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代物弁済契約に関する知識の整理です。
実は「不動産物権変動」の話が混ざってくるので、結構いいネタじゃないかと思ってます。
よかったら。
【事例】
AがBに対して1,000万円の金銭債務を負っている場合において、Aは、Bとの間で、1,000万円の給付に代えて自らが有する甲土地を給付する旨の代物弁済契約を締結した。
1.代物弁済について
民法482条は、次のように規定しています。
「弁済をすることができる者(……弁済者……)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、
その弁済者が当該他の給付をしたときは、
その給付は、弁済と同一の効力を有する。」
まず「弁済者が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした」とありますから、ここで代物弁済契約が成立することが分かります。
つまり、代物弁済契約は「諾成契約」なんですね。……代物弁済契約の成立時
※なお、「弁済者」は、債務者と同一人であるとひとまず考えちゃってください。
次に「その弁済者が当該他の給付をしたとき」とありますから、代物弁済契約が成立した後に、弁済者が契約のなかで約束した給付を債権者に行ったときの話です。
この給付は、「弁済と同一の効力を有する」と規定されています。
つまり、代物弁済契約が成立するだけで、直ちに元々負っていた債務が消滅するわけではなく、約束した給付を実行して初めて債務が消滅すると定めているわけです。
ここまで書くともうお気づきになると思いますが、代物弁済の話というのは、実は「代物弁済契約が成立する時」と「元々の債務が消滅する時」の二段構えになっているんですね。
まずは、この点を頭に入れておく必要があります。
2.代物弁済により給付される不動産の所有権の移転時期
では、ここからは上記【事例】なんかも使いながら整理していきましょう。
まず最初に問題とするのが、AがBに給付するとした甲土地の所有権はいつ移転するのかという問題です。
ここで思い出してほしいのが、民法176条の内容です。
民法176条によれば、「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」とされています。
契約の場合には、契約こそが「当事者の意思表示」なわけですから、契約が成立した時点で、物権の設定及び移転の効力が生じることになります。
したがって、代物弁済契約の場合には、「代物弁済契約が成立する時」に給付の目的となった物の所有権が移転することとなります(最判昭57.6.4)。
【事例】の場合、AB間の代物弁済契約が成立した時点で、甲土地の所有権は、AからBに移転することになります。
3.債務の消滅との関係
では、Aが元々負っていた1,000万円の金銭債務はどうなるのでしょうか。
先述のとおり、甲土地の所有権は、代物弁済契約が成立した時点ですでに移転しているのですから、この時点で金銭債務を消滅させてもよさそうです。
しかし、判例はそのようには考えません(最判昭40.4.30)。
先述のとおり、代物弁済契約の話というのは、「代物弁済契約が成立する時」と「元々の債務が消滅する時」の二段構えになっています。
ですから、両者を同じタイミングにそろえる必要はありません。
それに、【事例】のような不動産の事例の場合、「不動産の二重譲渡」の問題が残っています。
そのため、甲土地の所有権が移転しただけでは、Bの甲土地の所有者としての立場はまだまだ不安定であるといえます。
何が言いたいかというと、Aが元々負っていた1,000万円の金銭債務を消滅させてもいいといえる状況では、まだないというわけですよ。
甲土地の所有権が移転しただけで、Aが「他の給付をした」と評価するのはさすがにおかしくないかというわけです。
債権者Bとしても、そんな不安定な状況下で1,000万円の金銭債務が消滅するというのは到底納得いくような話ではない。
そこで判例は、【事例】のように不動産を給付するという場合には、代物弁済の目的である不動産について対抗要件である登記を備えることまでやって初めて「他の給付をした」といえるとしました(最判昭40.4.30)。
つまり、AからBに、甲土地の所有権移転登記を行ってようやく1,000万円の金銭債務を消滅させようじゃないかとしたわけです。
4.まとめ
以上のように、代物弁済の場合、「代物弁済契約が成立する時」と「元々の債務が消滅する時」の二段構えで考えることになります。
問題を解く際も、上記二段構えのうち、どちらの段階の話を問うているのかを確認するように注意してみてください。