山口洋子をご存知だろうか。

一世を風靡した銀座の高級クラブ「姫」のオーナーであり、五木ひろしの数々の大ヒット曲を生み出した作詞家でもあった。


酒場出身者が描いた小説は、さまざまな実体験エピソードが盛り込まれていて面白い。

男性作家では半村良。

女性作家では山口洋子。


山口洋子が書くものは、概ね文体も性格も男っぽい。

生き馬の目を抜く銀座で、一流店を維持していくだけの器量があるのだから、男勝りでなくてはやっていけない。

反面、普通の女よりもずっとおんなっぽい。

嫉妬、虚栄、意地、駆け引き、お洒落、嘘、涙、献身、欲望。。。

女としての濃度もずっと濃くなくては、修羅場もくぐれないし魅力もない。

男っぽくて女っぽくて人間ぽい。(笑)


この小説は、千束圭太という、お金にも女にも不自由しない遊び人風の作曲家が主人公。

男の主人公という設定なのだけれど、男と女の恋愛仁義や哲学は、作詞家・山口洋子の分身でもある。


山口洋子の凄いところは、女を冷静に客観的に視ている点である。

女を「おんな」として視る目は、長年水商売をやってきて、無数の女たちを商品として見てきたせいだろうか。

だから、彼女が描く「おんなたち」は、妙に生臭くしたたかで物哀しい。

そこには、男たちが女の上に描く理想や都合の良さなど、微塵もないのだ。


<何をいっているのだ。圭太は内心で冷笑した。

深夜に単身で男の部屋を訪れるのは、そのつもりとしか解釈のしようがないじゃないか。男と寝るのに、いちいちもっともらしい理由をつけなければならない博子は、哀れで心の貧しい女だ。>



それにしても、作詞家だけあって、何気ない言葉の用い方には唸ってしまう。

なによりも技巧的に巧い。

プロの言葉屋は、泣かせどころを充分心得ているのである。




男の極楽

山口 洋子
男の極楽―千束圭太日記


半村 良
忘れ傘



編集後記

昔、半村良の大ファンだったんです!

そのうち書きます^^;

(そのうちっていつやねん!?)