チケット誰扱いにすればいいのか問題 | 辻明佳のナイフとフォーク

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旅、お料理、ときどき女優。

芝居をよく観たり、舞台によく出たりするようになると、演劇関係の知り合いが増えてきます。
そこで避けられないのが
「チケット誰扱い問題」

劇場はチケットが売れてなんぼの世界なので、
役者さんに対して、その役者さん扱いで売れたチケット一枚につきいくら役者さんに還元しますよ、という「チケットバック」の制度をもうけているカンパニーがほとんどです。
かなりな高給取りの役者さんでも、出演にあたって、ほとんどはチケットバック制をからめたギャラ交渉がなされていると思います。

自分も舞台に出る側の人間なので、その予約1名様ぶんのありがたさ、チケット一枚ぶんの重み、は身にしみてわかっているつもりです。
ちなみにむかしは「よいものを作ればいいのだ」と思ってて、集客にあんまり関心がなかったんですけどね。それじゃだめですね。よほどの抜群の天才でもない限り集客の努力はしないといけませんよね! 演劇で生きていくなら。

で、知り合いが複数人出ている舞台を見に行く時、毎回立ちはだかるわけです。
「チケット誰扱いにしたら角がたたないのか問題」が。

お客さんでも、そこらへんの事情をちょっとでもご存じの方は
誰から買ってあげればいいのか?
悩むようです。

とても面白くて、知り合いの人数分リピートしたくなるような舞台とふところ具合だったら問題はないのですが、そうもいかない、一回しか見に行けないという場合、どれがベストな答えなのか。私が実際に出くわしたいろんなパターンをもとに考えてみました。


0. 友達を連れていく!

→はい、最初にして最強の解決策出ました。
これがやれるならこれ以上の案はなにひとつありません。
チケット買いたい役者が2人いるなら、自分の他にもう一人連れていく。3人いるなら2人呼んでくる。で、それぞれ別の役者扱いで予約してもらう。
これが一番役者としても嬉しいし、ありがたいし、波風立ちません。神と呼ばれます。マジで。


でも「舞台に呼べるような友達いない」という人もいるでしょう。
「観劇オタクな自分を知り合いには隠しておきたい」なんてこともあるかもしれません。
その場合、以下のような案が考えられます。


1.  誰が一番かなんて決めらんないからいっそ「劇団扱い」にする。

→そういうお客様よくいらっしゃるし、平和っちゃ平和ですが、役者(とくに劇団員ではない客演さん)にはほぼメリットがない予約パターンです。
劇団扱いで集まったお金は全て、全体の予算に回されるので、劇団は潤います。役者には一円もいきません。
ちなみに、「劇団扱いのお客さん」や「当日券のお客さん」は、誰かの知り合いだから仕方なく、ではなく、純粋に舞台の内容に惹かれて来てくれた、と考えることができるので、劇団としての人気、実力のバロメーターにはなります。
劇団を応援したい場合はよいと思います。


2. いちばん先に宣伝をくれた役者扱いにする

→波風立ちにくいです。ただ、宣伝のしかたは人によってけっこう様々で、早い人はものすごく早く、スロースターターはものすごく遅いので、結局毎回同じ人から予約しちゃうなー、というパターンにもなりがちです。


3. いちばん仲がいい or 関係の深い役者扱いにする

→演劇関係者がもっともよくやるパターンではないでしょうか。同じ劇団員だから。いちばん多く共演したから。共演回数は同じだけど、この人とは夫婦役だったから。などなど……
これも波風立ちにくいかと思います。
観る専門のお客さんなら「観劇のきっかけを作ってくれた役者」「プライベートでも友達」などでしょうか。
一方、もっともいわゆる「しがらみ」っぽくなりやすいパターンでもあるかも。


4. 純粋にいちばん応援したい役者扱いにする

→結局はあなたがほんとうにお金を落としたい人から買うべきなんです。演技が好きだから。顔が好きだから。客出しの感じがよかったから。すごく丁寧なDMをくれたから。いいと思います。特に、知らない人から急に自分扱いで予約がきたら。役者は覚えてるもんです。めちゃくちゃ嬉しいです。生きる力をもらえます。ほんとですよ。
ただ、露骨に乗り換えてしまうと、役者によってはかなり波風立ちます。
「えっ、今までずっと私から買ってくれてたのに、今回は〇〇ちゃんからなんだ」というのも、役者はけっこうよく把握してたりするので、
役者によっては、本番前にイヤミを言ってぎくしゃくしたり((((;゜Д゜))))、逆に気を遣って扱いを戻したりすることもあります。
そのへんはキャバクラや遊郭と同じだなー、と思ったりします。男女関係なく。(もちろん、そんなの全然気にしないよー、という役者さんもいます(*´з`*))


5. 知り合いみんなでワリカンにしてもらう

→チケットバックがたとえば一枚1000円ならば、5人で200円ずつとかに割ってもらう。制作さんはとてもめんどくさいし、忙しい役者にも負担はかかりますが、公平ではあり、私はあんまり悪い気しません。
チケットの扱いは、単に金銭的なメリットだけでなく「自分は何人呼べる役者です」と劇団側(つまり、雇用主ですな)に己の価値を示す役割もあるので、究極に公平にしたいなら、「チケットバックも予約の扱いもみんなでわけて」とよく伝える必要があります。一人ぶんの扱いをどう分ければいいのか謎ですが……もちろん、こういった融通がきかないカンパニーもあります。


6. 「扱いはおまかせします」と添える

→考えを放棄するパターン。ちなみにバッコスでは、こういうお申し出の場合は劇団扱いにしたり、じゃんけんで1人に絞ったりしていました。どちらも、お客様の意図とは裏腹にちょっとくやしい気持ちが生まれる場合も。


7. チケットは誰かから買って、他の知り合いには軽いプレゼントをする

→プレゼントより、多くの役者はチケット一枚の方が嬉しいですが、誠意は伝わります。


8. 知り合いの人数分、チケット代を払う

→びっくり案ですが、実際にそういう方を知ってます。もと共演者が2人いたら、一回の観劇でたとえば3000×2=6000円払ってくださるのです。ありがたいですが、恐縮します……


こんなとこでしょうか。
私の考えでは、ベストは圧倒的に0.として
うーん。。。
5は公平だけどみんながこれやると死ぬほどたいへんだからなあ。。。
うーん。。。
7.かなあ。。。
お知り合いではない方からの終演後のプレゼントって、どんなものでもめちゃくちゃ嬉しいもんな。。。
7.でジャブ打っておいてからの4.は最高に嬉しいなあ。。。
でも乗り換えられた側だったら悲しいなあ。。。

うーーむ
難しい!!
結局、みなさん、できるだけ劇場にお友達を連れていきましょうね、というところで、ここはひとつ
むずい!