私は歴史の上に立っている | はねまるの羽頂天ブログΖ

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だらしなくたっていいじゃないスか


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この空が爆煙に包まれた時代を私は知らない・・・

話では知ってるけど・・・それはこの土地に来て触れた物じゃない。

私は自分の事だけ考え、自分の会社の事で追われて来た。

それでいいんだと思う。

みんながまず自分の事を目一杯見つめながら生きる。

それでいいんだと思う。


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とある学校の教室。

当然冷房なんてなかった。

大事そうに片付けられた壊れた太鼓やギター。

机の上には三線が置いてある。

そう、ここは沖縄。昔唯一米軍が上陸し本土決戦が行われた土地だ。

内地に攻め込まれるのを遅らせる・・・時間稼ぎに使われた命達が眠る土地。

2009,5,29

私は高校時代の先輩にお願いしてこの学校を見学に来た。

「珊瑚舎スコーレ」

ここでは「中等部、主に不登校などをサポートする教室」

そして「高等部、点数で評価できない学びの教室」

さらに「専門部、琉球・沖縄・アジアと自分を見つめる学びの教室」

そして・・・

今回私が見学したのは 「夜間中学部(義務教育未修了の人が対象)」

小学校にすら通えなかった人達の学校。

家の事情で行けなかった若い人もいたが、9割以上が高齢者。

そう、前記した太平洋戦争沖縄戦・・・終戦後の混乱期

義務教育を受けられなかった高齢者が多く通う学校だ。

「始まりの会」 で私達見学する者が生徒さん達に紹介されるのだが

おばあちゃん達の嬉しそうな視線に少し照れ臭かった。

「恥ずかしい」 って感情は正直、想像範囲で軽く考えてたから・・・


苦しい時代にちっぽけながら会社を経営して来た。

そんなちっぽけな自尊心はこの直後、見事に打ち砕かれる・・・

琉球大学の学生さんもボランティアの為の見学に来ていた。

学校の方に 『どうぞ、自由に教室に入って見学してください。』

そう言われて3つの教室に分かれた1年生、2年生、3年生の内

私は1年生の教室の中に入った。

国語の授業中。

先生が黒板に 「ひらがな」 を書いて 「よう音」 を教えていた。

簡単に言えば小さい 「や」 「ゆ」 「よ」 の使い方。

机が並び、どこの学校にもある小学1年生の教室の風景。

普通と違う所は生徒が皆高齢者だと言う事くらい。


「い段」 に付ける小さな 「や、ゆ、よ」

「き、し、ち、に、ひ、み、り」 に付くよう音。


先生に質問され、みんな元気よく手を挙げる。

当てられたのは一番前に座るおじいちゃん。

照れながら前に出る。

そして黒板に決して綺麗とは言えない「ひらがな」を書く。

クラス中から大きな歓声が上がる。正解だ。

頭をかきながら誇らしげに席に着く生徒。

もう一度言う。 80歳近いおじいちゃんだ。


この時点で私の想像からすでにかけ離れていた。

教科書もボランティアさんの手作りで

生徒は皆筆箱とノートを机の上に出し、真剣に授業を受けている。

鼻の上辺りが急に熱くなる・・・

なんで?かわいそうやから?意地らしいから?

違うねん・・・何でかわからんねんけど・・・涙が出そうになって・・・

必死に堪えた。 「泣いたら失礼や!泣くのは優しさじゃない!」

何度も心の中で自分に言い聞かせてた。


先生は突然 『見学の方、どうぞ教えてあげてください。』

私は一番奥の席まで行き、4つの机の横に立った。

教科書の問題を解く時間が来た。

先生は順番に皆の机の間を歩いて見回る。

「石屋」 と 「医者」

をひらがなで書く勉強から問題へ。


「しゃ」 「しゅ」 「しょ」 のつくことばをかいてみましょう。

当然教科書に漢字は少ない。

私が担当した中で後ろの席に並ぶ2人は答えを書き、私に話しかける。

『先生、書けました!』 って私を見上げ、誇らしげに・・・

隣りの生徒は私に 『私の方が早く書けた!』 って。

目をキラキラさせて・・・年は70歳近いおばあちゃん。

私は 「ハッ!」 とした。

立っている事にだ。

慌てて床に膝を付いて目線の高さをを合わせた。

おばあちゃんは筆箱から赤鉛筆を出し、私に手渡す。

『先生!丸して!丸して!』

俺はあなた方の大切な教科書に○×を付けられる程偉くないよ・・・

ほんと・・・必死で涙堪えた。

『先生!次の問題もやっていいか?』

「うん。いいよ!挑戦してみよう!」 そう答え

私は赤鉛筆を受け取って 「すごいすごい!全部正解やん!」 

そう言いながら丸を付けた。

なんと弱々しい文字か・・・指はカチカチな上に鉛筆で真っ黒に・・・。

何度も消しゴムで消した跡・・・

そこへ先生が来て 『前の席をお願いします。ここが出来たらあなたは先生だ!』

先生の言葉の意味はすぐに理解できた。

全く答えを書いていない。

私が見る4人の内、前列の2人のおばあちゃん。

私から見て左側のおばあちゃんは既に書いてた。

でも恥ずかしそうに教科書を手で隠している。

そのくせ赤鉛筆を出して待っている。

私は 「書けましたかぁ?丸付け、少し待ってね。」 そう言って

右側のおばあちゃんの問題を教えにかかった。

教科書の他にメモ用のノートが開かれていて・・・

そこにもたくさんの消しゴムの跡・・・

「いしや いしゃ いしや いしゃ」 って書いてある。


おばあちゃんは恥ずかしそうに私に話す。

『答えがわかりません。』 って。

「しゃ、しゅ、しょ」 の付く言葉を書くのが問題。

私は膝をついたまま教えようとした。

口をハッキリ開き、大きな声で 「しゃ、の付くもの何があるかなぁ?」

ゆっくり問い掛けるとおばあちゃん、嬉しそうに 『しゃぼんだま』 って。

私は 「そうそう!しゃぼんだまで遊んだでしょう?」 と答える。

おばあちゃんは何かを思い出すようにニヤニヤしてた。

「はい、次~。しゅ、の付く言葉は?」 

おばあちゃん恥ずかしそうにノートに 「し」 「ゆ」 って書き始めては消す。

私は 「歌は好き?」 って聞くと大きな口を開けて笑いながら

『歌手~!』 私も嬉しくなって・・・ 「好きな歌手はいる?」 って聞いた。

おばあちゃん、また何かを思い出したようにニヤニヤしてた。

「じゃあ次っ!しょ、の付く言葉は?」 って言うとすぐ

『しょうゆ!』 そう言って大笑いしてた。

その時左側のおばあちゃんが自分の手をどけて教科書を見た。

私はそっちも見て先に赤鉛筆で丸を付けた。

そのおばあちゃんは 「しゃこ」 「しゅうじ」 「しょゆう」 って書いてた。

車庫、習字、所有・・・全部に 「すごい!全部正解や~!」 って丸を付けた。


さて右側のおばあちゃんを見るとノートの方に

「しゃぼんだま」 「かしゅ」 「しょうゆ」 っていっぱい書いてるのだが

書けないの・・・。

小さい 「や、ゆ、よ」 がどこに入るか解らない・・・

私は大きな声でおばあちゃんと一緒に

「し、や、ぼ、ん、だ、ま」 「か、し、ゆ」 「し、よ、う、ゆ」

1文字づつ何度も繰り返しながら徐々に 「しゃ、しゅ、しょ」 の発音に変えていった。


『わかった!』 1つづつ教科書に書いていく。

何故にノートに一杯、それも書いては消し、消しては書き・・・

教科書を汚したくないのだ。

教科書に書くときに失敗して書き直すときの悔しそうな顔・・・

またそれを悟られないようにしようと強張る顔・・・

何とも言えない・・・何度も言葉が詰まりそうになった・・・。

涙を堪える方が大変で・・・


無事に 「しゃぼんだま」 「かしゅ」 「しょうゆ」 って書き終えた時

おばあちゃん 『書けた!イヒヒ・・・よかったぁ!先生ありがと!』

そう言いながら涙ぐむの・・・。

もう・・・たまらんかったよ・・・頭痛する程涙を堪えた・・・


涙を堪えながら 「すごいね!すごいね!」 って言いながら丸を付けた。


今までの経営・・・新人で解らない者にこれだけの気持ちで接した事って

あったろうか・・・自問自答した・・・。

ハッキリ言える。 答えは 「NO」 だ・・・。

ネタばらしになるが今書いている 「背中に羽があったらなぁ」 

この話の 「結」 に書くつもりだった「目線を同じ高さにして話せるか・・・」

って言葉が・・・この時何度も頭に出てきた。


そして先に丸を付けた左側のおばあちゃんが

もじもじ私に何か言いたそうにしてたので膝をこすりながら移動し

「どうしました?」 って聞くと顔を真っ赤にして

小さな声で 『しょうゆ。しょうゆ。』 って言ってた。

初めは意味が解らなかったがすぐ気付いた。

さっきの 「所有」 だ。

本人は 「しょうゆ」 って書きたいのに 「しょゆう」 って書いていたのだ。

私はてっきり 「所有」 って勝手に解釈して丸を付けた・・・。

ほんとに・・・なんで気付いてやれないのか・・・ってへこんだ・・・。


おばあちゃんは隣りで 「しょうゆ」 って書いてるのを見て間違いに気付いたらしく

正直に私に 『さっきのは丸じゃないね。』 って・・・。

もうね・・・ほんまに・・・あかんの・・・涙がずっと眼の奥でね・・・


先生の声 『はい、みなさん!1人づつ何て書いたか発表しましょう!』 

端から順番に発表。

今回私について来てくれた友人が担当していたおばあちゃんの番。

まだ答えが書けていないようで・・・

顔を真っ赤にして・・・慌てて・・・

『出来た!!』 って喜び、泣きながら発表するのだ。


私が担当したおばあちゃん達も大きな声で

『しゃぼんだま!かしゅ!しょうゆ!』 歌手の所で

みんなが 『そうそう!かしゅもあったぁっ!!』 歓声が上がる。


次の問題・・・「このえはなんでしょう」

誰が見ても解る 「金魚」 が書いてある。

私の担当したおばあちゃん達は嬉しそうに 『きんぎょ!!』 って。

解答欄には四角のマスが4つある。

さて、これまた 「きんぎょ」 って書けないのだ。

さっきと同じようにみんなに教えた。

「き、ん、ぎ、よ」 何度も繰返し 「き、ん、ぎ、よ」 って。

ノートにいっぱい書くおばあちゃん。

「ぎ」 を小さく書く・・・。

私は 「ううん。き、ん、ぎ、よ。き、ん、ぎょ。き、ん、ぎ、よ。き、ん、ぎょ。」

『わかったぁ!』 またおばあちゃん涙目になって喜ぶ。

私は 「すごいなぁ!できたぁ!」 赤鉛筆で○。


そんな中で一番前のおじいちゃんが笑われている。

おじいちゃん、すごく恥ずかしそうに先生に 『間違い?間違い?』

って聞いてた。

おじいちゃんが4マスに書いたのは 「おさかな」 だった。

あのね・・・ほんまに・・・もうあかん・・・ってくらい涙堪えた・・・。


こんなにも・・・こんなにも文字が書けない・・・って。

何より、こんなに学校が好きな生徒達・・・って。


しかし今いる生徒さん達は学費が払える人達。

学校に行きたくても行けない高齢者達もたくさんいる。

私達は歴史の上に立っている。

そりゃ 「孫や子供に教わればいい。」 「もっと悲惨な人もいる。」

「私も学校なんて行ってないし、行けなかった。」

色んな意見があって当り前。

でも今回私が居たその場所のその時間には

私の目の前で起こっている現実として見た。


私の母親も小学校しか出ていない。

だから還暦を過ぎても小学校の同窓会を楽しみにしている。

それも私の目の前にある現実。


今回のこの夜間中学校。

市が援助を打ち切った・・・。

学費は倍以上になった。


私達が見たのはほんの一瞬。

365日の中の1日のたった1時間程度・・・。

何が解り、何が出来ると言うのだろう・・・。

羽ばたけ!ぴぃちゃん 9話 にも書いたが

【こんな事を言いながら全ての悲しい子供たちに救いの手を伸ばす事なんて出来ない。

それは冷たい大人の意見だとは思わない。

ほんの身近にいる数人の「人間」だけでいいはず。】


プロ野球チームのキャンプのために新しい球場の工事も進んでた。

色んな所で今工事が進んでいる那覇市。

そこにお金を投入する事は、私は構わないと思うのだ。

那覇市にも建設業で生計を立てている人達がいるのだから。

ただそれが完成し、多くの観光客が訪れ

そこで集まるお金が沖縄を潤せばいいのだと思う。

それで儲かったら役人さん・・・

少しでいい。 ほんの少しでいいよ。

今回の夜間中学校等の援助を再開してやってくださいよ。


反戦運動のつもりじゃない。

まぁ戦争を支持する気もさらさら無いが・・・

でも間違いなくそれはそこで起こった歴史なのだ。

ひめゆりの塔でも涙が溢れた。

この夜間中学校で堪えた涙も混じっていただろう。

おばあちゃんたちの顔が頭から離れんかった・・・。

悲惨な時代だったと思う。


忘れてはいけない事だが、やっぱり前に進まなあかんのよ。

明日の未来をしっかり生きないとあかんのよ。


そう私達はそんな歴史の未来に生きている。


私の会社も・・・家族も・・・友人も・・・

全ての大切な物は

そんな歴史の上に存在する。


私は歴史の上に立っている。

死ぬまで立っている。


実際触れたことの無い者の評論は聞くつもりはない。

怖気づいて、部屋にこもって、自分にとってだけ都合のいい世界で

難しい知識ばかりを掲げ

あたかも正義のように・・・そんな話は聞いてるヒマもない。

熱いのか冷たいのか・・・その熱さや冷たさはどんなものか・・・

実際にほんの少しでも触れた心と話がしたい。

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