双眼鏡紹介その22(最終更新日7/2) | ガンフロの星雲星団観望記

ガンフロの星雲星団観望記

好奇心旺盛な私の書き放題記です(^^;


大型双眼鏡を使って、山奥などで星雲・星団や、すごく遠~い銀河などを見て楽しんでいます。
天の川が見えるような満天の星々の中を、大きな双眼鏡で巡るひとときは、星空旅行をしているようで最高です!(^^)

ikon WX10x50IF。

 

 

昨年の胎内まつりで、プロトタイプとして初登場したのを知ってすぐに、ニコンに電話しました。「私は必ず買うから高価でも絶対に市販してほしい」、「製品化にあたっての妥協は絶対にしないでほしい」、「接眼のマイナス側の補正は最低でも-7Dを超えるようにしてほしい」、「このような製品を待っている人は必ずいるので売れると思います」などと、好き放題伝えたのを覚えています(笑)

 

製品化されたこの双眼鏡は、重箱の隅をつつくような欠点探しが無意味ではないかと思うほどに、とても気持ちの良い見え方をします。広大な視野の中は、色ずれや破綻の極めて少なく、また非常にシャープな像で満たされています。一度に見える情報が圧倒的に多いので、見たい対象を見ているというより、対象を含む景色を見ているという感じが一層強く、そういう意味でも、今までになかった見え味を提供してくれています。広いだけでなく品位がある…そういう双眼鏡です。像質はニコンを感じさせるもので、基本はEDGを踏襲していますが、やはりEDGとはレベルの違いを思い知らされます。WXに慣れると、見かけ視界60度(旧表記)台の双眼鏡は視野が窮屈に感じますので、なんとも罪作りな双眼鏡でもあります。

 

私がインプレッションすると、だらだら長く書いてしまうので、今回はできるだけ簡潔にいこうと思います。色収差は、それが優秀なEDG8x32を超える補正度合いで、その量も3分の1ぐらい(もっと少ないかも)しかありません。EDレンズ3枚の恩恵を十分に感じることができます。EDGとWXの間には簡単に埋まらない差を感じます。開発費や材料費の枠を取っ払わないと超えれない壁を、ヒョンと飛び超えてしまったようなスッキリした見え味です。200~300メートル先のマンション通路に上下左右に並ぶ蛍光灯や、炎天下の昼の景色、煌々と輝く月などを見ていても、色ずれをほとんど意識することなくなりました。少々あっても意識しないレベルになっているということです。中心から離れるにしたがって少しずつ色ずれが見え、中心から6割ぐらいで一度最大になり、7割を超えると薄く広い出方に変わりますが、全体的にその量は非常に微量です。炎天下の反射の激しい景色で、色収差が気にならないのは初めてで、本当に気持ちの良いものです。

 

キリっとした十分なシャープネスがあり、解像度などで10x50FMTと比べたいところです。月のクレーターもシャープに描写しますし、広い視野の中に浮かぶ月のぽっかり感も臨場感があります。繰り返しになりますが、WXは周辺までの破綻が半端なく少ない。そして色収差も極少なので、そういう意味では全面良像という過大広告的な表現をしても怒られない?レベルにあると思います。無限遠にピントを合わせると100mぐらいから以遠全てにピントが合います。この深い被写界深度が、視野内の情報量を上げている要因のひとつになっています。透明度の高い昼の街並みなどは、全てにピントが合い、広い視野の隅々まで情報がビッシリと詰まっている感じがして爽快です。

 

透明度の高い日に景色を見ると、コントラストがとても高いのが分かり、街並みや緑の木々の各色が鮮明に目に飛び込んできます。透明感が素晴らしく、この点に於いても今までのニコン双眼鏡の天井を一気に、しかも大きく打破したという感じがします。ヌケのいい美しい世界はしばらく見とれてしまうほどです。WXの色表現は濃厚とまではいかないものの、しっかりとした色乗りで、葉の緑色なども生命感をもって見せてくれます。ただし薄黄色の着色があり、逆にみるとEDGはWXに見比べ少し白青っぽく感じます。薄黄色の着色を気にされる方は、色の正確性と密度が高い7倍を選ぶ必要があります。もちろん10倍でも私は気になるほどではありませんが、EDG8x32と見比べると着色は明らかです。次の画像は左がEDG8x32で右がWX10x50IFで同じ範囲をトリミングしています。iPhoneで接眼側から撮影していますので、カメラ側で補正が入って正確ではありませんし、誇張もされていますが、見た目の差(色やコントラスト)などの雰囲気の違いは出ていると思います。WXの煙突に糸巻き歪がはっきりと出ていますね。

 

 

糸巻き歪は視野の5割を超えるとはっきりと確認できて、周辺で最大となります。ニコンプラザで見たときは、糸巻き歪が残りすぎと思いましたが、少し改善されているような気がします。7倍の糸巻き歪はとても少なかったのを覚えています。コマ収差もよく抑えられていますし、視野外の強い光源のゴーストも出ません。また位相差コーティングの質が良いのか、稜線の加工精度が抜群なのか、強い光源にでる光条が、ほぼ判別ができません。とにかく細かいことを気にせずに安心して見続けられる双眼鏡です。

 

接眼の見口は6段階(0段~5段)で高さを変えることができます。10倍で9度もある視界全てを見るためには、0段~2段で使用することになります。3段目まで高くすると、視野環に近いところがケラれます。正直3段目以上なら見かけ視界は7倍とあんまり変わらないような気がします。また0段~1段目では見口に目の周りをくっつけると、アイレリーフに満たないようで、薄暗い影が発生しやすくなります。裸眼では2段目まで引き出して、見口にピッタリ目の周りを付ける(とても肌触りのよい見口です)と像が安定し、視野環までぎりぎりケラれずに見ることができます。2.5kgという重量から手持ち不可だと考えてしまいますが、鏡筒は5cmなりの太さしかありません。鏡筒の真ん中より少し先の方を持って、見口は2段目で目にあてて見ると、とても視野が安定し、手持ちでも問題なく使えると思いました。実際にサッと見る時はいつも手持ちです。因みにメガネ着用ではまったく引き出さなくても周辺がケラれます。直進ヘリコイドのピント調整極太回転リングは重い回転抵抗があり、適度なローレット処理と、金属の心地の良い肌触りで、回すだけで今までの双眼鏡のそれとは明らかに違った高級感があります。視度調整のメモリは-5Dまでしか刻まれていませんが、-7Dを超えるまで回ります。極めて強い強度近視でないと、裸眼でピントが合わないことはないと思います。嬉しい余裕です。


 

私はレンズ以外に余計なものを間に挟まない主義なのですが、手持ちで見たり、三脚に固定したりと、しばらくは2.5kgの双眼鏡を振り回すので、大事を取って対物に保護フィルターを付けています。100周年記念モデルは本体に刻印してある全ての文字や柄が白色のみですので、保護フィルターのフレーム文字も白を選びました。フィルターを付けても思ったほど格好悪くならないので、このまま使用し続けるかもしれません。

 

付属のアダプターはアルカスイス規格で便利で、アダプターを取り付けたままアルミケースに収納できることと相まって、セッティングは非常に素早く行えます。ただこのアダプターは残念ながら一度揺れると収まるまで時間が掛かります。構造的にフレームが長すぎるのが原因だと思います。ちょっと工夫が必要かもしれません。

 

GITZOのG2180軽量雲台にSUNWAYFOTOのクイックシューベースを取り付けたので、脱着がとても楽に素早く行えます。

 

 

7倍、10倍とある中、10倍を選んだのは、星を見るなら10倍のパワーがないと見えないものが多すぎるからであることと、三脚固定での景色観望を踏まえてです。そして実際に7倍と10倍を見比べた時に、10倍の仕上がりが抜群だったことが決定的な決め手でした。でも7倍の着色の無さや緻密な色。さらに広い実視界、そして手持ちのブレの少なさも、とても魅力の感じるところです。

 

WXを覗いていると、こういう見え味の双眼鏡があったら最高だろうなと想像していた、その世界とほぼ同じだということに気付きました。超高価で、5cm直視では馬鹿デカく、そして異様な重さですが、それと引き換えに、見え味に於いて小さな夢をひとつ実現してくれたニコンに拍手を贈りたいと思います。

 

シリアルナンバーは…


素敵な数字でした(^^)

 

 

ということで、結局だらだら長く書いてしまいました(^^;