無題 | ぎーぎーぱー

無題

けれども

いまごろ ちゃうど

おまへの年ごろで

おまへの素質と

力をもってゐるものは

町と村との

一万人のなかになら

おそらく五人は

あるだろう

それらのひとの

どの人も

またどのひとも

五年のあひだに

それを大抵無くすのだ

生活のために

けづられたり

自分でそれを

なくすのだ

すべての才や

力や材といふものは

ひとにとどまる

ものでない

ひとさへ

ひとにとどまらぬ

おまへの

いまのちからが

にぶり

きれいな音の

正しい調子と

その明るさを失って

ふたたび

回復できないならば

おれはおまへを

もう見ない

なぜならおれは

すこしぐらゐの仕事ができて

そいつに腰かけてるやうな

そんな多数をいちばん

いやにおもふのだ

みんなが町で暮したり

一日あそんでゐるときに

おまへはひとりで

あの石原の草を刈る

そのさびしさで

おまへは

音をつくるのだ

多くの侮辱や

窮乏の

それらを噛んで

歌ふのだ

ちからのかぎり

そらいっぱいの

光でできた

パイプオルガンを弾くがいい