「音に打ちのめされて傷付くものはいない。

それが音楽のいいところさ」

ボブ・マーリー
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僕には19歳年下の弟がいる。

名前をルカという。

彼は2014年現在、15歳の高校1年生である。


ルカという洒落た名前を付けたのは母で、
その由来は独特だ。


今から16年前のクリスマスイブに、
一匹の子猫が我が家に迷い込んで来た。

掌ほどのサイズのその猫はクリスマスイブにちなんで
母により「エバ」と名付けられ、我が家の一員となった。

「イブ」ではなく「エバ」なのは
新世紀エヴァンゲリオンの影響もあると母が言っていたが
彼女はエヴァンゲリオンを真剣に観たことなど
一度も無いはずなので、今思うとそのコメントは摩訶不思議だ。


ともあれ、エバがうちに来たその翌年
母はルカを身籠った。


我が家はそれまで男3人兄弟で、母は女の子を欲しがっていた。

そこで女の子が産まれるように祈りを込めて
可愛い名前を予め用意しようと彼女は考えた。


そして母は我が家で唯一の女の子である猫のエバに
目をつけた。


エバ→聖書→ヨハネ、マタイ、ルカ、、

母の頭の上に電球が灯った。

ちなみに母はキリスト教徒でも何でもない。



ルカが「ルーカス」の略称で、男性名であることが
分かったのは本人が生まれて大分経ってからだった。

生まれてきた子が男の子で本当に良かったと心から思っている。



ルカは猫のエバと共にすくすくと育ち、中学生になると
エレキギターを弾きたいと言い出した。

おませさんである。


僕は昔バンドをやっていて、実家には僕が弾いていた
ギターやエフェクターがごろごろしている。

血は争えない。

さらに僕はその頃アコースティックギターやウクレレや
マンドリンやバンジョーといった
アコースティック楽器の小売店で販売員として
働いていて、系列のエレキのお店にも顔が利いた。


年の離れた弟が自分と同じ趣味を持つ喜びは格別だった。

僕はルカにバンドマンだった昔の自分を重ね合わせ
出来ることがあれば何でもしてあげよう、と決めたのだった。


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