龍安寺 今昔。 | 白山オステオパシー院長のブログ   東京都文京区 白山駅より徒歩3分

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京都には「石庭」で有名な龍安寺というお寺があります。


最近読み返した2冊の本の両方に、偶然「龍安寺」のことが書いて


あったので、ちょっと紹介します。


まず一つはドナルド・キーン氏が語った、50年以上前の龍安寺での


体験です。




D・キーン氏は日本文学を学ぶ留学生として、京都市内に下宿して


いたそうです。


ある晩、月明かりがあまりにも美しいのを見て氏は妙案を思いつきました。


「この月明かりで龍安寺の石庭を見たら、どんなに綺麗だろう。」


その頃の京都の寺は、いずれも一日中門戸を開いていて、今のように


拝観料を取るなどという生臭いことは、一切ありませんでした。


ですから、氏は散歩がてらの気楽さで龍安寺を訪れ、勝手に中へ上がり


込みました。


コマーシャルなどでよく使われる例の縁側に座って、月明かりの石庭を


ぼんやり眺める。---と、しばらくうっとりした後にふと見ると、


いつのまにか傍らに、お茶が置いてあったのだそうです。


寺の誰かが、氏のためにそっと置いて行ってくれたものらしい。


「昔の日本には、そういうすばらしいところがありました。」






次に、最近しばしばこのブログに名前が出てくる中島義道氏の本


からの抜粋。




久しぶりに龍安寺だけでも見ておこうと、鴨川べりのホテルから直行する。


涼やかな庭園を通り抜けて、石庭に達する。


夏の光に照り映えて木々の緑が綺麗だ。


石も砂も白く輝いている。


ほっと一隅に腰をおろすと「・・・この龍安寺は・・・」という大きな


テープ音が建物内に流れる。


おもわず怒りというより、痛みを覚える。


なんということだ!


この静寂の中にテープ音による案内とは!


だが10人余りの参観者達は、なんの抵抗もなく聞いている。


私は耐えきれず、事務所に駆け込んだ。


若い事務員との、長い交渉。


視覚障害者の方もいるし、イヤフォンを使うと紛失することもあり、


何よりも多くの参観者が望んでいるのだから、やめるわけには


いかないという返事である。


私はそのすべてに反対したが、ここに再度はっきり書いておく。


(1)視覚障害者が訪れた場合は、そのつど説明係のボランティアを

   つければいい。いや、そもそも視覚障碍者であればこそ、

   事前に調べておくべきなのだ。

(2)イヤフォンを貸すときには、身分証明書ないし適当な額の

   担保(1000円くらい?)を徴収すれば、解決する。

(3)テープを当然のごとく望む参観者には、寺の方針として、

   建物内で飲食してはならないように、大声をだしてはならない

   ように、「静寂を保つため」と言って断れば納得しない人は

   いない。


だが、このしごく合理的な提案も龍安寺が採用する可能性は低い。


なぜなら、参観者はまったく悪気なく「テープないの?」と聞く


からであり、そのテープ音を嫌がる参観者はきわめて少ないから


である。


驚いたことに「琴の音楽を流してくれ」という声さえあるという。


寺としても、こうした条件のもと、営業上テープをやめる理由は


希薄である。


敵は龍安寺ではない。


なにげなく「テープないの?」と聞く善良な市民であり、そのテープが


流れているあいだ、なんの疑問もなくその説明を聞いている、善良な


市民である。





以上、数十年前と数年前の龍安寺の風景です。





ここからは私なりの考えですが、龍安寺をこのような姿に変えてしまい


なにげなく「テープないの?」と聞くような人達は、おそらく高度経済成長


を支え効率や物質的、金銭的な損得に価値を置いてきた、私達よりもかなり


上の世代ではないかと思います。


経済界の上部の人達や政治家は、相変わらずそういった価値観で


生きている方がほとんどのようですが、今の10代、20代の若い


人たちを見ていると、確実にものごとに対する価値観が変わってきて


いると感じます。


現在の日本をつくってきた先輩達を否定しているわけではなく、物事は


極端に一方向に傾くと、かならずその揺り戻しがあるということです。


私は50年以上前にドナルド・キーン氏が体験したような日本的な良さが、


この先、再び戻ってくるような気がしています。




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