黒の靴下。

あいつが何か知っているのか?

淳はその女子の名前をまず知らなかった。