秦 建日子

チェケラッチョ


チェケラッチョ!!

監督:宮本理恵子   原作:秦建日子

出演:市原隼人 井上真央 平岡祐太 柄本祐 玉山鉄二 伊藤歩 山口紗弥加 陣内孝則 ガレッジセール KONISHIKI


★★★★★☆☆☆☆☆



ストーリー

沖縄。高校3年の夏を迎えた透は、本州から沖縄に引越しペンションを潰し今は白アリ退治をする陽気な父と優しい母と、秀才の哲雄、みやげものやを次ぐ暁、そして唯と、のんきで楽しいけれど退屈な日々を送っていた。

ある日、バイト先の水族館で、謎の美女にあった透は、その後、人気ヒップホップグループのライブ会場で再び彼女と再会。

透ら3人は、ヒップホップを始めるが・・・


キャストとおおまかなストーリーと「ケビンコスナーと花瓶こするなは似ているよ、チェケラッチョ!」というCMで、これはヤバイだろ~と思って、ものすごい斜めになりつつ見た映画だったけれど、

ところがどうして、立派な面白B級作品だった。

高校生のひと夏の恋、そして熱くなるもの、友情、成長、という、これを青春映画といわずしてなんという!?というような王道まっしぐら。でも、キャストの沖縄弁もそんなに不自然じゃなく(実際に沖縄の方が聞かれたら多分微妙でしょうが・・・)、「NANA」でものすごく心配していた平岡君もきちんとこなしており、脇を固める役者(陣内、松重、KONISHIKI、以外の活躍ガレッジセール)もいい味でした。

「とりあえず面白いものをつくろう」というコンセプト通りの映画で、ある意味成功じゃないのかな。


特筆したいのが、やはり山口紗弥加。あのダメダメ映画「ウォーターズ」でも1人気を吐いていた山口さんですが、本作品は「KONISHIKIと新婚でかつ身重でありながら、ヒップホップグループの涼太のおっかけはやめられない ハイテンションおねえちゃん」の役どころを、キレまくって演じている。

ライブ会場で他のファンを威嚇する「死ねや!」は最高。

やっぱり、この女優さんはかなり好きだな、と再認識の一本です。もっと色んな映画出てほしいなあ。


まあ、そんなこといいつつも、白状します。

私の中でこの映画が好感触なのは、やっぱり玉鉄がいたからでしょう。

確かに、テーマ、そして女子高生に大人気の「市原隼人」という10代にはピンポイントでハートわしづかみな映画。

しかしながら、青春は遠い彼方に行ってしまった、負け犬予備軍の私としては、玉鉄に心臓をえぐられた映画なのだ。

そう、玉山鉄二がムダにかっこいい。

最初のライブシーンで鼻血がぶー。

中盤、市原くんに「ここがからっぽなんだよ!」とムネをばーんとやるあたりで、さらに鼻血。

そしてラストシーンで、失血死、という玉鉄祭り。

だって、あんな左っかわだけ刈り上げて右は長く流す髪型似合うのなんて、今、日本中で玉鉄だけだよ!


オレンジレンジの歌が、随所に流れてくるわけなんだけれど、もっと「オレンジレンジの歌の映画」というイメージが強いと思っていたわりに、そういう印象が残らないということは、ちょっと今回の主題歌のインパクトが薄いということかな・・・


ともあれ、さすが、フジテレビ制作。見せ所を知ってるわ~という映画でした。

「おもしろいものと決めたら、多少のディティールはいいんじゃ!」という心意気、これからも、是非。


きっと高校生の時に見たら感情移入してしまったんだろうけど、社会に疲れている今見ると、「玉鉄がいる沖縄に行こう。もう、今日行こう・・・」と、逃避願望を助長するなにかがあるそんな一本です。

行っちゃおうかな・・・





チェケラッチョ!!

スクールオブロック




スクール・オブ・ロック

監督:リチャード・リンクレイター

出演:ジャック・ブラック ジョーン・キューザック マイク・ホワイト サラ・シルヴァーマン


★★★★★☆☆☆☆☆



ストーリー

中年ロッカーデューイ・フィンは、所属するバンドもうまくいかず、定職につかず、かつてのバンド仲間の親友の家に身を寄せるも、今は教員になっている親友の彼女に家賃の滞納を迫られる日々。

ある日、親友のネッドあてにかかってきた名門校からの「代用教員としての採用」の電話に偶然出たフィンは、自分がネッドと偽り、偽教員になることに。

名門校の従順な生徒を受け持つことになったフィン。

そんな子供たちにフィンは、学校のカリキュラムを無視し、ロックを教えていく。




この映画にキャッチをつけるなら、「天使にラブソングをたかじんバージョン」。

全編、やしきたかじんを思わせる、ジャック・ブラックの身勝手で一方的なハイテンションで映画が進んでいく。

我が~。我が~。そんな関西芸人魂のロッカージャック。

「天使にラブソングを」と決定的に違うのは、なんだろうか、やっぱりフィンの人間性だろうか?

時代遅れで身勝手なフィンは、バンドを首になっても決して自らを省みることない男だが、それは、子供相手でも一緒。

親が厳しくてギターを続けられない子供、自分に自信がない子供、そんな子達を導くと思いきや、「うまいじゃーん。やれば~」みたいなきっかけをポーンと投げるだけで、後は子供たち自信が乗り越えたり、解決したりしていく。

あくまで、きっかけのボールを投げるだけの人。

その証拠に、ニセモノだとばれて、学校を追い出された後も、間近に迫ったバンドバトルに出場する子供たちを心配するというよりも、自分はふてくされている。子供たちが迎えに来てにんまり、という、相変わらずな成長なしのだめっぷり。

でも、私は、そのダメダメなキャラで正解だったと思う。

設定も、展開も、リアリティが薄く、前述の「天使に~」のこともあるので、逆にそれが新鮮だったのだ。

自分勝手な、だけど好きなものが一つだけある先生。

だって、これで生徒を思う熱い先生、「人と言う字は支えあってるんだぞ!」みたいな熱弁で、バンドバトル目指すみたいな話だったら、興ざめだったもの。



全編的にゆるーい感じはしますが、スカッとするし、自らの道を行くのもありだよね~的な、パラダイス思考に陥れるこういう作品もたまにはいいなあ。

会社や学校や人間関係に疲れたとき、ぼーっと見るには最適な映画です。

とりあえず、文部科学省のキャリアさんたちの課題映画にしましょう。




パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
スクール・オブ・ロック スペシャル・コレクターズ・エディション

ウォーターズ


ウォーターズ

監督:西村了

出演:小栗旬 松尾敏信 須賀貴匡 桐島優介 平山広行 真中瞳 成海璃子 原田芳雄


 

★★☆☆☆☆☆☆☆☆



ストーリー

ストリートパフォーマーのリョウヘイ(小栗)ら7人は、それぞれの事情を抱え、心機一転ホストとして成功する為に、面接に臨んでいた。

しかし、目の前の現実は厳しい。再起をかけた初出勤の日、店は空っぽで、保証金を渡したはずの店長もいない。

だまされたと気付いた7人は、店にいたオーナーと孫娘に出会い、店を再建させることに。

しかし、ホストとして中途半端な彼らは、客としてきた、若き成功者美奈子(真中)たちを怒らせてしまう。

その孫娘が病気だと分かり、彼らは手術代を稼ぐ為に美奈子にもう一度勝負を挑む・・・



ギャガユーセンとして初めての制作映画。

軽い!古い!薄い!

の三連発だけれども、なんだか、これだけ突き抜けると、それはそれで立派だなあ、という感想だった。見た直後は。

しかし、実は、私、この映画を見てからはや2ヶ月以上がたっているのだが、今になって、別の感想を持っている。

内容はまったくないのに、意外と記憶に残っている・・・不思議な映画だ。

どうしてだろう。だって、本当にリアリティのない、今時2時間ドラマでももっと気合入れるんじゃないのか!?ぐらいの膝をつめて小一時間説教したくなるような内容だったのに、どうしてだ。

ギャガの親会社ユーセンの宇野社長と並んでエイベックスの衣田さんが製作に名を連ねる本作品。

途中でカーラジオから流れてくる、なぜに今更!?なhitommiの「LOVE2000」。2000って!

そして、真中瞳って!もう、ニュースステーションすら終わりましたよ!

つっこみどころが満載過ぎて、疲労困憊な按配なんだが、結構、細部まで説明できたりする。覚えてたりするのだ。

不思議だ。

その謎を解きたいがために、この先DVDで見てしまうかもしれんくらいだ。じっちゃんの名にかけて!

今思い出したのだが、過去にこういう作品がもう一作あった。

ガクトの「ムーンチャイルド」・・・

やっぱ、そっち方面ですか・・・



ということで、キャスト皆が、微妙な雰囲気を醸し出すことだけは成功している映画だが、一つだけ、きらりと光る演技を見せていた女優がいた、あたし的に。

山口紗弥加 。

真中瞳演じる、ベンチャー企業の経営者たちの1人なんだが、こいつが、結構、よかった。

若き成功と引換にしたものの哀愁、それの裏返しにある、金に対する優越感、孤独・・・うまかったよ!

真中は、以下自主規制で。


イーオンフラックス


イーオン・フラックス


監督:カリン・クサマ

出演:シャーリーズ・セロン マートン・ソーカス ジョニー・リー・ミラー アメリア・ワーナー ソフィー・オコネドー 


★★★★★★☆☆☆☆


ストーリー

西暦2415年近未来。ウイルスにより世界の98パーセントが死滅、残った人々は世界は壁に囲われた、ユートピアで暮らしていた。

生活を脅かすウィルスも戦争もないと思われる世界だが、世界の滅亡を救った科学者グッドチャイルド一族の圧制は続いていた。

反政府組織モニカンの一員である、イーオンはそのグッドチャイルド暗殺を命じられ…



シャーリーズ・セロンって何でもできるんだな~。

このひと言に尽きる作品。

全身が武器という、全く情感のない「最終兵器彼女」的なイーオンが、不必要に布の少ないエロかっこいい衣装で闘う闘う。

そのアクションシーンは、本当に、美しく素晴らしい。

「モンスター」で「きれいなだけじゃないで」というアピールに成功したシャーリーズだけれども、本作では、「きれいだけどやるで」というアピールに成功している。


といっても、あまりにシャーリーズの魅力のみに頼りすぎた映画でもある。

ウーマンマトリックスと一部では言われたけれども、物語の主軸自体は薄っぺらいし、リーダーのひと言で急にイーオンを擁護し始めたモニカンの各隊員達(うち一人は森進一似)も、なんというか、信念が感じられない。

信念なくして、反政府組織なんかに加われるものなのか。

グッドチャイルドの話にイーオンが妙に疑いなく話を聞いたのもちょっと・・・だって、普通、罠だって疑うでしょう。

そういう、全てが、あまあまなアクション映画でした。

シャーリーズによって成り立った映画なのだけれど、シャーリーズにとってはよかったのかな・・・


唯一すごく笑ってしまったのが、イーオンと闘う女性戦士が池で口に竹みたいなの加えて潜んでいたシーン。

「ハットリ君かよ!」

非常に、ツボでした。


ダイヤモンドインパラダイス


ダイヤモンド・イン・パラダイス


監督:ブレット・ラトナー

出演:ピアース・ブロスナン サルマ・ハエック ウディ・ハレルソン ドン・チードル ナオミ・ハレス

配給:ギャガ・コミュニケーションズ



★★★★☆☆☆☆☆☆



ストーリー

天才的な泥棒マックスは世の中に3つしかない財宝ナポレオンダイヤモンドを2つ盗み終えたことをきっかけに、パートナーローラとともに、泥棒稼業から引退、バハマでバケーションを送っていた。

バハマでのバケーションにマックスが飽きてきた頃、彼らを追うFBIスタンがバハマに現れ、最後の一つとなったナポレオンダイヤモンドを乗せた豪華客船がこの地に停泊することを告げる。

泥棒の血が騒ぐマックスと、今度泥棒をしたら別れると言う、ローラ。

マックスが選んだ道は・・・



いろいろな方が、ブログや評論で言われているとおり、この作品はずばり、「ルパンの晩年」。

毛深い泥棒(ルパン)、パートナーのセクシー美女(不二子)、追いかける刑事(銭形)、もうそのまんまじゃん!

一生使い切れないほどのお金も掴んだし、もう、あとは遊んどく~?というキョセンか?のように、オーストラリアではなくバハマに飛ぶ、マックスとローラ。

この世のパラダイスで、ビーチで寝転んだり、カクテル飲んだり、踊ったりしている間に、今まで、良心の呵責も無く、もの盗みまくりだったローラも、「危ないことは、もうしないで」なんていう、超保守的オンナに変わってしまい、3つ目のダイヤを盗みたいと思う、征服欲抜群のマックスは、自分の好奇心とローラとの間でゆれに、ゆれる。

といっても、この作品自体が、軽いタッチで描かれているので、悩んでいるといっても、そんなに悩んでもいない。

バスタブにつかりながら、ローラの機嫌をとったりして、なんとか乗り切るつもりのマックス。

ローラが認めるのか、どうか、というところが、ダイヤうんぬんのもう一つの柱だったんですね。

しかし、この作品。エンターテイメントに徹しているとともに、「ライトに」ということにも徹している。

南国の背景にふさわしく、あくまでライトタッチに!エロシーンも暴力シーンもライトタッチに!サルマはチチさえ出しませぬ!

ぬるい!ぬるいよ!最後の展開すら、ちょっと読めてしまうよ!


けれど。

私は、この作品嫌いではありません。

完全懲罰(というか、主人公は泥棒なんですが)とまでは言わないけれども、想定の範囲内のハッピーエンドで、後味もいい。

この映画を見たときは、現実に対して、くううううっとなっている時だったので、そんなときに、青い海とちょっと年取った泥棒の夢とロマンスの話は、とても心に優しく響きました。

ものすごいへこんで、なーんも考えたくないときに、も一度見ても、いいかな。



余談ですが、この映画の予告編で流れていた、前売り特典のボールペンを上下に動かすと、サルマが裸になる、という○レッジヴァンガードに打っているような、エロおもしろ特典はかなり、欲しかった。

映画館でも、その特典予告のところは笑いが起こってました。

県庁の星


県庁の星


監督:西谷弘

脚本:佐藤信介

出演:織田裕二 柴崎コウ 石坂浩二 佐々木蔵之介 和田聰宏 紺野まひる 酒井和歌子


★★★★★★★☆☆☆



ストーリー

県庁のキャリア公務員野村。

出世のため、県が勧めるビッグプロジェクト参加を狙う野村は、民間のノウハウを学ぶという名目で行われた人事交流で民間のスーパー「満天堂」に派遣される。

マニュアルがない民間の仕事に戸惑う野村。野村に対し反感を持つ満天堂の社員。

そんな中、保健所と消防署の査察が満天堂にはいり、満天堂は廃業の危機に。

狙っていたビッグプロジェクトから外され、自暴自棄になった野村に、満天堂のパート店員二宮が助けと求める。



フジテレビらしい、娯楽大作映画。だけどそれに留まらず、ありがちな甘々で終わらなくて、ぴりっと効いていて、とても面白かった。

マニュアルどおり、慣例どおりに、出世だけを目標に生きてきた野村。

しかし、その夢が断たれた時、全てを失った時、必要としてくれる人がいた。

消防署と保健所のダブル査察を受けて瀕死の状態だったスーパーを守ろうとする二宮である。

夢を失って帰る場所をなくした野村と、居場所をうしないたくない二宮は、努力してきたがゆえに現状が見えなくなった男と、現実を見続けたゆえに努力を怠っていた女、の二人だ。

この二人の改革も映画の核となる。この二つも含めて、映画は4つの「改革」で構成される。

野村自身の改革、二宮の改革、スーパー満天堂の改革、件のビッグプロジェクトをはじめとする腐敗した県庁の改革。

スーパー満天堂だって、褒められたスーパーではない。消費期限のきれたものの惣菜利用、売れ残りの揚げ物を揚げ直す、ストック管理をしていない・・・民間には民間の腐敗がある。

高層ビルから市民を見下ろして自分の出世だけを考えてきた野村が、民間の腐敗と戦い「改革」を成し遂げた後、自分自身のそして県庁の腐敗に気づき、一石を投じる。

「公」を批難して「民」を持ち上げるだけではない、両方の問題指摘の構図がとてもよかった。



原作を読んでいたものとして、不安だったのは、二宮がおばちゃんから若い女性に代わったことと、原作では弁当戦争がメインなため映画として小さくまとまらないかという点だった。

一つ目は、問題なし、だった。絵的にもキレイだったし。まあ、そうじゃなきゃ、映画にはならない事情も分かるし。

二つ目も、県のビッグプロジェクト高級老人ホームの推進という、「県庁での改革」を厚くしたことにより、とてもスケールアップして、オッケー。

しかし、その一方で一つだけ残念だった事がある。

それは、脇キャラの使い方だ。

原作では、二宮とうまくコミュニケーションがとれない息子との関係再構築もあったのに、それが消滅していたし。

何より、スーパー内の脇キャラをもうちょっとうまく使えなかったなあ~ということがある。店長や和田の最後の奮起はよかったけれど。

私が原作の中で一番好きだったエピソードは、食物担当者が上の命令で賞味期限切れの商品を出していたわけだけど、プライドが許さなかった為、実は賞味期限事態を改ざん、賞味期限が切れていないものを「きれた」と報告、店頭に出していたというエピソードだ。

大きな流れの中で、こっそりと改革をしている人もいる、というこのシーンがとても好きだったので、あえてこの話をカットする必要がなかったのでは~と残念。

織田と柴崎にスポットが絞られすぎた気がするので、「踊る」くらい脇キャラが活きていると、満点だったのに。



人が改革をする、というのは、たやすい事ではない。

「自分だけが変わったって何も変わらない」。そうやって、流される事で高まる事を選んだ野村と、諦める事で今の位置で生きることを選んできた二宮。

二人のそれぞれの「改革」後の晴れ晴れとした誇り高い笑顔がとても印象的だった。

もちろん、それはたやすい事ではない。映画のラストシーンがそれを物語る。

大事なのは人生において転ばぬ事ではなく、転んだ後どう起き上がるか。

そんな、「ロッキー」のような映画。私はとても好きだ。

サイレン


サイレン

監督:堤幸彦

脚本:高山直也

出演:市川由衣 森本レオ 田中直樹 安部寛 西田尚美



ストーリー

病気の弟の療養の為、夜美島に移り住むことになった天本由貴一家。

しかし、その島は29年前に1人を除く島民全てが消失した、いわくつきの島だった。

29年前、たった一人の生存者も、精神をわずらい、その後、自殺、事件は闇に葬られた。

由貴は隣人に「サイレンが鳴ったら外に出てはいけない」と言われる。

その言葉こそ、29年前に起こった悲劇をあらわしているのだと、言う。

そして、島にサイレンが鳴り響きはじめた・・・



★★★☆☆☆☆☆☆☆




映画を見る前に、ざっと見たパンフで、オチまで全てが分かってしまった・・・

「製作者の意図により結末は人に喋らないで下さい~」の注意文。

主人公一家が飼っている犬の名前。

・・・む、これは、もしや、○○○○(ネタバレすぎるゆえ伏せます)のパクリなんじゃあ、いや、そんなバカな~、と思っていたら、まさにどんぴしゃ。

あの、目が大きいかわいすぎる弟がひと言も発しない事自体、わかりやすすぎだもの・・・

途中から、オチに確信を持って映画を見始めていたのですが、それでも、それなりに楽しめましたけれど。



移住した島、夜美島が、29年前に島民消失事件があった島であるということに加え、人魚伝説、バミューダトライアングル、マリーセレスト号事件など、金田一少年の事件簿?というくらいの展開からはじまる。

そして、父親森本レオがサイレンの中外出、メガネが割れた状態で帰宅。犬は殺されるし、変な宗教みたいな集まりで踊り狂っている人はいるし、「孤島」から連想される「恐怖」のイメージをぎゅうっと凝縮したみたいな脚本。

「サウンドサイコスリラー」となうっているだけあって、サイレンの音を、1度、2度、3度と聞いているうちに、うわーっとなってくる。それは、ホラーのような怖さではなく、自分の中の狂気が引き出されかけているような、試されているような、そんな危うさに思えた。

まっとうなことを言っているのは誰なのか。その問いが分かった後も、どう収集をつけるか、という点でドキドキはする。

その分、あまりに救いのない、エンドロールにはさまれた影絵の画像は、後味も趣味も悪すぎた。

原案はゲームの映画。ゲームだったらバッドエンディングなんじゃないかな、というラストが、もうちょっとなんとかならなかったのかなあと、反則気味に感じてしまった。



堤作品の常連阿部ちゃんが、瞬殺で消えてしまったのでが残念。

最近の「怖がり女優」対決では、この市川よりも「輪廻」の優香に軍配。

松尾スズキは、ああいういっちゃってる役、本当に気持ち悪くて、イイですね。芥川賞候補作家なのに・・・



だけど、これ、古いタイプの天井が高い劇場と、シネコンとでは全然怖さが違うと思います。

灯りもほぼ真っ暗なドルビー入りまくりなシネコンタイプの劇場で見ることは必須ですね。



レジェンドオブゾロ


レジェンド・オブ・ゾロ

監督:マーティン・キャンベル

出演:アントニオ・バンデラス キャサリン・ゼタ=ジョーンズ  ルーファス・シーウェル ニック・チンランド アドリアン・アロンソ ペドロ・アルメンダリス・Jr ジュリオ・オスカー・メチョソ ジュラー・ヘンズリー マイケル・エマーソン

配給:松竹 ブエナビスタインターナショナルジャパン


ストーリー

「マスク・オブ・ゾロ」から7年。カリフォルニアが合衆国の31番目の州になろうとしていた1850年。

愛する家族のため、選挙を機に、ゾロから引退しようとしていたアレハンドロ。しかし、約束を破り、あと3ヶ月、地方の選挙が終わるまでゾロを続けさせてくれというアレハンドロにエレナは激怒、息子を連れて家を出てしまう。

その後、領主アルマンのパーティーで彼の横にエレナがいるのを見、失意にくれるアレハンドロ。

しかし、アメリカ滅亡を企む秘密結社が着々と準備を進めており、それを指揮するのはアルマンだった・・・



★★★★★★☆☆☆☆


実は、前作「マスク・オブ・ゾロ」を見ていない、私。

前もってどんな話だったか細かい説明を受けて、映画を見たものの、きっと前知識なくても楽しめるシリーズ2作目だった。

アクション映画らしく、ゾロがかっこいい!といいたいところだけど、かっこいいいのは断然、妻エレナ演じるキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。

あのドレスをスカートのまま敵を蹴るわ、剣で突くわ、の大活躍。

その美しさは相変わらずで、ヒーローの妻としての心配、それだからの行動、アルマンに対する徹底した演技。ブラボー!

その反面、ゾロはエレナに出てかれて、酒に溺れたり、アルマンに嫉妬したり、アクションシーンでもミスをする、それが人間くささを強調したという点で、今らしいヒーローものともいえるのかもしれない。

ヒーローは家族を、つまり守るものをもつと、弱さや迷いが出てくる。今回は妻の家出でさらっと流されたその部分の葛藤をもっと出すと、よりゾロに感情移入しやすかったかもしれない。



アクション映画、ヒーローもの、勧善懲悪、こう並んだならば、ゾロが負けることなんてないし、ゾロの家族がバラバラになることもないだろう、という事は映画を見る前から分かっている。

それでも、アクションシーンには手に汗にぎる。

特に、クライマックスの列車でのアクションシーンは、インテリヤクザだと思っていたアルマンが予想以上に強くて、ゾロが予想以上にアルマンにとどめをさせなくて、ドキドキイライラする。

「剣でZなんてキメてる前に、とどめささんかい!」劇場中のつっこみを聞いた気がした。



ひとつ、ちょっと以外だったのは、アントニオ・バンデラスの胸毛。

顔とか手足とかから、もっと、もっさーな熱帯雨林系を想像していたので、そこまで濃くなくびっくり。チチ毛はあったが・・・

今回は、「ゾロかっこいい」のではなく、ゾロの人情とか家族愛とかを歌った「ゾロファミリー」の映画になってたので、ゾロかっこよさを目指していく人には、前作よりちょっと物足りないのかな。



キャサリン演じるエレナの強く美しく賢い女性。まさに理想の女性。今度はエレナ主役で、是非。


スタンドアップ   NORTH COUNTRY


スタンドアップ



監督:ニキ・カーロ

出演:シャーリーズ・セロン フランシス・マクドーマンド シシー・スペイセク ウディ・ハレルソン ショーン・ビーン


ストーリー

夫の暴力から、二人の子供をつれ、故郷に返ってきたジョージー。鉱山に勤める父親とジョージーの間には、高校生の頃に子供を生んだ時から、深い溝があった。

子供を養っていく為、鉱山で働く事にしたジョージーが直面したのは、鉱山は男の仕事とする鉱山労働者たちのセクハラと社会の偏見だった・・・



★★★★★★☆☆☆☆


 

エリンブロコビッチのような法廷での爽快なウーマンドリームを想像していたのだが、全く違う。

ジョージーは、エリンブロコビッチのようにセクシーでもなく、好かれてもおらず、味方もいない。

たった一人だって、立ち上がらなければならない。

そういう物語でした。

話は大きく、家族との問題、そしてセクハラであり女性差別の問題の二つに分けられる。

そして、それが、家族との間に亀裂を走らせたジョージーの高校生での妊娠の事実があきらかになることにより、実は大きく一つの問題だったと、後に判明します。

女性というものが、生きていく上で、枷になっていた時代。

そのためには、男の言いなりになり、その限られた中で幸せを見つける事が、普通であった時代。

「自分と子供を自分で養いたい」ジョージーはこう言い、鉱山の職を選びます。

しかし、そこでジョージーたち女性には、あまりにもひどい仕打ちがかせられる。

集団の悪意、です。きっと、個人個人ではやれない仕打ちなくせに。

けれど、その集団の悪意を持つには、やはり社会なり家庭なりでの女性への見下し方が潜在的にあるから。

だからこそ、組合の大会で、発言するジョージーを、父親がかばい、誇りに思うと述べるシーンには涙が溢れました。

自分が信じた道を、自分で選んで、自分で責任を負って、自分で歩いていく事。

譲れない一歩をもつ尊さに涙が出ました。



男女は同質ではないかもしれない。けれども、同等であるべきです。

働いているうちに、セクハラの許容範囲も広くなってしまった私ですが、時々、耐えれないときもある。

しかしながら、この同じ土俵に上がれるようになったのも、ジョージーたち、先人の、涙とスタンドアップの軌跡なんだと。

だから、私も後に続く女性のために、せめて職場の環境を整えるぐらいはできないかとも、思ってしまいました。



弁護士が万能ではなく正義感に溢れている、という感じでないのもリアリティがあっていい。

ラスト、安易に二人が結ばれなかったのもよかったです。

フランシスはさすが、グラミーノミネートの熱演でした。

そして、言うまでもなく、シャーリーズセロンも。あの強く美しい姿は、スカーレットのようでした。



これは事実をもとにした映画で、映画では裁判は数ヶ月のように描かれますが、実際には20年近くの裁判であったといいます。

その長い年月の間、勝利を勝ち得るまで、ジョージーや闘ってきた女性達は、社会的偏見により、苛まれてきたはず。経済的にも。

家族の再生をも軸にしたことで、その裁判のことがラストたたみこみになってしまったのが、少し、残念です。

あと、これなんでR-15なの!?

差別発言が多かったり、レイプシーンからかもしれないけど(乳すら出してないのに)、こういうのを若い男子が見てからと、見ずに育つのと、絶対違うのに。

私なら、○○○○省推薦で、高校生に見せるな。

七人のマッハ


七人のマッハ!!!!!!!


監督:パンナー・リットグライ

出演:ダン・チューボン げーサリン・エータワッタクン ピヤポン・ピウオン アモーンテープ・ウェウセーン ラッタナポーン・ケムトーン 



ストーリー

麻薬売買組織を追うデューは組織のボスヤン将軍逮捕の際、相棒を喪う。

失意の中、妹のトップアスリートによる慰問に同行したデュー達だが、その慰問先の村がヤン将軍開放を要求する反政府ゲリラたちに襲われてしまう・・・



★★★★★☆☆☆☆☆




実は、全く期待せずに見ました。

スポットを見る限り、いろんなアスリートっぽい人たちが、逃げる!闘う!火薬爆発!トラック飛び越える!みたいな、ストーリーほとんどないけど、カラダは張るよ?的な映画だと思っていました。

しかしながら、これがどうして。

ストーリーは、思いのほかしっかりしている。

麻薬王を追い詰めた刑事。相棒はその逮捕時に死亡。責任を感じつつ、現実逃避のため、妹のアスリート慰問についていったら、麻薬王を解放することを引き換えとして村をゲリラに占拠される・・・

そりゃあ、核ミサイルが、トラックでがーっと運ばれてくる、みたいなドリフっぽいところもあります。お約束どおり、アスリート達は、誰も死なないし。

けれど、私は、この作品、アクションでありながら「暴力」に対する、絶対的な否定として作られたのではないのかと思っています。

たとえば、村が占拠されて、これR-15じゃないんですか?というほど、村人がガンガン殺されていきます。

本当に、まるで、虫けらのように。

アスリートは、何もできない。怖いんです。自分も殺されないようにするのが精一杯。

それで、村人とアスリートが一致団結して反旗をひるがえしますが、(このへんの国家歌う団結は笑ってしまうほど安いですが)、それでもやっぱり無力な村人は殺されてしまう。5人向かって4人殺される。でも、1人のために4人は殺されていく、というような。

それでいて、並居るアクション映画のように、村人Aが死んでも主役が元気ならオッケー、ということでもない。

きちんとそれぞれの悲哀がある。それぞれの人生が終わってしまった事にたいする悲哀が。

(ここからは少し、ネタバレになります。)

それが、あのラストシーンなのだろう。

将軍は捕まった。核ミサイルも回避できた。自分達を救ってくれたアスリートに、感謝をしたい。けれど、失ったものの大きさに、ありがとうと手を振りながらみんな泣いている。

あのラストシーン、あれは、アジアらしい、素晴らしいラストシーンだと思う。

アクション、といってもハリウッドアクションとは、そのストーリー性において、とても一線を画している。


でも、そういっても、ディティールというものは一切ない映画だったけどね。