バイオショックを覆う世界観はかなり独特なものである。ゲームは1960年に起こったことという設定だが,レトロフューチャーというかスチームパンクというか,実際とはやや異なった方向に技術が発展している世界だ。なんといっても,ゲームの舞台となる「ラプチャー」は,大西洋の海の底に建設された大都市なのである。  遡ること1946年(つまり第二次世界大戦終結の翌年),科学者であり実業家でもあるアンドリュー?ライアン氏は,法律や道徳,あるいは宗教や倫理観といった一切の制約にとらわれることなく,科学者や芸術家が思う存分活動に専念できる理想郷,ラプチャーを建設した。以降,民主主義も共産主義も否定するライアン氏は,エキセントリックで独善的な理念を以てこの都市を治めている。  余談ながら,海底都市の名前である“Rapture”には「狂喜」「忘我」「恍惚」という意味があるが,大きな辞書を引くと,キリスト教の用語として「(空中)携挙」というのが出てくるはずだ。聞き慣れない言葉だが,要するにイエスが再臨する際,神に選ばれた者だけが一瞬のうちに空中に引き上げられ,世界の終末に起きる艱難を逃れられるという意味だ。筆者の個人的な意見だが,ラプチャーはこれを意識して命名されているのではないだろうか。もっとも,ライアン氏は宗教も否定しているため,アラド RMT,実際どうなのかは分からない。  バイオショックのゲームモードはシングルプレイのみで,マルチプレイはない。開発したのは2K Bostonと2K Australiaで,ここは「Tribes Vengeance」や「SWAT 4」を制作したIrrational GamesがTake-Two Interactiveに吸収されて出来たスタジオだ。コンシューマ機版が2K Boston,PC版が2K Australiaという分担になっているが,コアメンバーが定期的に行ったり来たりしているとのことで,どっちがどっちということはあまり関係ないようだ。  エリートの住む隔離された海底都市で,独自かつ急激に発展するテクノロジー。そんな中で偶然発見されたある物伽楗抓隶悌`を崩壊させてしまう。それはウミウシから抽出される遺伝子ADAM(アダム)だった。ADAMは人間の遺伝子に作用し,身体能力を飛躍的に向上させる,とんでもないシロモノだったのだ。ADAMをめぐる研究開発競争は激化し,科学者同士の争いだけに留まらず,一般市民をも巻き込んでの抗争へと発展した。かつてラプチャーの住人だった者達は過度の身体改造により精神を崩壊させ,攻撃性をむき出しにした「スプライサー」と呼ばれるモンスターと化してしまった。  ラプチャーが都市機能を失い,崩壊の途上にある1960年のある日,主人公ジャックが乗った飛行機が大西洋沖に墜落する。奇跡的に助かったジャックは小さな無人島に建つ灯台のような建物にたどり着く。内部は無人だったが,彼が入ったとたん,入り口のドアが閉まり,照明が灯される。そこには潜水球のようなものがあり,見えない手に操られるかのように彼が乗り込むと,潜水球は海中へと移動を始めた。  途中,ライアンの理念が語られる短いフィルムが放映され,やがて海底の都市が見えてくる。見事な建造物には煌びやかなネオンサインが灯り,その間をクジラが悠々と泳ぐ。そこには驚異の海底都市が広がっていたのだ。  潜水球はラプチャーの玄関口に到着するが,中は真っ暗。そのとき,なにやら言い争う声が聞こえ,ここで最初の惨劇を目撃するジャック。ラプチャーが決して楽園ではないことを悟ったそのとき,無線機を通してアトラスという人物が話しかけてくる。彼はジャックの脱出の手助けをする代わりに,家族との再会に協力してほしいと依頼する。なすすべのないジャックは,アトラスとの交信を唯一の頼みとして,狂った楽園の探索を始めるのだった……。  とまぁ,こんな感じでゲームが始まるわけだが,aion RMT,灯台島で救助を待てばいいものを潜水球に乗り込んだり,その後,得体の知れない注射器をためらいなく自分に注射したり,なぜかリトル?シスターからADAMを吸い取れたりと,いろいろとツッコミどころの多いストーリーなのである。
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