短編小説

短編小説

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僕は生まれて初めて自分の心境を文章にします。
今思うと何かがおかしくなったのはあの日記を書き始めてからだと思う。
僕は中学二年生で双子の弟がいます。一卵性なので見た目はそっくりです。しかし出来が違います。勉強の事です。小学生の頃はほとんど同じぐらいの学力でした。中学になってから聡太はとてもよく出きるようになりました。僕はそんなに出来ません。来年は高校受験です。親の態度もこの頃から変わり始めました。出来のいい聡太の方ばかりに期待をよせ僕には
康太も頑張ってね
こんな具合です。何もかも同じだった聡太と僕に差が出来たのだ。性格もほぼ同じ。なのにどうしてだろう?僕が変わったからなのか、聡太が変わったからなのか。
日記を書き始めたのはこの頃です。日記といってもただの日記ではありません。これは物語なのです。創作です。
内容はこんな感じです。
例えば今日実際に起こった事、学校で誰々と喧嘩をしてはらいせいに野良猫をいじめた、という事があったとする。僕は家に帰ってこの出来事を未来系に変える、
明日僕は学校で誰々と喧嘩をして野良猫をいじめる。という具合に。とくに何の意味もなくやり始めた。
本は良く読んでいたし自分でも書いてみようと心みた事は何度もあった。けどどうも面白くないし、書いてる途中で訳がわからなくなって途中でやめてしまう。
だったら実際に起こった事を小説風にすればいい。こんな具合で書き始めた。
すると小さい事だが面白い偶然が起こる事もある。明日起こりそうな事を過去形で書く。
体育祭で転んで僕は恥をかいた。
すると実際次の日の体育祭で転んで恥をかいた。
実際に誰でも起こりそうな事なので単なる偶然なのだがこうゆう事があると面白かった。
そんな風に僕は実際に起こった事をフィクションにしたかったんだ。そうゆう遊びをし始めた。
するとさらに面白い偶然が起こり始めた。僕はこれをスリーセブンと名ずけてかなりレアな偶然とした。
実際に起こった事、日記に書いた事、夢で見る事、この三つが全部一緒になるのだ。
細かくいうと違う部分もあるのだが大体一緒だ。このスリーセブンが揃った時はなにより面白かった。

中三年生になり本格的に受験モードになってきた。聡太はますます勉強ができるようになり、僕は創作日記の方に力を入れるようになった。この辺りからそっくりな見た目も若干違いが出てきた。聡太の身長が僕より伸び始め顔も僕より精悍になっていった。身長の差は五センチになり、僕の顔は締まりがなく垂れ目で輪郭が丸くボヤッとして、髪の毛も何故か縮れてきた。一卵性の双子というよりただの兄弟、そのぐらいまで見た目に違いがでてきた。

中三の半ば辺りから僕は良く学校を休むようになって秋辺りから全く無登校になった。先生達は受験で忙しく僕に心配してる暇はない。親も最初の方は相当な心配をしていたが、聡太の事で頭がいっぱいで僕は事実上ほったらかし状態になった。
困ったのは日記だ。ずっと家にいるもんだから書こうにも書くことがない。そこで僕は夢と日記、この二つに絞った。見た夢を実際に起こった事のように書く、日記に書いた事が夢になって表れる。二つに絞ってから完全にこれが一致し始めた。家ではほとんど寝ていたので起こるといっちゃ起こりそうだった。

そしてここらが本題に入ります。
高校受験の日、聡太は朝早くに両親に見送られ受験会場に向かって行きました。僕はいつものように家で寝てました。高校受験は既に諦めて、将来に対するとてつもない不安に耐えきれずに睡眠時間は前よりずっと増えお風呂とご飯の時間以外は完全に寝てたのです。

その日の夢は妙だった。
内容がほとんどないのだ。どうゆう事かというと机に座って日記を書いてる僕を僕が見てる。
これでは実際に書く日記をどう書いていいかわからない。
この日は日記を書くのをやめた。
聡太が受験から帰ってきて両親と何か話していた。
出来はどうだったとかそんな感じの話しだ。
僕はなるだけ足音を立てないようにお風呂場に向かいお風呂に入った。頭がぼんやりする。
お風呂から上がり髪を拭きながら鏡をみた。


そこには幼稚園児のような顔の僕が写っていた。


目の周りをこすりながら勇気をだしてもう一度鏡を見た。
丸い輪郭クリクリの目、あどけない口元の僕が写っていた。
服を無茶苦茶に着て両親と聡太のいる居間に駆け込んだ。
おおおかあさん・・
ぼくのカオ・カオ・なんかへん
だよ・・
お父さんが僕の方を睨んでいた。
お母さんは下を向いてゆっくり首を左右にふって溜息をついた。
聡太は無言で紅茶をすすっていた。
口を開いたのはお父さんだった。
お前な、学校にも行かず受験も諦めて一日中寝てたんじゃおかしくなるぞ?
いいか聡太はな・・
お父さん!
お母さんが口を挟んだ。
康太、ちょっとウメちゃんの散歩に行ってきて。気分転換して帰ってきたらお話しましょ。
ウメちゃんというのは家で飼っている柴犬だ。もう一年近く僕はウメちゃんの散歩には行っていない。
激しい動悸がお母さんの言葉を聞いてちょっと落ち着いた。
僕はかなり遠くまで散歩に出かけた。気づいたらドンドン歩いてた。心臓も落ち着いてきた。
立ち止まって深呼吸してウメちゃんの顔を見た。息を荒げ屈託のない顔で僕を見てる。抱きしめたくなった。
今からでも遅くない。聡太は聡太で僕は僕。来年、高校受験をしよう。帰ったらお父さんとお母さん、そうて聡太にもそう伝えよう。ウメちゃんを抱きしめようと顔を近づけた時ウメちゃんの目に写った僕の顔を見て心臓が跳ね上がった。


まるで赤ちゃんだった。一瞬写った僕の手も赤ちゃんそのものだった。


そこからの記憶はあまりない。
僕はウメちゃんをその場において全力で家まで走った。足がガクガクして力が入らなかったのだけは覚えてる。
僕は家でかなり暴れたらしい。
お父さんが車で僕を病院に連れていってくれて、それから四年たった今でも僕は病院に入院しています。あの日から僕は鏡はもちろん自分の姿を写すものは一度も見てない。
志望校に受かり今では大学生の聡太が昨日見舞いにきて
大分老けたね。双子どころかもう兄弟にも見えないよ。
そういってお菓子と漫画を置いてった。聡太が一人で見舞いにきたのは初めてだった。両親も今では一ヶ月に一度ぐらいしか来てくれなくなった。
聡太がくれた漫画を読んだ。エルーダーのドアというタイトルだった。
奇妙な話の漫画だった。内容はこうだ。


殺人犯が警察に追われて民家に逃げ込む。しかしその民家にいたのは子供の頃の自分で、その子供が警察を呼ぼうとしたところをうっかり殺してしまう。


何か不思議な感覚に陥ったがそれが何かわからなかった。
柴犬のウメちゃんは僕が走っていくのを追いかけて車に轢かれて死んでしまった。僕のせいだ。
日記は今はかいていない。
書く気などまったくない。
ただ夢は何かがおかしいんだ。
以前とはまた違う。内容は普通なのだがどう見ても僕が二人いるんだ。僕が僕をみてる。顔も身体もハッキリ見えないのだがその人を僕は僕と思い込んでる。
今もう僕は全てがどうでもよくなった。逆にすがすがしいもんだ。
ずっとこの病院で暮らし親が死んだら自殺する。そう決めてる。
けど死ぬ前にもう一度僕は僕の
顔をみてみたいんだ。それだけだ。けど鏡を見る勇気はない。だからこうして書いてみた。


END