前回、トリガーポイント治療で用いられる方法の一つである
「スプレー&ストレッチ法」の理論的根拠はメルザックとウォールにより
提唱された、「ゲートコントロール説」で説明されていると書きました。
簡単に言うと感覚を伝える神経線維のうち、より伝達速度の速い
神経線維が活性化されると、それより遅い神経線維の情報は抑制
されてしまうという理論です。
主な感覚を伝える神経線維の種類と伝達速度を以下に書きます。
種類 役割 直径 伝導速度
(μm) (m/sec)
Aα 筋紡錘からの求心性情報、骨格筋支配 15 100
Aβ 触覚、圧覚 8 50
Aγ 筋紡錘への遠心性情報 5 20
Aδ 痛覚(一次疼痛)、温覚、冷覚 3 15
B 交感神経節前線維 <3 7
C 痛覚(二次疼痛)、交感神経節後線維 1 1
* 一次疼痛--鋭く、速い痛み
二次疼痛--鈍く、遅い痛み
最初の図ではAβ線維(触覚、圧覚)とC線維(二次疼痛)を比較して
より伝達速度の遅いC線維が抑制されています。
「スプレー&ストレッチ」の場合はフッ化メタンで冷却するので
このAβの部分が温覚、冷覚を司るAδ線維になっていると考えれば
良いです。
その場合もやはり、C線維よりもAδの方が伝達速度が速いために
疼痛が抑制されて、筋肉をストレッチしても痛みを感じないというのが
この方法の理論的根拠です。
しかし、このゲートコントロール説はあくまでも推測で、証明された
わけではありませんし、結局は「スプレー&ストレッチ」に対する
説明も経験的なものに、あとから理論的根拠が必要となったために
あとづけした理論にすぎません。
スラストや筋エネルギーテクニックの一般説と同じようなものです。
ところで、私が普段の臨床でメルザックとウォールのゲートコントロール説
とは違う経験をしているので、次回はそのことについて書きたいと
思います。
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