My季語集「菊枕」NHK俳句10月19日

櫂未知子先生

ゲスト 紫舟  (書家)
 
書道家。本名は福崎 紫(ふくざき ゆかり)。
六歳より書をはじめる。書の本場奈良で三年間研鑽を積んだのち
東京へ。書を用い、文字をイメージ表現・表情・感情をつけ
情報としての文字に意思を吹き込む。
そして日本の伝統的な書を、世界に通用する
「意思を表現する」手段として世界を舞台に発信している。  
「龍馬伝」の題字、「美の壺」のタイトル、美女。
 
    でもしかしやっぱりちょっと夜の長し  紫舟

*色紙の文字は、細書き。虚子風

兼題 「菊枕」

菊の枕 /幽人枕
干した菊の花を入れて作った枕。摘んだ花を陰干しにしてよく乾
かし枕の中味にする。ほのかに菊の香る枕は、安眠の効用もある。
 虚子の長寿を願い、菊枕を贈った杉田久女 のことはつとに知ら
 れている。

杉田久女「菊枕」関連句

菊花摘む新種の名づけたのまれて
菊摘むや群れ伏す花をもたげつつ
摘み移る菊明るさよ籠(こ)にあふれ
菊干すや日和つづきの菊ヶ丘
愛蔵す東籬の詩あり菊枕
菊干すや東籬(とうり)の菊を摘みそへて
ちなみぬふ陶淵明の菊枕
白妙の菊の枕をぬひ上げし
ぬひあげて菊の枕のかほるなり
 
虚子の返句に「初夢にまにあひにける菊枕」。

さやさやと夜のしのび来て菊枕      櫂未知子
菊枕仕上げたる手に香の残る    村重香霞


特選

一席
わぎもこは一つ年上菊枕      大阪市岸和田市 妙中 正さん
*年上女房と菊枕の取り合わせ。おのろけ句か。
   背の君は一つ年下菊枕

二席
一畝の香り詰めたる菊枕       神奈川県川崎市  迎 原夫さん
*菊畑を詠む。土臭さのある。「一畝」の量感でリアルさが出る
   お龍さん龍馬に作る菊枕

三席
菊枕小さな雨にねむりけり    北海道 旭川市   守山由美子さん
*「小さな雨」がおもしろい表現。
外の雨の小さな音とやさしいまどろみ。

入選

賜りてかそけき音す菊枕     岡山県岡山市 三好泥子さん
*「賜る」、「かそけき」が雅び。


菊枕臥して野辺行く心地せり    岐阜県中津川市 小木曽久子さん
*寝ながら野辺を行く感じ。夢の中で菊が香り立つ。

菊枕母の口角上がりけり      新潟県佐渡市  藤原宣子さん
*介護俳句。娘が作ってくれた菊枕を喜んでいる母。
   母が作って母の口角が上がる。二通りの詠み方。

羽根よりもかろく干されて菊枕   神奈川県横浜市  川原京子さん
*軽い、実感のある句。羽根枕からの連想対比。

松籟の吹き渡る夜の菊枕            埼玉県さいたま市  大日向幸江さん
*松風と菊との響き合い。聴覚、嗅覚、触角の三重奏。

縫い目より香を零したり菊枕     青森県八戸市 甲地 敦子さん
*手縫いの場合、縫い目から花びらの香が零れる。
  「香が零れる」がいかにも優雅。

俳人の言葉       八田木枯

御形摘む大和島根を膝に敷き

冬ふかし柱が柱よびあうも

入選の秘訣    

   *文語文法・・・電子辞書で調べる。活用、文語形
 
   病えてつみ上ぐ書や今朝の秋
〇病えてつみ上ぐる書や今朝の秋

二百面相落選句

夫が摘み妻が縫いたる菊枕
菊枕投げて花びら舞い踊る