ミュンヘン美術品発見事件とグルリット『ヴォツェック』 | 緑の錨

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歴史家の山本尚志のブログです。日本で活躍したピアニストのレオ・シロタ、レオニード・クロイツァー、日本の歴史的ピアニスト、太平洋戦争時代の日本のユダヤ人政策を扱っています。

ミュンヘン美術品発見事件とドイツ語版Wkiは今回の事件を表記しています。この事件については、ブログのコメントで教えていただきました。

ナチスにより略奪されて破壊されたと思われていた美術品がミュンヘンのアパートから1500点も発見されたのです。速報によれば、保存状態は比較的良好のようです。

Focus誌のライブティッカー

もし、報道されていることが事実なら、芸術史上の大事件です。

背景については、現在捜査中とのこと。

背景があきらかになり、正統な所有者やナチスの被害者の権利に配慮した、公正な処置が行われることを期待します。

このアパートに住んで、美術品をしまいこんでいたコルネリウス・グルリット氏は、日本に住んで活躍した指揮者・作曲家マンフレート・グルリットの親族にあたるとのこと。ガーディアンの記事が触れています。

ガーディアンの記事

マンフレート・グルリットは日本で、オペラ上演とオーケストラ指揮の分野で大きな業績をはたしました。
しかし、作曲家としてのグルリットについては、日本で「グルさん」と直接交流のあった人々にもあまり知られていないので驚いた経験があります。

日本でも、グルリットの作品上演の努力は行われていますが、まだ大きな流れにはなりきっていないようにも感じます。

そのグルリットが作曲したオペラ『ヴォツェック』についての報道を見つけました。10月末から、ダルムシュタットで、ベルクの同名の作品と同時に上演されているとのこと。

ダルムシュタット劇場の『ヴォツェック』頁

FAZ紙の記事(独文)

グルリットの作曲再評価の動きはヨーロッパでは注目すべきものがあるようで、この上演も充実した印象深いものであったようです。

昭和前半の音楽家の役割は日本においてもさらに注目されるべきです。音楽と政治について、グルリットの行動には様々な評価があります。その点も充分に検討される必要があるでしょう。一方で、音楽的な業績は、より一層掘りさげて考えるべきだと思います。