5月25日(金)

息子2に高速バス乗り場まで送ってもらう。
「留守の間、頼むよ!」と言ったら
「お母さん、体に気を付けてね」と言ってくれた。


ここでこちらにいる長男と待ち合わせ。
二人でバスに乗り込みまず東京へと向かう。


東京からは新幹線,JRを乗り継ぎ、市バスで実家についたのが午後4時。

この間、弟の病状を少しでも話そうとしたが
「姉ちゃん、病院で先生から聞くからいいよ」と、長男は聞く耳持たず。
(きっと、信じたくないんだろうな…私だってウソであってほしいと思ってるんだもの)


実家について仏壇にまず手を合わす。
祖父母と母に話しかける。

タロを守ってあげて、私はどうなってもいいからお願いよ!

(最寄り駅近くのマツキヨで、バルサンや蚊取りベープなど買ってきた。

 実家についたら、私が使う亡き母の部屋をバルサン。

 布団毛布シーツは、大型コインランドリーで病院へ行く前に、丸洗い乾燥)

 


午後4時半 入院している弟の病院へ義父、長男、私、3人で向かう。
1Fロビーで待つこと30分。
主治医が来てまずお互い挨拶をした。

物腰の柔らかい温厚そうなドクターだった。

「弟さんとはあわれました?」と聞かれたので、まだ会ってないと答えた。
4F東のナースステーション奥へと案内される。


主治医から説明を受ける。
先日父さんには直接お話しし、お姉さまとは電話でお話ししたのですが、

時系列でお話しさせていただきますね。


5月2日 

この日は咳がひどいのと喉のつかえがあるとの事で耳鼻咽喉科へ受診されました。
耳鼻科ではリンパ腺の腫れが認められ、空咳が酷いので内科へ紹介が来まして、

受診後血液検査とレントゲンを行いました。
レントゲンでは肺炎を起こしている事を伝え、あとちょっと気になるところがありました。
この時脇腹が痛いと訴えていましたのでCT・MRIを予約。即入院と言ったのですが、

ご本人がお家の事情で、どうしても片づけたいことあるとの事で

9日に受診していただくようにしました。


5月9日

 2日のレントゲンがこちらです。
 (画像を出しながら説明は続く)
白いところが炎症を起こしているところです。肺炎です。

CT・MRIを受けられた時の画像がこちらです。
何十枚もある画像の中から出して次の説明に入る。

この部分が境界もわからないぐらいに、ガンが広がってます。
右肺の気管の太い所が潰されたようになっているのがわかるでしょうか?
正常な肺と比べると1/3ぐらいしか機能してないんです。

(横に正常の肺の画像を出してくれた)
この気管が塞がってしまうと重篤な事態になります。
下のこの部分なのですが胸水も溜まりだしています。
血液検査の結果、炎症反応、腫瘍マーカーがとても高く非常に危険な状態です。


5月11日 

この日入院され、肺炎を抑えるために直ぐに抗生剤点滴を始めました。

一日三回です。
咳止めのお薬ですがリコデン酸コデインこれは麻薬系(モルヒネ)のお薬です。
5段階あるうちの2段階で処方してます。痛み止めはオキシコンチン10mgを処方してます。
喉のつかえがあることから消化器のドクター・麻酔医と共に内視鏡検査を行い

細胞もとりました。
この時麻酔がなかなか効かなくて,咳が止まらなく暴れられまして

MAXまで入れて行いました。
内視鏡の画像がこちらで、気管自体がぼってりと腫れております。

呼吸を少しでも楽にしようとステントも考えたのですが、

ここまで腫れていると少しの傷で大出血を起こす危険があるので出来ませんでした。

本来ならこの先内視鏡が進めるはずなのですが、

先ほどもお見せした通りほとんどつぶれた状態でしたので、

これ以上は危険ということでやめました。
あとこちらの画像ですが、肋骨に真っ白に映っていますよね。

がんが転移している所です。
(肋骨一番したの骨、左右に白い点が見えた)


主治医はふ~っと一息ついてから、私の目を見てまた話し始めた。


非小細胞がん 扁平上皮癌と腺癌の混在型。

骨転移、リンパ節転移もみられるステージⅣです。
歳もお若くとても残念なのですが、今の状態を考えますと、肺炎で命を落としかねません。

この状態を乗り切るのに悪くすれば1週間、

あとは1ヶ月刻みで3ヶ月、よくもって半年です。
何かお聞きになりたいことはありますか?


wing.right*「先生、骨転移はそこだけですか?脳は大丈夫なのでしょうか?

  骨転移するとキリで刺されたような痛みで苦しむと聞いてます。

  疼痛コントロールは、一番していただきたいことなのですが…」


ドクター「今のところ脳には転移はみられません。

   緩和ケアは状態に合わせてしていこうと思ってます。
   ご本人にあわれてご一緒に今の説明をしようと思うのですが、

   ご家族としては、どこまでご本人に話したほうがいいか、お考えですか?」


wing.right*「治療していくうえで、状態を知らせるのが一番良いと思っています。

  とても厳しい状況なだけに、今は余命は知らせないでいただけますか?」


ドクター「では、ステージほかの説明はさせていただいていいという事でよろしいですか?」

 


wing.right*「はい、よろしくお願いします」


そして私たちはタロに会いに病室へ行った。

夜の抗生剤の点滴を受けていた。

 


wing.right*「タロ、心配で兄ちゃんと来たよ。具合はどう?すごい咳だね。痰とか出るの?」
地響きしそうな咳、これじゃ体力を使う。

背中をさすってあげた。

食事もまともに取れないだろう。

 


男の人「先月までこんなことなかったんだ、今月になって急にこんなになって…

  先生とはもう会った?」咳き込みながら話す。

 


wing.right*「タロの顔見てからだよ。一緒に説明聞こうと思って。。大丈夫?説明聞けそう?」


看護師が呼びに来たので、一緒にナースステーションへ向かう。
点滴スタンドにもたれかかる様にして、そろそろと歩く。


ドクター「お姉さん、お兄さんと一緒に説明させてもらおうかと思ってるけど、行けるかな?」と 
  タロに声をかけてくれる。

 タロには少しでも楽に聞けるように、背もたれが付いた、回転椅子が用意されていた。


主治医の話は、言葉を選びながらやわらかく続く。

 


癌にはステージⅠ~Ⅳまであって、

タロさんの場合、先日も言った通りリンパ節も巻き込んでいるから、ステージⅣになります。

今粉薬出ていると思うけど、リコデン酸コデインこれはモルヒネが入っているお薬です。

これも5段階あって今処方しているのは2段階です。

モルヒネって聞いただけでびっくりされるだろうけど、

癌の方によく使っている薬なので心配しないでいいからね。
骨シンチしたのがこの画像だけどちょっとここに障りがありますが、

今のところ悪さはしていません。
(骨転移を障りがあると話してくれた。気遣いがうかがえる)
がんの治療に入る前に、まず肺炎を抑えないといけないので、今抗生剤を点滴してます。
咳も徐々に治まって来るし、食欲も戻ってくるから…


弟を見ると真っ青で、、、、ダウンダウン

 

 

先生が「大丈夫か?しんどいのとちがう?部屋に戻って横になろうか」と

 


男の人「スイマセン、横になりたいです。これからの治療は姉に言ってください」と言い残し
義父と長男に支えられて病室へ戻る。

 

 

看護師さんが血圧計サチュレーションなどを図りにバタバタする。
主治医もちょっと様子見てきますのでお待ちくださいねと、弟を見に行ってくれた。
私も後を追いかけて病室へ。
義父が手を握り、長男が左向きになってる弟の背中をゆっくりさすっている。


血圧92/63 心拍数117 SPO2 97


男の人「姉ちゃん、あとは先生に聞いておいて。後で教えて」と弱々しい声で弟が言う。


主治医とナースステーションに戻り、治療について聞く。


ドクター「お姉さんと電話でお話しさせていただきましたが、よく調べてられるますね。
   ガイドライン見てられたようですが」

 


wing.right*「はい、2011年度のがん治療ガイドラインを読みました。
   もう2012年度が出ているはずなのですがネットでは見れなかったので。
   先生、弟にはどういう治療をお考えですか?

   もちろん今は肺炎の治療優先なのはわかってますが、
   この先はあるんでしょうか?」

 


ドクター「おっしゃる通り、今は肺炎の治療最優先です。

  血液検査レントゲンで様子を見ながらになりますが…お若いだけに、癌も元気です。

  肺炎治療を乗り切って、抗がん剤治療に入れたとしても、

  辛いだけの治療になるかもしれません。

  しかし、少しでも体力があるうちに、抗がん剤治療を考えています。
  副作用については、人それぞれなのでどれくらい出るかはわかりません。
  ただ、今は副作用も吐き気・便秘・下痢に関してはしっかりコントロールできるので。
  使うお薬ですが、おっしゃってた通りカルボフラチン+パクリタキセルを考えています。
  弟さんが落ち着かれたときに、また抗がん剤のお話しさせていただきますが、

  よく話し合われて決めてください」


  再び画像を見ながら


ドクター「ここの太い気管支の狭窄がもう少し開いてくれるといいのですが…」

 


wing.right*「骨転移しているところには、まずゾメタかランマークですか?

  放射線はかけられないのでしょうか?

  胸水も貯留がみられるなら、呼吸状態も考えてでしょうが、抜水もあるのでしょうか?

  トロッカーで持続的にぬくとかになりそうですか?」

 


ドクター「そうですね、肋骨にはここが折れたり崩れたりしたらいけないので、ゾメタを考えてます。
  今のところは放射線は考えていません、少しでも副作用を避けたいと思っております。

  あの咳がもうすこし治まらない事には、胸水を抜くのはとても大変です。

  呼吸状態を観ながら、胸水のことも考えなければいけませんね」

 


wing.right*「わかりました、弟の事よろしくお願いします」と、深々と頭を下げた。

 


ドクター「何か資料がほしいようなら、遠慮なさらず言ってくださいね。
  出来る限り説明はさせていただきます。

  お姉さんは製薬会社に勤められていらっしゃったのですね。
  お姉さんが詳しく下調べをしてられたので、我々チームとしても心強いです。
  一緒に戦っていきましょう」


この先生は[がんばりましょう]とは言わなかった。

弟も頑張っているのは十分承知しているからだろう。
そんなことを考えながら病室へ向かった。

面会時間ぎりぎりになっていた。

 


wing.right*「タロ、聞いてきたよ。明日また来るからね、ちょっとでも寝れるようになるといいね。  

  今日は帰るよ」と声をかけたら 

 

 

男の人「うん、またね」と、弱々しく言って、手を振った。


義父と長男と実家に帰って、話をした。

主治医と交わした治療方針も伝えた。
今は、肺炎が収まる事だけを願おう。

 

しかし…いきなり一週間とか・・・状態が厳しすぎる。(泣)