これより美しい解はない。
★「孤島パズル」/有栖川有栖/東京創元社、創元推理文庫。
学生アリスシリーズの第2長編。
EMCの頼れる新入部員・有馬麻里亜(以下、マリア)に誘われて降り立つは南の孤島。
普段は訪れる人もない島中に点在するモアイ像。マリアの祖父が残したこの謎を解き明かせばお宝が手に入る!
パズル三昧の楽園に惹かれてきた部員達は、穏やかな顔の隣人たちとつかの間のヴァカンスに突入した!
初登場のマリアが可愛い1冊。
フットワークが軽く、明るい表情が似合うのにミステリマニアな彼女はこの時19歳。思えば作家シリーズの貴島朱美嬢より年下だ。
アリスとは何故か弟妹のようにウマが合っているように見える。江神部長を中心に無邪気に等距離な彼等の関係も読みどころのひとつ。
しかし季節は夏。
事件の起こる夏である。
光輝く海に囲まれた嘉敷島にも惨劇が起きる。
顔見知りしかいない島のなか、理由も分からず次々と亡くなる人々。
残されたパズル。掴めない犯人。
悲しみと月とひとでなしのパズルの夜を越え
密室を密室のままにしたかった探偵は、正答に辿りついてしまった。
読者への挑戦の後、江神とアリスの対話で犯人が姿をあらわす章は、何度読んでも手に汗握る。分かっていても、いや分かっているからこそ違う道筋を探してしまう時間だ。ロジックには穴が有るかもしれない。やはり無いかもしれない。
そして、いつも読み終わって思う。
これより美しい解はない。