瀬戸内しまなみ海道(五九・四キロ)のうち、未開通だった広島県側の「生口島道路」(六・五キロ)が、あす二十九日午前七時に開通する。


 愛媛県側の未開通区間の「大島道路」(六・三キロ)も二十四日に開通した。これで、海道の全架橋が完成した一九九九年五月から七年ぶりに全線が自動車専用道路でつながる。


 全通で今治―尾道間全線の所要時間は七十分から五十分に短縮される。その効果を存分に生かし、低迷する海道の通行量を増やすバネとしたい。


 ただ全通は良いことずくめではない。沿線では今、「通過点化」の懸念が広がる。これまで大島と生口島では車が国道317号を通っていたが、全通で専用道路を一気に通過、観光地に立ち寄る客が減る恐れが強い。


 沿線の観光地は海道開通の初年度こそ「しまなみ特需」に沸いたが、その後、観光客は大きく落ち込んだままである。全通を機に、一段の観光振興策や地域活性化策が必要だ。


 もともと沿線は瀬戸内の多島美と大橋という観光の目玉がある。これにさまざまな味付けをからめ、展望を切り開きたい。例えば最近、農産物の収穫・加工を通じ住民と観光客が交流する「グリーンツーリズム」などの体験型観光も始まった。こうした新たな動きに注目したい。


 二〇〇四年に南予で成功した「えひめ町並博」のように、正式全通の秋以降、手づくりイベントを検討してはどうだろう。隣県との広域連携で外国人観光客や修学旅行の誘致に力を入れ、団塊の世代移住の受け皿についても考えたい。


 三市七町あった沿線自治体のうち、本県側の五町は昨年一月に今治市と合併。広島側も今年一月までに尾道市と合併、両市が県境で接する形となった。


 合併に伴い海道は、住民が通勤・通学や買い物などで利用する「生活橋」の色合いが濃くなっているが、高い通行料金が市域内移動の壁となっている。


 住民負担の軽減のため今治市は合併時から市民を対象に、通行料金が割引となるETC車載器の購入を補助している。さらに沿線住民を対象とした通勤割引や夜間割引なども本州四国連絡高速道路会社(本四高速)は早急に実施してほしい。住民や観光客から不評の高速バスの乗降制限も見直しが必要だ。


 全七橋の一日平均通行台数は開通初年度に計五万九千五百十三台を記録したが、二年目から大幅に減少、〇二年度には初年度の83・1%まで落ち込んだ。〇三年七月の料金値下げで徐々にだが増加傾向にあり、〇五年度は89・3%まで回復した。


 高速道路に比べれば橋の料金は非常に高い。通行量を増やすためには、やはり大幅な料金値下げしかない。政府の道路関係四公団民営化推進委員会も〇二年の最終報告で「半額程度への引き下げ」を求めた。


 架橋建設の巨額債務が残り、関係十府県市の出資金増大の問題はあるが、県や地元自治体は大幅値下げを国や本四高速に粘り強く働きかけてほしい。