ダブルインカム・ツーキッズなる楽観的標語と少子化対策 | 政治とメタルと網膜剥離

ダブルインカム・ツーキッズなる楽観的標語と少子化対策

日経電子版で、ある女性経営者が「ダブルインカム・ツーキッズの時代へ」というブログを書いているという。内容は表題の通りで、若い世代がこのようなライフスタイルを築いてくれれば日本の将来も明るいのでは、という内容だった。


この提言自体を否定する気はないが、この程度では短期的には日本の人口問題は全く解決せず、よって社会保障や国際競争力に関しても解決しない旨、ここでは述べておく。


人口の維持には、合計特殊出生率が2.05~2.08程度必要と言われている。この数値は、ある時点での15~49歳の女性の出生率を積み上げたもので、ある時点での一人の女性が生涯に出産する子どもの数を便宜的に試算したものである。なお、常に男性の方が女性より多く生まれることなどから、この数値(人口置換水準)は2を上回る。


上記のブログで書かれていた「ダブルインカム・ツーキッズ」を全ての女性が実現した場合、合計特殊出生率は2.0となる。これでも人口置換水準には足りないが、更に問題は生涯未婚率が急激に上昇している点である。


2010年時点で30~34歳女性の未婚率は33.3%に達している。35~39歳では22.4%である。仮に今後の生涯未婚率が20%になったとして、結婚した全ての女性が2人の子ども生んだとしても、合計特殊出生率は1.6にしかならない。この水準では、世代が変わるごとに人口は80%以下になっていくことになる。


実際にはこれですら厳しい。更に、圧倒的に人口の厚みを持っていた団塊ジュニア世代は、今年で約半数が40代に達する。高齢出産が増えてきていた2009年時点でも、40歳の出生率は年代別で最も高い30歳の15%に過ぎない。更に42歳になると40歳の1/3、44歳時点では1/10となる。もはや団塊ジュニア世代には少子化対策を施しても出生数の大幅な回復は期待できないのである。


ちなみに、団塊ジュニア以下の世代は、最も多い今年39歳になる世代から5歳若くなるごとに34歳は83%、29歳で73%、24歳で64%と急激に減少していき、2009年時点で0歳の子に至っては51.6%とほぼ半減となる。彼らに少子化対策が効いて、上記ブログ著者が言う「ツーキッズ」が実現したとしても、少子化は止まらないのである。


では何をすべきか?ダブルインカムといっても、二人とも正社員で雇用が安定し、かつそこそこの収入があって更に産休・育休が期待できる夫婦は、現在の日本では少数派であり、だからこそ少子化が極限まで進んだのである。雇用や収入が不安定でも、少なくとも子どもために必要最低限必要な収入・経費の補償は、いかなる国家予算を削ってでも生み出すべきである。もちろん、保育園の建設も必要だが、建設や保育士の手当だけで貴重な時間が失われていく。手当の交付や学校・医療の無料化の方が即効性がある。


子ども手当が26,000円でも多い、という者が多くいるようだが、子ども一人育てるのに必要な金が分かっていない馬鹿のたわごとであり、このようなことを抜けぬけと垂れ流しているものこそ、真の売国奴、国賊である。移民で労働力を補おうとしたら近場の中国人が大挙してやってきて日本で増えていくだけである。私は中国に対し何ら敵意は持たないが、それでも特定国の移民が突出して増えるのは望ましくない。更に、そもそも将来、移住に値する魅力が日本に残っているかどうかも分からない。


今から少子化対策を施しても、短期的にはもはや手遅れなのは冷厳たる事実である。しかし、50年、100年後の日本の存続のために必要である。外国に頼ってはいけない。自分の不始末は自分で解決しなければならない。