「ねぇねぇ、おとうさんは、息すうのとはくの、どっちがすき?」
仕事が続いて、ようやく迎えた休日の朝。蒲団の中でまどろんでいたら、
こういって息子に起こされたんだよー。
こういう瞬間のがあるから、毎日を頑張ってるんだ。
と、話してくれたひとが、息をひきとりました。
この話をしてくれたのは、もうずいぶん昔の事で。
そのときに、天才かな!
とわたしが思った、幼かった子も、もう制服が似合う年頃になっていて。
あの時結局、彼が、吸うのと吐くの、どっちが好きっていったのかは、わたしは忘れてしまったし。
彼の最後の呼吸がどんなものだったのかは、わからないのだけれど。
話してくれたときの、にごりのない笑顔ははっきりと思い出せるし、忘れないと思います。
息をすう、はく、そのとき身体は動いていて、こころはそこにある。
嬉しくても、哀しくても、楽しくても、苦しくても。
すごく、うつくしい。