こんばんは
ご覧頂きありがとうございます
\(^▽^)/
本日も引き続き
想像力と
ヒスパニック見聞録
というテーマで
パンズ・ラビリンス
という映画を
ご紹介させて頂ければと思います。
前回ご説明させて頂いた通り
パンズラビリンスは
スペイン内戦後の悲劇と
少女の幻想譚が同時進行する
不思議な映画。
その上、映画の冒頭で
主人公のオフィリアは血を流して
倒れています!
↑映画が始まった瞬間に、こんな映像!
ですので、楽しいファンタジー映画だと思って
映画館に行ってしまった人は
きっと驚いたのではないでしょうか?
ですので今回は
本作を鑑賞する上でヒントになるかもしれない
いくつかのポイントをご紹介して
監督がパンズラビリンスで
描きたかったこと
について考察してみたいと思います。
※今回の考察は、あくまでも私個人の考えなので
間違っていたらゴメンナサイ!
ポイント①
国内で争いが続く世界とは?
私たち日本人は
国内で長期に渡り人々が殺しあう
という経験がありません。
有名な源平の合戦でさえ6年。
それも、武家どうしの戦闘なので
農民など一般人が巻き込まれて死んだ
というのは
感覚的に理解しにくいと思います。
けれどスペインの場合
パプスブルグ家やブルボン家などの
権力争いの戦争を起したり
トルコに侵略され国土を失ったり
カトリック教会が弾圧や拷問を加えたりして
常に一般の人々が
戦いの犠牲となってきた国なのです。
↑スペイン王位継承戦争は
次第に国内の内戦へと発展していきました…
ですのでこの映画では
同じ国の中で
敵と味方に分かれて殺しあう
という内戦の悲劇を描きます。
スペイン内戦における悲劇は
歴史的な事実ですので
ファシズムを推し進めた
フランコ将軍側の虐殺の悲劇は
スペインの人にとって
語り継いでおくべきテーマ
↑1930年代に内戦を起こし
その後は独裁政権を樹立したフランコ将軍は
1970年代に死亡。
つまり、それまでは
政府側の起した虐殺の悲劇を描く作品は
作れなかったのです!
ですので、この映画は
1930年代に
スペイン国内で何があったのか
を、後世に伝える映画です。
↑今残しておかなければ
歴史から忘れ去られてしまうスペインの悲劇。
ポイント②
なぜ悲劇を描くのか?
本作は、少女が死んでしまう映画。
けれど、スペイン内戦に巻き込まれ
多くの子供が死んでいったのは事実です。
ですので
大人たちの争いの中で
全く無関係な子供たちが死んでいった
というテーマを描くのなら
少女が悲劇の中で死んでしまうのは
事実を描いたもの
と言って良いのではないでしょうか?
↑何の罪も無い子供たちが
たくさん死んでいった時代だったんだよ…
ポイント③
なぜ妖精譚になのか?
これは比較的簡単で
現実が辛すぎたとしても
想像力によって人は救われる
という事を描いたのだと思われます。
もし仮に
スペイン内戦で生々しく人が死んでいくのを
リアルに見ている少女の話だったとしたら
あまりにも残酷で救いのない映画です。
↑容赦なく子供も殺されるのを直接描いた
アウシュビッツのドキュメンタリー映画「夜と霧」。
これはもう、直視できない作品です。
現実というものは
常に理不尽で、残酷で、容赦ないもの。
大人たちは、そんな現実の中で生きる事で
自分の未来を構築していきます。
けれど無力な子供たちは
目の前の惨劇を見ているだけだと
いつしか残忍さに鈍感になっていきます。
シティ・オブ・ゴッドや
ジョニー・マッド・ドックに登場する子供たちは
残酷さを受け入れてしまっています。
↑ジョニー・マッドドックの
残酷な現実に順応した子供たちは
大人以上に残虐に!
けれど
この映画のオフィリアや
ローズ・イン・タイドランドのジェライザなどは
想像する力によって
冷酷な現実に適合しない人格を
保ち続けられています。
↑お父さんもお母さんも死んだけど
首だけのバービー人形の
幻想の友達がいるから絶望しないジェライザ。
(「ローズ・イン・タイドランド」より)
これって
いけない事なのでしょうか?
そう。
この映画は
想像する心を持つ事の大切さを
描いた作品でもあるのです
ヽ(=´▽`=)ノ
↑想像の世界を持っているから
残酷な現実に絶望することもなく生きているオフィリア。
ポイント④
オフィリアの死に意味はあるか?
恐らくこれが
この映画の最も重要なテーマ。
以前ご説明したようにヒスパニックは
愛を貫くことを至上のものとし
死ぬ事は、愛ほど重要ではない
と考える人たち。
ですのでオフィリアは
愛を貫いて
生きることができたのか?
が問われる事になります。
↑オフィリアは愛する人のために
生きれたのか?
そう考えて頂ければ
この映画が単なる幻想譚でない事が
分ってきます。
彼女は、身重の母親のため
そして、こんな状況で生まれてきた弟のため
自分の持てる力を全て使って
絶望的現実に立ち向かい死んで行きます。
↑彼女は弟と一緒に
父親の元から逃げ出しますが
妖精の国に入るために
純真な子供の血が必要だから弟の血をよこせ
というパンの要求を拒否します。
けれど、死の際に
彼女はパンに称えられるのです。
あなたの自己犠牲の精神こそが
妖精の国の王女となる資格だったのです。
お帰りなさい王女様
と…
↑よく弟を守ってくれたね。
あなたこそ、妖精の王女に相応しい!
これは悲劇なのでしょうか?
彼女の犠牲によって生き延びた弟は
残酷な父親から引き離され
父親の存在さえ明かされず育てられます。
オフィリアの愛によって
憎しみあった時代を忘れるための
第一歩が始まったのです!
↑彼女は成すべき使命を終えて
彼女の望む幸福な世界へと旅立ったのです。
そして画面には
彼女が王女になるための第一の試練で
オフィリアが蘇らせた木。
↑真っ二つになった木は死んでいたのですが…
そこには小さな一輪の花が…
↑死んだ木に花が!!
はい。
二つに分かれた木は
スペイン国内の二分された状況であり
今はボロボロですが
自分を犠牲にして
死んでいった人々の努力で
今、小さな花が生まれはじめました。
というメッセージが
添えられているのだと思います。
この映画を監督したのは
メキシコ人のギレルモ・デル・トロ監督。
世界中の国が不干渉だったスペイン内戦において
唯一援助を差し出したのがメキシコ。
同じヒスパニックの血が流れる
スペイン人とメキシコ人だからこそきっと
スペイン内戦の悲劇をテーマに
未来志向の映画を作りたかったのでは
ないのでしょうか…
↑君のような子のおかげで
今、スペインには平和が戻りつつあるんだよ。
それを忘れないよ!
という映画なのです。
という訳で次回は
ヒスパニック的
絵画芸術
というテーマで
ミツバチのささやき
という映画を解説してみたいと思います。
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆
↑現在スペインは再び
バスク地方の独立問題などで揺れています。
多くの尊い犠牲の上に
成り立った平和だということを忘れないで
欲しいですね…