「ここのスタッカート、あんまり強くしないでねって言われてたけど、強弱つけてたら強くなっちゃったんだけど…」


と、言いながら弾き始めたプレ・インヴェンション。


気持ちの良い演奏が流れてきたよ。


ここで盛り上がって、ストンと落として、でも落としすぎず次の音へとつなげて行く。

確かに私がアドバイスした「ここのスタッカート」は少々強めに出したほうが、演奏が滑らかにつながっていく。


後ろで聞いていて「ああ、成長したなあ〜」と危うく目から汗が落ちそうだった。


細かい表記がないプレインヴェンション。

どう弾くのか?はあなた次第って渡した覚えがある。


音形に沿っての表現。


P(ピアノ)の中での多彩なピアノ。


「どう弾きたい?あなたはどう弾きたい?」と4年生から問われ続けての今6年生。

4月より中学生。


悩みを繰り返し、P(ピアノ・弱く)を最初に弾いた時には呼吸を止めていたよね。

なんか演奏が苦しそうだと思ったら、ずっと息を止めて弾いていて、こっちがびっくりした。


呼吸の中に音楽があって、楽譜的には小さなことだけれど、小さな呼吸を入れることで曲が生き返る。

そんなことを知っておメメがキラキラした時もあった。


ここはこう弾きなさいって言ってもらえたほうがラクなタイプ。

言われたことはこなすタイプ。


だからこそ、自分で考えて、間違えであってもいいから、なんでもいいから、自分の表現を身につけて欲しかった。


音楽は伝えるものであって、教えられるものではないんだよね。


中から湧き上がるものを表現するもの。


演奏者が何も感じていなければ、聴衆に何も伝わらないつまらない演奏になる。


テクニックがあればあるほど、そういう演奏に陥りがちな日本人。


まだまだたくさんの未来がある子供のうちにそうなって欲しくなかったからね。


この日のレッスンで久しぶりにこの子の口から「こういうジャンルの弾きたい」って聞けた。

さらに「へえ〜そうなんだ?」と前に言っていた曲調のものを「あーゆー曲が弾きやすい。あーゆーの弾きたい」と。


さてと、また曲探ししないとね。

忙しくなる中学生でも、わお!と喜んで取り組める曲。

春休みはそんな曲に出会う旅のレッスンになりそうだね。