タイの特許制度について | 人民弁理士今日も行く

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 特許出願をした発明は、内容を審査する制度がある国であれば、おそらく殆どの国で、審査をしてもらうには出願とは別に審査請求をする必要があります。

 ただし、この審査請求は、出願さえすれば、早ければ同日にでもできるのが一般的です。

 しかし、タイでは、出願をした発明が公開されてから(殆どの国では、出願してから、ある程度の期間が経つと内容が公開されるようになっている)でないと審査請求ができません

 しかも、驚くべきことに、日本を始め多くの国では、公開される時期は、出願から1年6ヶ月後とかのように決まっているのですが、タイでは、概ね1年6ヶ月ということだけで、割と出願によってバラツキがあるそうです。

 さらに、信じられないのは、1年6ヶ月の計算の仕方が一律、タイにおける現実の出願日からであるということです。何が言いたいかと申しますと、自国民と他国民を平等に扱うために、ある国に出願をした後、それに伴って優先権という権利を主張して他の国に出願した場合、最初の国における出願の日を基準に手続が進むのが普通なのに、全くそれが通用していないということなのです。


 ここまででもすごいのですが、さらに驚きなのは、タイでの出願前に、既に外国で特許になった発明は、たとえ優先権を伴っていても、新規性なしとして拒絶されてしまうということです。

 これなんかは、思いっきりパリ条約という国際条約に反しています。

 また、さすがにこれは問題だということで、審判までいくと、拒絶が覆るケースが多いそうです。にもかかわらず、審判の前段階である審査部門では、全く審判における運用がフィードバックされていないようです


 タイは、前世紀末まで、殆どの国が加盟していた上記のパリ条約にすら加盟していなかったぐらいで、知的財産に関して相当に保護主義的な政策が未だに根強く残っているようです。


 そうはいっても、タイも徐々には変わって行くでしょうから、これからタイへの出願を考えている方が審査請求を行って結果が出て来る頃には、そういったこともなくなってくれているのかも知れません。


 実際に、出願内容の公開は、例えば侵害の蓋然性が高い事件が発生しているなどの理由を付して上申書を提出することで、早期に行ってもらえるような運用があるとのことで、これにより審査を早く請求することも可能になります。

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