近年の福島原発事故などでは、日本中の一般市民の生活そのものがその環境汚染の脅威にさらされました。見えない放射能物質拡散による空気・水・大地の汚染により、その危機感は、日本に流通する食の安全にまで至ってしまっています。このような環境汚染は、現代の人間社会にとって避けて通ることの出来ない環境の変化です。チャールズ・ダーウィンが、”最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。 唯一生き残ることが出来るのは、 変化できる者である。” 述べたように、私達はこの環境の変化に謙虚に素早く対応し、その流れを把握し、自ら住む社会をそれに適合出来る形に変化させていかねばならないのかもしれません。
食の安全は私達の生活の基盤です。その生活の基盤を環境汚染から守りより健康な食品を供給するために、現代的な農業方法が世界各地で研究されています。その1つが、バーティカル・ファーミング、縦型農業 です。
アメリカニューヨークのコロンビア大学のディクソン・デポミナ教授は(VerricalFirm)、高度に発達した現代都市の問題点を指摘して、バーティカル・ファーミング、農作物を高層ビルで大量生産する縦型農園、を建設し直接現地で農作物を生産・販売ことを提示しています。
ニューヨーク市のような一極集中した巨大な都市は、その食料を遠隔地で栽培されたものに完全依存しています。世界中どこの大都市もそうですが、現代社会においてそれは良きとされてきました。しかし、時代は移り変わり、食料栽培が大量の人口のために遠地で大量生産されることにより、殺虫剤や土壌の汚染、運搬燃料から来る価格の上昇などが起こり、食品の質や値段にそれが反映され市民は良質の食品を得ることが困難になってきています。自然災害などで地方の農家が壊滅状況になったら、食料が尽きるのも時間の問題です。このバランスの欠けた食品流通システムそのものを、地元に建設されるバーティカル・ファーミングで変革させれば、新鮮な野菜や果物、がより安全により安価に、しかも自分の街で取れたものを市民が手にすることが出来るといいます。
このアイディア、農作物が完全に建物内で栽培されるのが、何といっても今の日本の環境には最適だとは思いませんか?万が一放射能物質が飛んできても、この農業ビルで栽培された農作物については安心できます。現地直送なので、どこから農作物が来たのかが見て取れて安心です。直売所がビルの一部に作られ、レストランとかカフェも直接ビルで取れた農作物を使って食べ物を作れば、これほどのすばらしい旬な野菜や果物はありません。環境が完全にコントロールできるのです。この食の安心が見て食べて体験できることだけでも、生活の革命の息吹を私達に味わさせてくれると思います。
縦型農園は、グリーンハウスを何階にも積み上げたようなもので、そこには、ありとあらゆる農作物が育てられます。灌漑システムも完全自動化、水のリサイクルをするので水の使用量は通常の農業の10分の1の使用量。完全にコントロールされた環境の下で、収穫率は通常より20倍以上。建物外装は全てガラス張りで、たっぷりの光を取り入れ、LEDライトによる光源も設置。電気は極力太陽光や風力発電でまかない、電力使用による価格の高騰を抑えます。
博士は、こうしたバーティカル・ファーミングをエコシステムの建設、と呼んでいます。エコシステムとは、自然の仕組みそのものの事で、人間の作り上げた街とは違い自分の食べ物は自分で作ります。自分の水は自分で処理します。自分のエネルギーは自分で作り出します。そしてその全てにおいて自給自足であるために常に幸せです。博士は、街とはこのようなエコシステムであるべき、そのように変革して行くべきだと主張します。
私も大賛成です。完全自給自足を可能とする施設を現代知識とテクノロジーの全てを結集して建設するのは、私達の高度な文明を証明し、そしてそれを使い更に私達が進化する助けをする道具となってくれるのです。私だったら、これを複合施設として設計して、住宅・レストラン・カフェ・八百屋さん・コンサートホールとかも含めて、文化の中心施設みたいな場所としてたくさんのクリエイターやアーティスト、そして一般の人が混ざり合って、癒されながら自然の恩寵を体験できる場所にしちゃいます。
グリーン・スカイ・ファームのロン・ブリュ-スターさんは、縦型農業について以下のように述べています。
・ 完全に環境コントロールした農業で、世界中どこでも良質の農作物を大量に生産することができる。
・ 通常農業で使う土地の約30パーセントの土地で、5-8倍の生産率
・ 化学薬品、殺虫剤、を使わず、有機用土等を使用してオーガニック農作物を作れる。
・ レタス・トマト・ほうれん草・きゅうり・ペッパー・ブロッコリー・ストロベリー・ブルーべりー・ハーブなど基本的にどのような農作物もいつでもどこでも作れる。(ゴクッ・・)
・ システマチックに完全管理ができ、交通費も最小限となり、通常の農作物より断然安価に提供できる。
・ 太陽光発電や風力発電のような自給自足エネルギー源があるため、電力会社の影響をうけない。
・ LEDライトは、通常照明の約半分の電気量で済む。
・ 栄養素や糖分の高い農作物がとれる。
・ ローカルに栽培できるので、公害、食料不足、自然災害、テロリストアタック、などに対しても影響を受けない。
・ ローカルに栽培するため、農作物が非常に新鮮でコミュニティの健康促進に貢献する。
良い尽くめじゃないですか!納得です。わたし、実はベジタリアンなのですが、こんな話聞くとかなりテンションあがってきます。
縦型農園は、まだ大規模なものが実現されてませんが、去年シンガポールで世界初のミドル級バーティカル・ファームが実現化されました。
なんかまだちょっと雰囲気でてなくて、農作物工場って感じですが・・・でも、なんか“食べ頃な建物”・・って感じしませんか?建築物がこうした雰囲気を持ち合わせているのもあまり見ません・・。地元で屋内栽培したもの、ということで売り上げが相当いいらしいんです。オーナーは増設計画しているようです。
高さ9メートルの農地
こうした私達の生活を変革し社会を私達を革命して行く道具の開発って大切だと思います。わたしも建築デザイナーとして、このような有益なプロジェクトに参加して行けたらと願っております。
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