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2015-04-16 16:50:28

【惑星埼京線】

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【惑星埼京線】




突風が吹き「やばい!」と思ったら遅かった。

長方形の断熱材が空に舞いあがり、

線路に向かってヒラヒラ飛んでいった。




「線路には絶対に物を落とさないでください」
作業前の朝礼で、監督が口を酸っぱく言うのがこの事だった。

更に職人間で聞いたのが、

「成田エクスプレスを止めると、ものすごい賠償金を請求されるらしいゾよ」

いつもの工事よりも窮屈さと緊張を感じながら、

大人の背ぐらいある長方形の白い断熱材を数枚両手に抱え、

ホームの天井上に向かって足場を昇っていった。




渋谷駅の埼京線ホーム開業を調べると1996年3月とあるので、

この話は1995年冬だ。

オレは渋谷埼京線ホームの天井作りを任されていた。

ホーム天井の鉄骨の骨組みに、天井の縁を四方に溶接して、

そこに天井となる白の断熱材を上からはめ込んで行く。

作業自体はそんなに難しくはない。

ただ、作業は昼と深夜にあり、自分はその二つの時間帯をこなしていた。

昼間の作業は線路と反対側の場所、
深夜の作業は線路側の場所
と分けられた。

深夜帯はバイトを使わず、なるべく自分ひとりでこなすようにしていた。

真夜中に警備員の笛がなると、線路向こうの信号がカチカチしだし、

職人達はいったん作業を止める。

すると、遠くから汽笛がなり、深夜だけ通る貨物がやってくる。

ゴオー、うなる長い貨物の背中を見ながら、

オレはポケットに忍ばせた小型ラジオのイヤホンをそっと耳にする。

夜空に寒月がキーン。
【惑星ハート】という曲がその時できた。




作業が8割方進んだある昼間、

線路と反対側の場所で仕事をしていた時、あの突風は吹いた。

運んだ断熱材の上に重しを置こうとすると、ピュ――――――――。

突風が断熱材一枚を空高く飛ばし、線路の上に!

「やっちまった」と引きつるあきらめの目の前で、

断熱材は運良く線路を飛び越え柵の向こうにギリギリ挟まるように落ちた。

まさに数センチの奇跡!

胸をなで下ろす事はよくあるが、これは最大級に近かった。

急ぎ渋谷駅をグル~と大回りしてそれを回収した。



先日、アメリカの友人を渋谷の成田エクスプレスに送った。

オレは当然、歩き談笑しながらも、上ばかり見る。

白い天井は目地もしっかり通っていてあの時のままだ。

それを確認しつつ、この上で吹いた突風と、深夜の寒月を、

オレはいつも思い出す。




























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2015-04-08 19:35:09

【おもちゃ箱の決闘】

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【おもちゃ箱の決闘】




近くの小学校が入学式だった。

自分にとって小一は、とてつもなくでっかいステップだったように思う。

入ってまもなく、友達と殴り合いのケンカをした。

その友達とは幼稚園が一緒で幼稚園の頃からよく遊んでいた。

だが彼は少し横暴で、自分はいつも彼の言いなりになるところがあった。

小一になったある日、自分の家のおもちゃ箱で彼と遊んでいた。

その時オレは、忽然と怒りを表している。

原因は忘れた。

小一は直線のパンチなどではない。

よく子供のケンカで描かれる両腕を振り回す、ぐるぐるパンチで

向かっていった。

彼の背後には自分のおもちゃ箱があり、彼は1,2歩後退した。

そこで彼をかろうじて圧倒した事が、自分の何かを変えた。

どうもあの瞬間が人生最大の岐路だった気がする。

彼はそれから二度と家に遊びに来なくなったが、

ある日、道で柔道着を持った彼に会って少しドキっとした。

「柔道始めたの?」の問いに、恥ずかしそうにニコッと笑った。

それっきり彼とは会っていない。

彼の事を少し横暴と書いたが、それは違う。

自分の何かが目覚めてなかっただけだ。

母親は今でも彼の事を憶えていて、すごく素直でいい子だったと

教えてくれた。

近くの小学校が入学式だった。

大人達には見えない何かでっかいステップを、

彼らは上がろうとしている。

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2015-04-03 10:08:10

【あっ穴!?】

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【あっ穴!?】



半ズボンのポケットに手をつっこんだら、太ももから手が出た。

「あれ――――――!」

三万円がない。

生まれて初めての超大金。

中学の入学案内の日に、教科書を買う為に三万円を持たされた。

それを無造作にポケットに入れていたら、なんと穴!

飛び出して、街角、血眼だ。

家と中学の間をずっとうろうろした。

あの時の極度の集中感は、今でもこめかみに残っている。

探している場所は市内だったから、大人の足元に

何度もぶつかりそうになった。

大人達は、少し不思議に思ったかもしれない。

普通に考えれば、子供が道をキョロキョロしながら歩いていたら、

当然何かを探していると思うだろう。

もちろんその通りなのだが、あの時はいくらか常軌を逸していた。

頭を道につっこんで、凝視した様子は、

何かの観察でもしているのかと頭をかしげたかもしれない。

気がつくと辺りは夕闇に包まれていて、

オレはようやくあきらめて家に帰った。




「まず見つからないだろう」

父親の言葉にオレは呆然とした。

人がお金をネコババするからか、

現金はどこかに飛んで行き見つかりにくいからか、

はっきりは言わなかったが、たぶん前者だろう。

でもまだ自分の中では、きっと誰かが拾って

自分に届けてくれるような感じが残っていたが、

その言葉通りだった。

この3万円紛失事件は、落とした強烈な喪失感以上に、

もう一つの事も、より印象に残っている。

両親はオレを叱らなかった。

オレの血眼の要因のひとつに、叱られる恐怖も大に後押ししていた

はずであったが、叱られなかった。

小さい頃、オレはよく叱られていた。

でも落とした事はただのミスだと判断して、

オレの人格を攻める事ではないと思ったのだろう。

この事は、今のオレの何かに強く影響しているように感じる。

いやいや案外それとは全然関係なく、穴の空いたズボンをはかせた

母親が、アチャ~アと思った結果かもしれない。




ただ、家族はその直後、市内から山側の方に引っ越し、

自分は別の中学に入学する事になった。

つまり、その時の教科書を買う必要は無かった。

だから、その時落としたのは必然?と思いたい気持ちもでたが、

小学生には、そこまでスパッと切り替える事はできない。

だから今でも三万円と聞くとほんの少しだけギクッとする。

そしてごくたまに、あの探した道が頭に現れて、

どこに落としたのだろう?と記憶の道をたどっている自分がいるから、

軽いトラウマだ。

嗚呼!三万円、もう二度と自分のポケットから勝手に落ちないでくれ!

ところが、落ちないように用心しても、大人になって持つお金には

すぐに羽根が生えるから、これまた大変だ。

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