『オオカミだぁ!』
サーラ・ファネッリ、掛川恭子訳
『オオカミだぁ!』
個人的お気に入り度:★★★
- サーラ・ファネッリ, 掛川 恭子
- オオカミだぁ!
オオカミが、友だちを見つけに町へ行く。
おばあさんのメガネを一緒にさがしてあげたり、
車を直している男に道具を手渡してあげたり、
お面をかぶった子ども達の遊びの輪に加わったりするが、
オオカミだとわかったとたん、
皆逃げ出したり、追い回したりで、友だちになってくれそうにない。
オオカミは落ち込んで、オオカミの友だち、
ロージーに、これまでのことを話す。
それをきいていた人間たちは……。
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人々がそれぞれの事情で、
初めはオオカミが見えない、というところが面白い。
おばあさんはメガネをなくしているからはっきり見えず、
車を修理中の男は車の下にもぐっているので相手が誰だかわからない。
お面をかぶった子ども達は、オオカミもお面なのだと思っている。
黒いエンピツの線でぼうぼうの毛並みに描かれた、
一見粗野で乱暴者に見えるオオカミが、
友だちをもとめて人間の町を歩き回るというところが
なんだかわいらしい。
『ねずみのちょびちょび サーカスのスターになる』
フランソワーズ、ないとうりえこ訳
『ねずみのちょびちょび サーカスのスターになる』
個人的お気に入り度:★★★
- フランソワーズ, ないとう りえこ
- ねずみのちょびちょび サーカスのスターになる
ちいさなねずみの女の子、「ちょびちょび」 が、
お母さんに楽をさせてあげたいとサーカス団に入団し、
サーカスの花形スターになるまでのお話。
兵隊の格好をして行進したり、
ピンクのくるまをひよこにひかせたり、
なわとびにちょっとした一人芝居、
輪ころがしにバレエと、どんな芸も器用にこなすちょびちょび。
親孝行なねずみの子がサーカスで成功するという、
ほのぼの系の絵本。
絵もかわいらしくてやさしいかんじ。
『ぼくのかわいくないいもうと』
浜田桂子
『ぼくのかわいくないいもうと』
個人的お気に入り度:★★★
- 浜田 桂子
- ぼくのかわいくないいもうと
ぼく(はやしこうた、2年生)の妹(まほ、1年生)は、
ぼくの休み時間になると、ぼくの教室にとんでくる。
すごいおしゃべりですごいでしゃばりなのだ。
うちにいるときは宿題の最中に絵本を読めと言ってくるし、
ぼくの誕生会には呼びもしないのに邪魔をして、
かわいい女の子がくれたカップを
「これおにいちゃんもってるおんなじー」とばらしてしまったりする。
ぼくはへきえきし、妹のことで落ち込んだために(?)
おたふくかぜにかかってしまう。
そして、ぼくがなおったあと、今度は妹が。
はじめは妹がいなくてせいせいしているようすのぼくだが、
だんだん妹のことが気になり、ちょっとさびしくなってきて・・
妹の好きな絵本
「ぼくのかわいいいもうと」 を読んであげるのだった。
元気になった妹は、前のようにおしゃべりででしゃばり。
校長先生におにいちゃんが好きな絵本を読んでくれたので
おたふくかぜがなおった、と話す。
やんなっちゃう、といいながらも、
まんざらでもない表情の兄なのであった。
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兄の照れくささややさしさが伝わってきて、共感できる。
クラスメイトのきょうだいと妹をくらべて、
あんなきょうだいだったら良かったのに・・
なんて言っているが、
その妹と「ぼく」とがそっくりなところが可笑しい。
図書室で妹が先生に
これ(「ぼくのかわいいいもうと」)おにいちゃんが好きな本、
と言っている場面がある。
もしかすると、「ぼくのかわいいいもうと」は、
もともとぼくの絵本だったのかもしれない、と思う。
ぼくが大きくなったから、妹の絵本になったのかも。
実はかわいくないかわいくないといいながら、
はじめからずっと、
お兄ちゃんは妹をかわいいと思っているのかもしれない。
『うちのパパがせかいでいちばん!』
ハリエット・ジイーフェルト、アマンダ・ハーレイ絵、
きむらゆういち訳
『うちのパパがせかいでいちばん!
パパのつかいかた33』
個人的お気に入り度:★★★
- ハリエット ジィーフェルト, Harriet Ziefert, Amanda Haley, きむら ゆういち, アマンダ ハーレイ
- うちのパパが世界でいちばん!―パパのつかいかた33
トランポリン、フタあけ機、エアコン、
目覚まし時計、タクシー、・・などなど、
お父さんについている、33の機能を紹介する絵本。
パパってこんなに便利だったのね、とびっくり(笑)
すべてのお父さんに33の機能があるとは限らないし
この絵本に載っていない機能付きのお父さんもいるかもしれないが、
子どもはこの本をきっかけに、
自分のお父さんについてどんなすてきな機能があるか
考えてみると楽しいかもしれない。
『イボイボガエルヒキガエル』
三輪一雄
『イボイボガエルヒキガエル』
個人的お気に入り度:★★★
- 三輪 一雄
- イボイボガエルヒキガエル
ヒキガエルを見つけた子どもたちが、
アマガエルはflogだけどヒキガエルはtoadだよね、とか、
おたまじゃくしも宇宙人みたいでぶきみ、
なんて好き放題言う。
そのうち、天の声みたいないわゆる地の文が、
アマガエルとヒキガエルをくらべた解説を始め、
アマガエルは吸盤もジャンプ力もあるから
名ゴールキーパーになれるし、
色が変わるから忍者みたい、
でも、ヒキガエルはそういう特技はない。
などと、いちいちアマガエルとくらべて、
ヒキガエルのほうが劣っているかのように説明していると、
ヒキガエルが
「こらっ! さっきからだまってきいてたら、
アマガエルばっかりほめて、わしらメチャクチャやないかっ!!
(中略)
それに、わしは、ゴールキーパーにも、忍者にも、
気象予報士にも、なりたないわいっ!」
と怒り出し、
アマガエルより乾燥に強く、
毒で天敵を撃退できることや、
自動車にひかれるのはいかんともしがたいが
それでも種としてはしぶとく生きていく底力などを自らアピールする。
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まさかヒキガエル本人が出てきて色々教えてくれるとは思わず、
びっくりやら、うれしいやら(?)。
しかもなぜか大阪弁(?)なのがインパクト大。
本編もさることながら、
表紙、裏表紙をめくったところにある見返しの
「ガマガマ新聞」 その1、その2には、
ヒキガエルの豆知識が詰まっている。
日本にいる5種類のヒキガエルの名前や、
筑波山で催されるガマ祭りのこと
(8月。ガマの油売りの口上大会もあるらしい)、
ヒキガエルの置物は「客がひきかえる」で縁起がいいこと、
アマガエルにもよわいけど毒があること
(皮膚につく微生物をやっつけているらしい。石鹸いらず。便利だなあ)
など、勉強になった。
『新魔女図鑑』
角野栄子、下田智美絵
『新魔女図鑑』
個人的お気に入り度:★★★
- 角野 栄子, 下田 智美
- 新・魔女図鑑
『魔女のひみつ』
に続いて、魔女図鑑ぽい絵本をもう一冊。
その名もずばり、『新・魔女図鑑』 。
ツヤちゃんの若い(←たぶん)おばさん、エイコさんは
図書館にエドガー・アラン・ポーの『黒猫』を借りに行ったところ、
本物の黒猫が図書館の中を横切っていく。
黒猫が走っていった先で『魔女』という本が光っていて、
エイコさんは本の<扉>に描かれた扉を抜けて、
魔女のゾゾさんの家に。
好奇心の強いエイコさんは、魔女の何が知りたいのかと聞かれ、
「ぜんぶ。」と答える。
そして魔女のことを知りたくて図書館に来たわけじゃないのも忘れ、
ゾゾさんにつれられて、
魔女のことを色々と教えてもらう旅に出発するのだった。
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魔女という存在がどうやって生まれたか、
薬局や医師、産婆や祈祷師といった魔女の担った役割、
魔女狩りなどで虐げられた歴史、
魔女に関係するお祭り、使い魔や薬草のことなどを
エイコさんがゾゾさんに教わってきて、
帰宅後話をしている部分では、
ツヤちゃんと、魔女に仮装したり、
魔女のお茶を飲んだり、ハーブ料理を作ったり、
色々ちょっとずつやってみたりしている。
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草や木の生命力に学び、
赤ちゃんを授かり、無事に産み育てることや、
健康についての知識を蓄えていった魔女のルーツ
古くは「垣根の上にいる人」とよばれ、あの世とこの世、
見えないものと見えるものの境界に位置していた存在だったこと
(だからサンタさん同様、家の中と外の境界である
煙突から出入りするのだという。なるほど!)
など、
かなり観念的で深いなと思うようなことなんかも
わかりやすくまとめられていて、勉強になってしまった。
ストーリーのほうでも、
エイコさんがゾゾさんに会ったときに
ゾゾさんが掃除中のほうきに言っていた
「すみからすみまできれいにしてよ。
そうはいっても、よごれがぜんぶとれるってことはないけどね。
人の心配がなくならないのと同じように、よごれもなくならないものよ。
もっとも、どれがよごれで、どれがよごれじゃないっていうのも、
むずかしいけどね」
というセリフも、さりげないのになんだか深くて、
思わずメモしてしまった。
丁寧に細かく描かれた絵はかわいくてきれい。
『絵本 魔女のひみつ』
コリン・ホーキンス(とまじょたち)、岩田佳代子訳
『絵本 魔女のひみつ』
個人的お気に入り度:★★★
- おばあさんが(自分のか、近所のおばあさん全般かはよくわからない)
- 魔女かもしれないと思ったときの 見分け方、
- 魔女の子分のこと、家、おふろ、ファッション、
- 買い物、魔法の勉強、
- パーティ、飛び方、年中行事などなど、
- 魔女の日常生活や生態に迫る、ちょっとした図鑑絵本。
朝ごはんにはカエルのたまごでできた魔女プリンや
毒キノコつきトーストを食べ、
コウモリの血とベラドンナ(猛毒)、キツネノテブクロの絞り汁に
イノシシの油が入った飛び薬を使ってほうきで空を飛び、
歯が痛いときには死んだモグラを首からぶらさげる
という魔女達の魔女っぽい暮らしを解説しつつ、
金曜の夕方にはスーパーの買い物カートで
レジまで「一番乗り競争」をしたり、
親指を立ててバスを呼んだり、
学校の勉強だけでなく料理教室やパソコン教室にも
通ってがんばらないとエリートにはなれなかったりと、
意外にお茶目だったり、庶民的だったり、
普通の人間同様の苦労をしていたりする面も紹介されている。
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魔女はどんな家に住んでいるのだろう?
何を食べて暮らしているのか?
どんなおまじないを使うのか、などの疑問に答え、
お話に出てくるような怪しげなイメージの黒い魔女について、
かなり細かく紹介し、親近感さえ沸かせてくれる。
いわゆる民間療法にたけたそのへんのおばあさん的な魔女、
のイメージもあるけれど、
この絵本で紹介されているのは、
黒装束だし、おできを人にうつしたりするし、
普通の植物を抜いて毒草を植えたりするので、
若干ダークな方面の魔法も使う魔女にしぼられている。
扱うのが黒魔法だからか、なんにでも変身できるけれど、
白いハトや白ウサギには化けられないそうだ。
エコでいいなと思ったのは、
お風呂にシャボン草という草を使うこと。
泡立つから体を洗えるし、
植物だから残り湯をネギの栽培に使える。
魔女について沢山の豆知識が書かれていて、
勉強になった。
(知識を実際に使う場面はほとんどないだろうが^^;)
こまかいところでは、
・双子の魔女は魔力が倍
・相手が王子か海賊かでどんなカエルに変えるのかちがうこと
などは「へえ~」と思ったし、
プロフィールによると、著者はブラックプール生まれで、
今はブラックヒースに住んでいるそうで、
黒がらみの地名ばかりで魔女の絵本をかくのにふさわしいな、
と思ったりして、これもまた面白かった。
なお、最後のページには魔女と黒猫の絵の下に線がひいてあり、
「この線の上には、魔女にしかみえない、
ひみつのことばがかいてあります。
おばあちゃんには、みえるかもしれませんよ」
と書いてある。
一体なんて書いてあるんだろう?
とても気になる。
- コリン ホーキンス, Colin Hawkins, 岩田 佳代子
- えほん 魔女のひみつ
『むしたちのうんどうかい』
得田之久、久住卓也絵
『むしたちのうんどうかい』
個人的お気に入り度:★★★
- 得田 之久, 久住 卓也
- むしたちのうんどうかい
タイトルの通り、虫たちの運動会の様子を描いた本。
開会式にはトノサマバッタの園長先生があいさつ。
応援合戦は赤組は秋の鳴く虫たち、白組はセミたちが
盛大に盛り上げ、
かけっこやつなひきの合図はミイデラゴミムシのおなら。
かけっこのスタイルは飛んで失格になるものあり、
フンコロガシはフンをころがしながらとさまざまだし、
他にもとびっこ競争、ダンゴムシを玉にする玉入れ、
カマキリと蝶のダンスなど、
さまざまな競技が繰り広げられる。
閉会式のあとにはホタルの花火もあり、
充実した内容なのであった。
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いろんな虫たちが集まり、普段の敵味方に関係なく
運動会をエンジョイしているさまが感じられる。
バッタが飛んで失格になったり、
ミイデラゴミムシ(へっぴりむし)がスターターだったりと、
虫たちの特徴をとらえた競技のもようが面白い。
仲良く競技している中、
昼休みの終わりにオンブバッタにお昼に何を食べたか聞かれ、
カマキリが「ないしょ」と答えているのが笑えた。
お部屋に飾っておきたい絵本
新歌さんのブログ、「えほんのまいにち」 で、
ブログで絵本を100冊紹介された節目として
「みんなのえほん」 というイベントが始まった。
みんなで、お題に合った絵本を選びあうというこの企画、
第一回は「お部屋に飾っておきたい絵本」 。
飾っておきたいような表紙の絵本について、
コメントやTBを絵本好きな人々から募っている。
とてもすてきなこの企画に、ぜひ私も参加させて頂きたいと思います。
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私の現在飾りたい一冊はこれ。
- ダグラス ウッド, Douglas Wood, P.J. Lynch, C.W. Nicol, 加藤 則芳, P.J. リンチ, C.W. ニコル
- おじいちゃんと森へ
(過去記事はこちら → 『おじいちゃんと森へ』 )
図書館の絵本コーナーの表紙を見せて飾る棚にあって、
まず表紙に惹かれて借りてきたのを覚えている。
・・飾りたい一冊なのに持ってないんですよね・・(汗)
タイトルに「森へ」とあるし、
湖や森、夕焼けをバックに腰かけるおじいさんと孫。
木の棚に似合っていたし、
構図もなんだかかっこよい。
もちろん中身もなんとなく感動させてくれそう、
と期待させてくれる表紙だから借りる気になったのだし、
中身も期待を裏切らない。
生命あるものはみんな祈っている、
というおじいちゃんの教えてくれたことを、
孫が最後には理解するというお話。
とても重要で深いテーマのお話で、感動できた一冊である。
森の中の絵もきれい。
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実は、15冊ぐらい候補があって、かなり迷った。
(「飾りたい一冊はこれ。」
と入力してから、さらに20分ぐらい考えてしまった(笑))
うちには本を飾る棚のようなものがないのだが(普通の本棚のみ)、
今回飾りたい絵本を選んでみて、
もしそういうものを買ったり作ったりするときは、
10冊ぐらいは飾れないと困るということがわかった。
でも実際10冊飾れるスペースがあったら、
「30冊飾れたらなあ」って思うんだろうなあ^^;
『なが──いなが──い手紙』
エリザベス・スパー、デヴィッド・キャトロウ絵、
青山南訳
『なが──いなが──い手紙』
個人的お気に入り度:★★★★
- エリザベス スパー, Elizabeth Spurr, David Catrow, 青山 南, デヴィッド キャトロウ
- ながーいながーい手紙
何年か前に読んだものを再読。
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お母さんのお姉さんの「ヒネクレッタおばさん」 は、
遠い町に独り暮らし。
さびしくて仕方ないのか、
お母さんは先月も手紙を書いたのに、
おばさんはもう、
「私を忘れちまったのかい?」 なんていうハガキをよこした。
発奮したお母さんは、
ぜったい忘れないような、長~~い手紙を書いてやる、と決意。
すてきな羽根ペン(これも長い)をもって松の木の机の前にすわり、
朝から晩まで、くる日もくる日も、
長──い長──い手紙を書き続ける。
キャベツのこと、クロッカスのこと、ソーセージのこと、
生まれた赤ちゃんのこと、とうもろこしの値段のこと、
エトセトラエトセトラ。
書きはじめてから一年もたとうとしていたある日、
とうとうお母さんは手紙を書き上げる。
インクと紙がなくなったのだ。
千枚に及ぶ切手を貼り、ついに手紙はおばさんの家に出発。
しかし途中竜巻に巻き込まれ、
手紙はバラバラになって宙を舞い、
手紙を待つおばさんの上にどさどさと降ってくる。
おばさんは生き埋めになってしまうのだった。
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その後の展開が素敵。
詳しくは書かないが、
おばさんの妹であるお母さんひとりの心遣い(長い手紙)から、
町の人の親切に触れる機会が生まれ、
おばさんはもうひとりぼっちではなくなるのだ。
でも、その人間のあたたかさもさることながら、
私が一番好きなのは、ほら話的に壮大なところ。
おばさんも言っていたが、手紙が度を越して、
「災害」になってしまっているところがすごい。
絵もきれいで、面白くてすてき。